新・現在4コマ漫画レビュー 第18回

(初出:第166号 11.2.20)


-TOPIC-
芳文社「まんがタイムラブリー」誌が数ヶ月前より全面リニューアルの告知。コンセプトは「本格的なストーリー4コマ誌」とのことで、年末売りの合併号で既存連載を全て終了(ごく一部は移籍)させ、今月売りの3月号から、「まんがタイムLovely」という表記で「ストーリー4コマコミック誌」を「誕生」させた。
何と言ってもオール新作第1話からスタートというのは新規(参入社)の創刊号と同義であり、並々ならぬ決意が感じられる。おそらく主たる目的は「メディアミックスによる爆発的ヒット作を生み出したい」ということだろうと考えている。
4コマ作品の多角的展開は隆盛を見せているが、キャラクターを全国民周知の、規模に育て上げるには昨今のメディアミクス環境は適当ではない。つまりかつての4コマスタイルでは適応しない。ストーリー性があり、ドラマティックな展開を見せるスタイルが起爆剤になり得ると、いう分析なのではないか。それはまた、「きらら」系列が生まれ育ってきた過程で培われてきた形でもある。「ビジュアル系」キャラ押しと「エピソード積み上げ型」ストーリーの融合した新スタイルの4コマが今やほとんどの人気作の共通点となっている。
ならば新たなる地平、さらに練り込まれた筋書きに沿って展開される、ストーリー4コマを開拓しようという、そこまでの意気込みかは分からないけれど。恋愛もの、ファンタジー、学園ものetc...と扱うジャンルは様々ながら半数以上の作品が「結」を目指した「起」から始まっている。ほとんど初見であるから語るには至らないが、「続きが読みたい」作品がこの中から出てくるのは間違いない。それが、国民的「4コマ」漫画となれば最高である。ただ一つ、このフレッシュ?な顔ぶれでリニューアルというのが若干残念。個人的には秋吉由美子やふじのはるかなど、前々からストーリー4コマに挑戦している生え抜きや、志半ばでいる(はずの)真田一輝とか、入れて欲しかった。
出版社的には正直「タイム」系列一誌減、「きらら」系列一誌増、という振り分けかと思われる。かつて「ジャンボ」誌が平綴じから中綴じにチェンジして「きらら」系列誌との区別を計ったと同じように、今回は平綴じにチェンジ。系列誌のPRページが無いのは創刊だからたまたま?かも知れないが、その辺りも一般的4コマ誌と一線を引いた感じが見て取れる。責めるつもりはなく寧ろその心意気や良し。もっと孤高の存在として君臨出来るよう、4コマ誌のトレンドとなり続けられるよう、色々な挑戦をして頂きたい。誌面も作品も。期待している。

-PICK UP-
今年もまた、春先が来て動きの見える作品がチラホラ。関係性の変わる決定的な台詞なりエピソードなりが出てくると、締めに入ったかと勘ぐります。東屋めめ『まぐ・ばぐ』(MOMO)のように、柱に「次号最終回」とあればはっきりしますが、近年のはもう一押し、あるいは一歩進んで新たな展開が、続く場合があるので急展開即終了間近とは言えない。しかしこの時期は年度切り替えというタイミングもあるので、クライマックスになり得る可能性が高いのです。
読者として望む展開をずっと見せ続けてくれている、曙はる『キラキラ・アキラ』(ファミリー)もついに踏み出した内容に。このパターンもまた、期待通りで思わずニヤリとさせられました。たとえ終わったとしても、コミックスで必ず再読したい作品になることは間違いありません。
同じくついに一歩踏み出したのが佐藤両々『そこぬけRPG』(タイオリ)。この流れになることは実は1年も前から匂わせていた伏線だったんですがね。作者の場合は『こうかふこうか』(くらオリ)も今回同じモチーフで一歩前進させていますが、こちらはすでに一波乱起きて尚続いていますから、何となくこれでは終わらないだろうと安心気分。次号以降の主人公連の反応が楽しみなところ。
樹るう『ポヨポヨ観察日記』(ライフ、MOMO)でもフラグ成立(MOMO誌にて)。作者もまた、『そんな2人のMyホーム』(タウン)ではクライマックスを突き抜けて新章に突入していますので、まだまだ看板を下ろすことは無いでしょう。しかし個人的には別の方とくっつくと思っているんだけど..まあ本作のメインはあくまで猫ですから、脇役が次々カップリング成立してもそれはそれで付加価値までかと。
こんな感じで終わるの、かも?という作品が出てきている中で、後藤羽矢子『シスコなふたり』(タウン)が一足先に大団円。展開的には大きな混乱を乗り越えて、全員が前を向いたハピーエンドとなりまして、これはもうストーリー4コマだったと言って差し支えないのでは。『プアプアLIPS』(ライフ)も一波越えてまだまだ新しい展開を見せているし、本格的になってきました。
もちろん慌しく店仕舞い、終了してしまう作品もありますが。また、新たな作品で我々の前に登場してくれるので悲しむことはありません。春は別れと出会いの季節、なのです。

-REVIEW-
神武ひろよし
作者名も作品名も覚えていなかったのに、背表紙に描かれたキャラクターに、見覚えがある。出会い買いの醍醐味です。『ベリースイート』(一迅社刊)は第1話は確実に読んだ記憶が残っていまして、当時誰かと勘違いしていて、その人を紹介する時に資料として読み返してみたら「あら、別人」だったと。ほんわか系のキャラクターで好みでしたが、「きららMAX」誌(芳文社)は不定期にしか読んでいなかったのでそのまま忘却の彼方へ。数年の時を越えてようやく先日再会出来ました。この出会いが激動の末であったことは、奥付を見て初めて気付いたもの。初出第1話は04年11月号。本作は06年3月号で終了していました。そして..単行本化は無し。1年半続いても残らず..かつての悪習の犠牲作でありました。それが、前述の一迅社から「ぱれっとコミックス」シリーズで08年に出ていたのです。相変わらず芳文社とサードパーティの関係性が謎な部分ですが、単行本化と同じ頃どうやら「ぱれっと」誌(一迅社)でも描いた模様。しかしこれは、残念ながら試験作までだったようで、以降実は4コマ誌には登場していないのです。
作者は同人、ゲーパロで活躍を続けています。しかしどうも最近はストーリー漫画がメインのようです。「ベリースイート」、その名の通りベタ甘な内容ですが決して悪く無い。必ず読者が付くであろう安定した優良株です。そして同郷漫画家でもある。本編ではほとんど触れられませんでした(わずかに短冊に楽天とだけw)が、裏設定の脇役の苗字がゆかりの地名!是非ご当地色を出した作品で再登場してもらいたい。付いていきます。


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