-TOPIC-
単行本にならない..と、このところ愚痴を書き綴っているけれど、一昔に比べれば贅沢な話である。今や毎月、続々刊行されており、PRページも盛んだ。巻末に今月の新刊として小さく紹介されるだけでなく、連載の、6〜8ページの直後に丸々1ページを使っての告知がある。
表紙がそのまま使われていることもあれば、中身(4コマそのもの)を見せるものもあり、キャラクターを勢ぞろいさせたコラージュ、はたまた気合の書き下ろしでと、魅せ方は多種多様。そしてそこには、作品の内容を端的に教えてくれるコピー(惹句)が添えられている。大抵は通り一遍の、主人公を紹介する一文であって、似たり寄ったり、さして気に留まるものでもないのであるが、なかなかに秀逸なコピーを見かけることもある。
例えば宮成楽「晴れのちシンデレラ」(竹書房)の、『せっかく履けたガラスの靴が 重いんです…!?』は、典型的な主人公紹介であって、これも一般的な締め方である「!?」を使った単純な一文。多分に漏れていないにも関わらず強い印象を覚えるのは、貧乏時代の地が出て苦労している主人公のみならず、タイトルにも上手く掛かっているからか。流行りのキーワードを絡めるより一等上の工夫と言えるだろう。また、作品世界を的確に表現した一文も名コピーと言える。saxyun「ゆるめいつ」(竹書房)の、『なんかもう今日は、どうでもいいや。』は、まさしく浪人生(であるはず)の主人公たちの日常であり、描かれている全てと言っても良い。蛇足ながら書店員の書いた手製販促POPの、『今日やれる事はおおまか来年でいい人にオススメ!!』というのも蓋し名言かと(DVD発売記念「ゆるめいつ」増刊号より)。
さて、わずか2例であるがここまでは竹書房の単行本。同業他社のものはどうなのか、と、思い出しつつ探してみたところ..。バッチリ記憶にも残っていたのは海藍「特ダネ三面キャプターズ」(芳文社)の、『ずっと 高二(幸)』という短文。本作はゲスト登場が長かったせいか連載が飛び飛びで、同じ季節ネタが短いスパンで繰り返されており、「去年はこうだった」という会話が出ても進級はしていないという、サザエ時間で進行していた。中断のまま終了と後味は悪かったものの、結果確かに文句通り主人公たちは幸せな時期をひたすら過ごしていた。それをわずか数文字で表現しきれた、奇跡のコピーだと思う。
これらの惹句は4コマ誌を読んでいなくとも、書店で新刊を手に取れば読むことが出来る。単行本(の初版)に付いている帯に書かれているからだ。「買い」の一助に、これは間違いなくなる。
-PICK
UP-
前号チラと触れた通り、最近始まった新連載を取り上げる。まず先日「カギっこ」(くらオリ、MOMO、終了)が終了してしまった山口舞子から。すぐさま同じ掲載誌での新連載となったから、4コマではお馴染みの、マンネリ打破と思われる(人気低迷による打ち切りなら、新作は即連載ではなくゲスト登場からのステップアップとなる)。従って終了は寂しいものの、作者の作品世界を楽しむ分に影響は少ない。『ひなちゃんが王子!』(くらオリ、MOMO)も、変わらず愛らしい主人公と、手を焼きながらも見守る大人たちという図式。再び、微笑ましい話が読めることになる。
荒井チェリーは「三者三様」(きらら)や「ワンダフルデイズ」(MAX)など大長編を抱えつつ、他社(誌)での作品は短い周期で終了になっている。といって、ほぼ全て単行本化されている(から少なくとも2年以上は連載している)のはさすが。学園もので、設定が凝っているのでどれも十二分に読み込める。新作『未確認で進行形』(ぱれっと)もまた、16才の誕生日にいきなり許婚と小姑(その妹)が出来てしまった女子高生が主人公。スッキリと歯切れ良いテンポで、本作もまた読み返せる作品となるに違いない。
最後は先月始まったばかりの藤凪かおる『21時のシンデレラガール』(スペシャル)。第一回を読んだだけで俎上に載せるのは早急に過ぎるけれど、設定がなかなかに面白かったので是非もので。厳格な父の元で、高校を卒業した主人公は何とモデルのオーディションに合格。門限が19時から21時に伸びたものの、勿論父親に真実を明かすわけにはいかず。片道3時間の東京通い、果たして首尾よくいくのかどうか..?、と何しろ制約が多いから面白くないわけがない。問題はこの状況を崩さずに続いていくかになるが、作者は今やこの手のエキスパート。ぐいぐい主人公を追い込んだドタバタ劇が末長く続いていくことになるだろう。
-REVIEW-
ぼに〜M
かつて、こいずみまり「家政婦エツ子」(のち、「家政婦のエツ子さん」に改題)が「MOMO」誌に連載となったとき、「流浪の作品がようやく連載に」と謳われた。作者の活動が幅広く、定期掲載になりづらかったからかも知れないが、ゲスト(読みきり)登場が続くもなかなか連載にならず..といって、決して不人気故ではない場合もあるという、これは一つの証左である。では、作者の作品『世話焼き娘の083』(くらオリ、終了)はどうだろう。昨年「まんがくらぶオリジナル」誌で連載となっていたのだが、いつの間にか載らなくなった。しかし春先に「MOMO」誌にゲスト登場し、先月は「まんがくらぶ」誌にゲストで登場。実は連載前にもどこかで(MOMO誌だったか)短期集中で出ていた記憶が..ともかく、これもまた「流浪の作品」と呼ぶにふさわしい経歴を持ってきた。高校教師と生徒の関係が、家に戻ると下宿人と大家の娘で、家賃を滞納しがちの先生に、取り立てながらもついつい世話焼きを..と、乙女ちっくな少女漫画のテイストに、男性の描く笑いを盛り込んだ王道ラブコメである。ここに、作者の抱えるちょっとした弱みが見受けられる。前述こいずみまりは、女性誌でストーリー漫画を(小泉真理名義)描き、男性誌でも4コマを描くというマルチな活躍をしており、支持層は幅広い。そして女性ならではの、弱者と強者の区別のはっきりした笑いを入れている。ベテランとまだ10年を経ていない作者を比べるのは酷であるが、作者はWEB上の連載でヒット作を持つものの、4コマ誌ではまだまだフレッシャー。そして男性ならではの、結局何故か男が強いという関係性でのコメディとなっている。ダンディズムをすんなり理解出来る同性にとっては特に気になるところでもないけれど、異性にとっては受け入れやすいものであるかどうか。4コマ誌のメイン層は20〜30代女性(主婦)である。一定数のファンがいるものの、なかなか増えてこない、これが、本作の流浪の理由なのではなかろうか。
「まんがタイムきらら」誌での4コマデビュー作「うさぎ刑事・純情派」から本作まで、何とはなし読んできて、流浪という状況下での紹介となったわけであるが、この辺で一念奮起して、新たな境地を見せてくれるならば、すぐさま結果となって返ってこよう。ブレイクの下地はすでに持っている、注目しがいのある作者である。