-TOPIC-
芳文社に限ったことではないが、やっとのことで単行本化されてもその後ほどなく連載が終了し、続刊は出ず、完結編(最終話)が残ることもない..というパターンが、4コマ作品においてはママある。前号で紹介した浦地コナツ『ももこんティーチャー!』(芳文社)がまさにその典型。続刊の話が出ていないのでもはやどういうオチで締まったのか謎のまま..一応個人的には読んだ記憶があるのだが、時とともに忘却の彼方へ。
一体に読者ランキングがゲスト→連載→単行本化へのステップアップのカギを握っているのは一般誌と同じシステムながら、連載が続けば単行本でまとまるという図式が4コマでは希薄である。ストーリー性の無い、1話(ひとネタ)完結のスタイルだからなのだろう(「まんがタイムカプセル」で、未収録分がおまけに付く、というのもこの理由か)。好例は同じく前号紹介の神戸ゆう『旅館府和屋四代目!』(芳文社)で、1巻は当然ながらセレクトされた傑作集とでもいうべきもの。ヒットのきっかけとなった新キャラクター登場のいきさつを網羅する為に、選考はだいぶ苦労したそうだがストーリー性が絡んでくれば当たり前の話。というより、編年体で何故まとめられないのかが納得いかない。本作もまた、最終話が単行本化されていないので、読み捨てのままに単行本もされている。
実は言いたかったのはこれと全く逆の話で、久保田順子『13歳のりとるママ』(芳文社)など、短命であってもきちんと単行本化され、完結されるパターンが最近多くなっていることを評価したかったのだ。さらには野々原ちきの未収録作がこのほど短編集『nonote』(芳文社)としてまとめられ、懐かしい「もんぺガール小梅」など改めて読むことが出来るようになったと喜びたいところだったのだが。
よくよく眺めてみれば、これらは人気漫画家となってようやく果たされたご褒美であり、多くの(それなりに好評を博した)作品が、単純に売れる、売れないのモノサシによって作品としての完成を見ずに消え去ってしまっているのが変わらぬ現状なのだ。
もはや4コマは進化を遂げ、ストーリー性を多分に持って展開されている。ストーリーであるのだから、単なる傑作選でその全貌は見えず、一からその歴史(エピソード)を辿ることが作品に対する正当な評価を下せる手段となる。またも繰り返す、2年以上載った作品については分量的に問題ないのであるから、採算度外視で単行本化して欲しい。それが、歴史ときっとなるはずだ。
-PICK
UP-
毎年のリニューアルが一段落し、新連載が多くなってきたのでそちらを取り上げようと思っていたら、今年一番の衝撃的な最終回があったので一言。創刊以来の大長編であった寺島玲子『くり子の日めくりカレンダー』(ライフ)が7月号で終了。伝統のスタイルを貫いて、最後もいつも通りの内容で締めてあったが、これがもう読めないとなると切なすぎる。というだけでなく、極端に言えば一つの歴史の幕が閉じたことになる。
4コマによる世相、風俗の解説というのは新聞4コマでお馴染みであるが、もっとくだけた、サブカルチャーや流行りものの解説者として、作者は長い間君臨してきた。デビューから30年余り、ひたすら描き続けられているのは、常日頃の「話題」である。時に夫婦の、時には子供たちのキャラクターに借りて、作者のフィルターを通して消化された最新のニュースが語られているのである。読者はそれを読むことで、トレンドに対する一応の見解を得ることが出来た(もちろんすでに知っていれば、共感あるいは別な見方というものを)。本作も正しく一般的な主婦である主人公とその周辺の人々との間で交わされる、旬の話題がネタとなっており、気が付けば4コマ誌でそんな情報コメディーといったジャンルは見かけなくなってしまっている。単行本は旧タイトル「くりこさんこんにちは」で1巻のみ、しかも在庫なしという名の絶版。完全版が出されれば数年前のホイチョイ・プロダクションズ「きまぐれコンセプトクロニクル」(小学館)に匹敵する大百科ともなろうが..。それよりも、有限のものとなってしまったことに哀しみを禁じえない。ゲーム誌から週刊誌から、幅広い誌面で活躍している作者の新作を何より4コマ誌で望む。
-REVIEW-
ストライク平助
ゲームアンソロジーで活躍していたらしく、その縁で同社の4コマ誌「まんがぱれっと」(一迅社)に創刊から登場となったようだ。前作「今日もサツキ晴れ!」(一迅社)は初の単行本ともなり、現在も『春風いちばんっ』(ぱれっと)が連載中。こちらも単行本がすでに出ている。いわゆる萌え要素がふんだんに取り入れられており、本作ではロリありメガネあり、百合あり兄妹あり..と、いずれも濃いキャラクター達が複雑に絡み合い、女性に触れられると吐いてしまう難儀な体質の主人公を振り回す、極めて健全な(!)ラブコメとなっている。そう、きわどい言動が笑いを生むものの、内容は古の少年漫画のようなおとなしさなのだ。これは別に物足りなさを産むものではない。以前触れたように、成年漫画のようなシチュエーションで展開する(成年向けでない)4コマにおいては「家族愛・身内愛」に近い恋愛感情が用いられて、一線を越えない工夫がなされている。本作も正しくこの法則に従って、すんなりとカップル誕生にはならず、ハイテンションコメディー主体でいい感じにこんがらがっている。ただし。絵柄は正直好みではあるのだが、バストアップばかりの構図は単調で、作画的にまだまだフレッシャーの域を出ていないと辛口で締めておく。自身の努力は先送るとしても、背景アシなと雇うべきかと..(その根拠は単行本をご一読下サイ)。