新・現在4コマ漫画レビュー 第101回

(初出:第327号 24.9.20)


-TOPIC-
隔月「連載」で復活していた樹るう『ポヨポヨ観察日記+(ぷらす)』(ライオリ)が次回(12月号)で最終回の告知。8Pで第8回、まで。これって単行本化されるので?最新10月号では脇役ペットの知られざる縁を描いていて、アフターストーリーっぽい内容だったものの、それ以前は通常営業だったはず。一方のワイド4コマ『チート転生した猫は嫁の膝で丸くなりたい』(ライオリ)は第54回を数え既刊4巻、チートが過ぎる展開でも人気はウナギ上りに見える。テコ入れの効果が落ち着いたので、一作に集中してもらって。作者折り込み済みの流れではあろうが..使い回し..の雑な扱いにも思える。
今号では東屋めめ『しまなみぽたぽた』(WIN)が出張ゲストもすっかりお馴染み。次号はむんこ『なんでモモさんは』(ライオリ)が2本立て告知で..身内で穴埋め..の操業にも見えてしまう。
さらに言えば吉良さゆり『みこどもえ』(ライオリ)はページ数変わらずで2本立てと称し、後半は前後編の前半という摩訶不思議。..ネタ切..いやいや、そうは思いたくないが。
新顔を見ないわけではないものの、気が付けば長期連載で埋まっていて、未刊作品がほぼ無いのに「コミックスになったら買いたい作品を3つあげてくれ」というアンケート同様、形骸化が透けて見える。と思ってしまうのは休刊ラッシュの危惧未だ収まらぬということか。
現在作品のどれ一つとして「終わって欲しい」と思うものは無い、これは明言しておくけれども「リスクを負わずにこのままいけるところまで」という退却姿勢になっていないか、とも諫言しておきたい。
アニメ化されて人気絶頂の中で原作は完結。少なくとも少年誌ではこのようなサイクルで新陳代謝が果たされている。周回遅れでも間に合う時代では無いはずだ。

-PICK UP-
通巻500号を(乗り)越えて様変わりした感のある「まんがタイムオリジナル」誌(芳文社)を読んでいると、大ゴケして休刊となった「ラブリー」改め「Lovely」誌(芳文社)のリニューアルは実にワイド4コマの登場を待たなければならなかったのではないかと思われる。11年の話、干支一回り早かったのだ。
(参考:第18回第21回
現在の「タイオリ」誌は本格的ストーリー4コマ、ではなく「恋愛」4コマガジンになりつつある。先鞭を付けたタチバナロク「可愛い上司を困らせたい」(芳文社)は全8巻で先頃終了してしまったが、この路線でいくことを明確にしてくれた嚆矢と言える。
新連載陣が同居、同棲、居候とひとつ屋根の下生活を舞台に揃え、最新10月号ゲストでは赤裸々夫婦生活がコメディとはいえ描かれた(うみんちゅ『木桑夫婦はいつも仲良し』)。で、いずれもワイド4コマ(orショート)、なンである。ページ数が10P超となっているので、必然連載数も減る。1誌15作品は適当か。同じく恋愛ものの割合が高い「主任がゆく!」誌(ぶんか社)はさらに少なく10作品程度だが4コマ作品は2本立てなので隙間を感じることは無い。現状の「タイオリ」誌のラインナップには余白を感じてしまう。スペースの話ではなく、内容の密度感である。予定調和的な展開では物足りない。
その点「主任」誌は「みこ半」誌の系譜であるから過激化する可能性を常に秘めている。過激化といえばショート専門だった「ストーリア」誌(竹書房)を思い出す。4コマ作品のショート化から微エロメインに変化していって程なく休刊となったけれどもWEBコミック「ストーリアダッシュ」へと繋がった。
「タイオリ」誌でも次号出張ゲストはあきばるいき『妻が完璧すぎるので、ちょっと乱していいですか?』(FUZ)とWEBコミックでエロコメが板についた作者が返り咲き。過激化=エロではなく、マイナー誌で花開いた平成初期の4コマ漫画、漫画家をイメージしてもらいたい。もっと自由な、踏み込んだ展開がエロを受け入れることで可能になるはずだ。
タチバナロク「可愛い上司を困らせたい」(芳文社)、最終回の柱には「先生の新作にご期待下さい」とあった。真の「元気がでるオトナマガジン」の誕生が待たれる。

-REVIEW-
ふかさくえみ『鬼桐さんの洗濯』(ライオリ)
過去の切り抜きを漁っていて「あっ!」となったのは、作者の「ちまさんちの小箱」(芳文社、未刊)が出てきたから。「ホーム」誌で、いつのだったか。ともかくその頃から目を付けていたのに今頃..これには訳がある。
この後作者はアイドルものを手掛けて、興味から外れたのである。という「勘違い」をしていた。アイドルものは現在も隆盛だが個人的にはマンガとの親和性がいまいちピンときていない。可愛いはキャラ描写の時点で差別化が図れないのではないか。生身のアイドルの方がよっぽど面白い..と、身勝手な前置きが長くなってしまった。
ともかくそれで、本作も5購6読7以来熟読しているのだが紹介に至らず。ウロコの取れた今ようやく諸手を挙げておすすめしたい。人間界と隣り合わせの世界にある洗濯屋さんが舞台、クリーニングの仕事を丁寧に取材したルポものであり、妖怪や神様が訪れるファンタジーでもある。蘊蓄ありのコメディ、大好物なのに連載91回、既刊6巻を数えてからの..。
作者はデジタル漫画家として華々しい来歴を持ちながら現役の同人作家でもある。しかもオリジナル作品メインで親しみやすい描写、世界観とまさに綺羅星。さらに調べると「ちまさんちの小箱」は08年〜10年の作品で、何と電子書籍化していました。こうなると電子化に白旗を上げざるを得ない。切り抜きしか残していなかった幻の作品が読めるというのだから。デジタルデータの保存性恐るべし、いやさ歓迎すべし。


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