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休刊が元で動きのあった、1社内における変動ではあるが、やはりここをもって時代の移り変わりとしたい。
おーはしるい『(もっと!)夫婦な生活』(ホーム)が今月号にて大団円。6年前に前シリーズが終了した際にはすぐさま新(現)シリーズで登場と肩透かしを食らったから念を押して隅々まで確認したが、出産をもって21年(作品世界は4年)の幕を下ろした。
前シリーズの終了は個人的な思い入れからアタフタと驚愕したけれど、今回はしみじみと役目を終えた実感と共に迎えられる。
「平凡な夫婦の日常活写」という、ファミリーものの大王道に対する需要が途切れたことがはっきりした。つまり4コマ界は確実に読者層の若返りが果たされたと言える結果が本作の終了となる。無論「サザエさん」以降連綿と続く大王道であるからいずれ再び出てくることになろうが、言わば「平成のサザエさん」が奇しくも年号の移り変わりと前後して引退である(大げさ?)。
後付けではあるが同テーマのロングランが相次いで終了している。先ごろは井上トモコ「あかるい夫婦計画」(産休を挟みつつ連載15年超も完結未刊..)が、重野なおき『うちの大家族』(タウン)もまた、来月号にて16年の歴史に幕を下ろすことになった。
ただいずれの作者も代表作の終了とはいえ別(テーマ)作品が快調にヒットしており、読者層の移り変わりに見事に対応し、着実にキャリアを伸ばしている。
重野なおきに関しては『信長の忍び』(ヤングアニマル)の大ヒットで元々一般誌での連載も抱える身ながらロングラン終えての新連載が出て来ず、もう4コマ誌で描かないの?という懸念を抱かせるが、これは別のお話し。
「夫婦な生活」に話を戻すと、ドタバタ子育てものの続編も出来そうだがすでにエッセイ4コマで育児ものは描いている(「ふー
are
you!」)から残念ながら焼き直しとなるテーマは扱うまい。でまたまた蛇足になるが芳文社はHP上の単行本リストから(作者に限らず)ほとんどの過去作が消えていて、近年のものしかアップされていないけど暗に絶版を意味しているの?であれば大長編を追読あるいはまとめ読みする機会はすでに閉ざされていて、やっぱり連載を持つ甲斐が見えないジャンルだなと嘆息してしまう。せめてこのタイミングだけでも過去作含めフィーチャーするなどもう一押しする姿勢が見たかった。
さておき。ファミリーもの自体は衰退している訳ではなく、見渡せばロングラン、ヒット作はまだまだある。
その内小池恵子『ななこまっしぐら!』(ライフ)は原点回帰のような、生活情報を混ぜ込んだ季節ネタを扱って支持を得ている。
また碓井尻尾『紡木さん家の場合』(ライフ)はコメディ主体で、よしもとあきこ『とーこん家族』(ライオリ)も貧乏ネタで健在なのが嬉しい。
再録ながら秋月りす『おうちがいちばん』(ライオリ、再録)、ショート作品では宇仁田ゆみ「よっけ家族」(ショート作品、ライオリ)、竹本泉「ガーデン姉妹」(ショート作品、ライフ)が大王道の家族ものを守り続けている。西炯子『ちはるさんの娘』(タウン、不定期)は恋愛ドラマの要素も含みつつ、基本は母娘の日常を描き、いずれベテラン健在である。
注目はoyster『新婚のイロハさん』(タウン)で、ベタ甘の新婚生活がフレッシュさを感じさせ作者の新機軸となっているが、さすがにこの内容のままでロングランになっていくとは思えない。
ところでこのラインナップを見てお気付きだろうか。王道のファミリーものが残っているのは竹書房、双葉社のみで、芳文社は残っていない。
冒頭で時代が切り替わったと言った。ではネオファミリーものとでも言うべき次世代のファミリーものの主力は何かと言えば、「疑似家族もの」になる。
丁度その境界線上に存在する作品が、ポスト「夫婦な生活」と言えるタイミングで連載している。
楯山ヒロコ『週末親子』(ホーム)がそれ。本作は戸籍上は他人の娘が週末だけ父のもとに押しかけてきて、母親との正式な結婚を迫るドタバタホームコメディであり、浮世稼業に身を窶しなかなか踏み切れない父親にグイグイ迫る様はなんだか懐かしさを感じる昭和な設定ながら、日常を追いかけずに非日常を描いていくというのは新しいファミリーものの設定である。それが、実の親子ではない「疑似家族もの」という新ジャンルなのだ。
(「疑似家族もの」の発祥はビジュアル系で恋愛を描いた時、非エロで愛情を表現するのに家族愛を代用として用い出した頃(10年以上前、ex.寺本薫「ふるーつメイド」)、というのが私見)
-PICK UP-
そしてすでにこの「疑似家族もの」は、ラインナップを挙げれば人気作とイコールになるほどの隆盛を誇っている。
池田乾『ふみのさんちの大黒柱』(ホーム)
水瀬るるう『大家さんは思春期!』(タイム、スペシャル)※下宿ものだが親が不在で住人同士で疑似親子(中学生大家さんが母親役!)の関係
市川和馬『見上げればいつも妹が。』(タイム)
桐原小鳥『おにいちゃんと呼ばないで』(スペシャル)
遠山えま『妹のおシゴトは時給2000円』(オリジナル)
高津ケイタ『おしかけツインテール』(オリジナル)
小池定路『父とヒゲゴリラと私』(くらぶ)
安西理晃『お姉ちゃんが来た』(ライフ、MOMO)
内村かなめ『お兄ちゃんビフォーアフター』(MOMO)
スズキユカ「おうちでごはん」(ショート作品、MOMO)
ちなみにこれらの作品はほぼほぼ「学園もの(オフィスもの)」としての側面も持ち合わせているのが特徴である(ビジュアル系でも同設定の作品がママ見受けられたが、こちらは学園ものの要素が強いのでリストからは外した)。つまり「疑似家族もの」とは親目線、あるいは夫婦目線での日常ものである従来のファミリーものから離れ子供が主人公である点、さらに血縁関係のある(濃い)本当の家族ではないという一定の距離感が加わり、生活感を排除した思春期向けの完全フィクションである。
これら疑似家族ものを、自らの結婚、子育てを経て所詮は作りものと振り返れてリアリティのある実録風を求めるほどにメイン読者層が成長したところで新しい年号に代表される「サザエさん」が現れるのだろう。
ネオファミリーものとしてはもう一つ、「居候もの」から発展した「(人外との)共同生活もの」というのも登場している。これについては次回取り上げたい。(この稿続く)