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春の改編など近年は話題にも挙げなかったくらい微々たるものだったが、今年は10年ぶりに飛び上がった。
「まんがタイム」各誌(芳文社)揃って1/3ほどが今月、来月号にて最終回。しかもそのラインナップは全て「後ろから」である。
奇しくも昨年の今ごろに、私は「時代の名残」と言えるこれら単行本にならないロングラン作品を『今のご時世にあって誌面でしか読むことの出来ない作品であるから、毎号欠かせないのである。4コマ誌存続の原動力と言えるかも知れない。』として取り上げた(第61回)。
ここまで大幅な入れ替えは記憶になく、さらに自レビューを遡ってみると「昭和」を感じさせる方々の4コマ誌からの消失..は緩やかな流れながら、象徴的だったのは今から10年ほど前、09年夏に起こった寺島玲子「くり子の日めくりカレンダー」の終了になる(第7回)。
平たくその根拠を言えば、時事ネタを使った日常描写から、キャラクターによるエピソード積み上げ型に完全に主流が移った、時代が切り替わった瞬間であった。
今回はベテランの作品だけでなく、新人の習作も含まれているわけだが、先も言った通り「単行本に出来る分量(期間)の連載であるにも関わらず、誌面でしか読めない作品」の一斉終了である。
但し、昨年の記事では他に大御所の代表作の終了も取り上げた。『一線を退く一歩であるならば、歴史的な区切りとして記録となる』(第61回)としたが、何の事は無い、単なる改題で今なおご健勝であるのでその後記すことも無かった。今回の件も過ぎてしまえば全く変わらない顔ぶれでオール新作登場!となるなら特筆すべき点は無い。しかしながら早くも動きの見える「まんがタイム」誌では来月号は他誌の人気作がゲスト登場あるいは同時連載開始となっていて、将来的には「ジャンボ」「ホーム」と言った系列誌が統合されていくのではないかという節すら感じられる。
即ち、これが時代の移り変わりを象徴する出来事になるとすれば、それは「媒体の変更」になるのではなかろうか。
報道にあるように、すでに一般誌では紙媒体の売り上げは減少一方でデジタル媒体への移行が取りざたされている。4コマに転じてみても昨今の人気作、話題作は主にWEB掲載の作品になってきている。
デジタル媒体での掲載のメリットは入手の容易さから読者の反応が大きい、早いことが挙げられる。また過去分を蓄積出来るので単行本化されずともアーカイブ化されればそれなりに重宝しよう。
個人的には画面を指で触って漫画を読むという行動には慣れぬけれども、時代がそれで良しという流れになっているのだから逆らえぬ。
ちなみに単行本化されている作品については特異動向無し。「きらら」系列、また他社誌でも同様の動きは見られない。
ということで、紙媒体については身も蓋も無く言ってしまえば「単行本の売れる作品で固めて発巻ペースを上げてやれ」で「WEB4コマで一発当ててやろう」というのが芳文社の一般4コマ誌における今回の大変革ではないかと読んでいる。
これが4コマ界に波及する大英断となるのか、王者陥落への序章となるのかは未知数である。
とまあ、ここまで書き上げていたところで真相が判明した。3月12日に発売された「まんがタイムジャンボ」誌4月号にて本誌の休刊が、同時にHP上では合わせて「まんがタイムファミリー」誌の休刊も告知された..。
で『今後は他誌、並びにWEB誌にご支援賜りたい』(HP告知要約)と。いう事で上記の読みはほぼほぼ当たっていたのでそのままに話を進めていくと、紙媒体の尻すぼみによる統合は時代の流れであるし、他社と比べてジャンルが圧倒的に細分化されていたからスリム化することは経営の悪化とも言えぬ。
しかしながら掲載誌の縮小が新人、ベテランの活躍の場を無くすことになるのを危惧する。「ジャンボ」誌など創刊(95年)の頃が丁度コンビニで漫画全般を様々読み漁っていた時期と被るので思い入れが深い(本連載開始02年)が、本誌は元々のコンセプトが新人発表の場であり、そのボリューム感で「ジャンボ」と銘打たれていた。ここから出た現在4コマ漫画家の多いことは大いに誇るべき歴史である。「きらら」系列に圧迫され区別するべく平綴じから中綴じにマイナーチェンジした頃からコンセプトが薄れ、改めて創刊当初の4コマ漫画史上の上昇気流が感じられる。つまり最初の10年は実に良き時代だったのだ。
ここ10年、4コマ誌は創刊したものも休刊と下降線の一途。今回2誌消え、しかもグループ全誌を巻き込んでの大幅入れ替え。「ファミリー」誌は実に2/3が連載継続であるから、どうもこの2誌単体の売れ行き云々というより全体的な低調を受けての枝葉切りと見える。つまりは単行本化されていなかった作品のみがズバズバ終了という寂しい顛末となった。
けれども、はっきりしたのは「今回終了の作品連は4コマ誌存続の原動力」ではなかったということである。となれば、歴史の転換は「媒体の変更」といったケチな流れだけでは無く、いよいよ4コマ作品が「保存する」「再読する」価値のあるジャンルにのし上がる、「読み捨て文化」と訣別する大チャンスでもある。
そもそもは「ナチュラル」「ポップ」から生まれ、未だ「まんがタイム」の冠が付いているはずの「きらら」系列をグループ誌と言うことが出来ないくらい引き離されてしまった芳文社の一般4コマ誌が逆にビジュアル系の弱肉強食世界を見習うきっかけになる。
私は単行本化に足る分量を連載している作品については損得抜きの社会的事業として単行本にまとめて欲しいと述べて居る。それは「売れる作品のみ継続させる」でも構わないのである。(人気至上主義で発展出来るのかは別問題)
マスとしては非常に小さなジャンルである4コマにおいて、連載=単行本化という図式が経営的に難しいのはある程度理解する。しかし掲載誌の削減で活躍の場が減るのだから、せめて商業誌に連載を持つ甲斐を、記録として残る喜びを持たせて欲しい。「読み捨て、描き捨てで良し」の旧弊から脱却できる、ここを逃してはならない。
芳文社は旧来、従来の4コマ漫画家の育て方、生かし方の誤りを認め、新たな4コマ漫画の発展進化を改めて目指して行って欲しい。
そこに、今回終了の憂き目に遭ってしまった方々を見る事になれば長年の読み手としては莞爾とする歴史となる。