-TOPIC-
個人的にはそれほど興味を持っておらず、(掲載誌を)買ったときに読むぐらいでスルーしていたが、さすがに目撃してしまってはスルーも出来まい。
タチバナロク『可愛い上司を困らせたい』(スペシャル)2巻がコンビニの単行本コーナーに並んでいた。しかも1巻と合わせて7冊も。
コンビニで4コマサイズの単行本が並ぶことすら珍しいのに、その違和感たるや。植田まさしは並ぶけど。アニメ化されたわけでなく、巻頭カラーを飾る看板作でも無いのに配本された、という事は「売れる」からなのだろう。ついに4コマ作品の単行本化がこのレ段ベ階ルまで到達した、と感動を禁じえなかった。
「まんがタイムスペシャル」誌(芳文社)については近年定期的に取り上げているので少し振り返ってみると、丁度本作の登場とリンクしていることが分かった。
まず連載開始時の2015年には...
>単にコンビニへの配本システムがそうさせるのか、思った以上に深刻なのか。「まんがタイムスペシャル」誌(芳文社)をコンビニで見かけないなと感じていたら、軌を同じくして「恋愛」がテーマの作品が多くなっている。この路線変更(統一)が看板の宮原るり『恋愛ラボ』を手本にしていることは疑い無いながら、ストーリー性が追求されると売り上げに結び付かない?チラと、「ラブリー」誌の歴史が思い起こされる。(第53回より)
と、本作も含めた「恋愛」路線に危機感を抱いている。
で、今年に入って...
>一般誌においてはグルメより食レポ、レシピ紹介がメインのより身近な、実用的な内容が増えていて、一つ「まんがタイムスペシャル」誌(芳文社)復調のカギになっているようだ。(第60回より)
としていたのだが、前述の事実を見せつけられれば読みが全く誤っていたと言わざるを得ない。つまり恋愛路線が当たって順調に単行本化、売れ行き良好だったというわけだ。食レポ云々のプラスアルファは置いておいて、最近号を読み返せば、なるほどラブコメ作品満載であり、とはいえラインナップが変わっていく中で本作は順調に単行本が2巻まで出た。
改めて本作を見返すと、一般的な恋愛4コマと「違い」、男性キャラがリードしていく展開のようだ。さらに王道のマンネリである決定打が出ないもどかしさが初期から打破されている。コッソリ社内恋愛進行中の2人の出会いは一夜の過ち。しかもそれが繰り返されてなし崩しに付き合い始めた関係である。もちろんそれが怠惰なものではなく、上司のキャリア女性が振り回されつつというタイトル通りの恋愛ものである点が人気なのだろう。もう一つ、昨今のイケメンブームをきっちりと踏まえて、アイドルのような年下キャラを主人公に持ってきたのも本作の特徴であろう。そう、ついにビジュアル系の主要読者が「従来の」と但し書きの付く歴史を持つようになり、「従来の」青年、主婦層ではなく若い女性が読む、買う作品が4コマにも登場したのである。
作者はストーリー漫画も手掛けており、大河ロマンは望むところのはず。是非3巻の壁を破って、あわよくば一波乱も二波乱も今後巻き起こし、「ストーリー4コマ」の中興の祖となって頂きたい。
-PICK
UP-
「主任がゆく!」誌(ぶんか社)の連載作がようやく再びの単行本ラッシュ。2年前に一通り出揃ってあれこれ買い漁るも、実は4コマの旧弊が残っており、完結分が未刊行のままの作品が数多くあった。順調に巻を重ねるのはごく一部で、他は単行本が、続刊が、出ない..の?とやきもきしていたからこの度の単行本化(何とエッセイ漫画である師走冬子「墨たんですよ!」まで!)は着実な進歩と喝采ものである。
そめい吉野『農学女子』(主任)はナンバリング無しで3巻目(今回は豊作!だそう)。1巻で「続刊は無いのかな..」とこぼしていたが報われてますよ。一方おりはらさちこ「愛しの桜さん」(主任、終了)は3巻..まで。マンネリで永遠に続けられるものと思っていたが。まあ早速次号から新連載スタートと4コマらしい流れ。看板であるたかの宗美も含めて連載陣はいずれも売れっ子であるので、人気云々売れ行き云々はさておいて順次単行本で保存していってもらいたい。回り回って必ず読者は掲載誌を手に取ってくれるはず。
-REVIEW-
今回は近年紹介し忘れていた方を慌てて取り上げておきます。すでに単行本が出ており、それを手に入れていないのでどうしようかな、と思っていたらあっという間に年の瀬が迫ってきたので。。。
西岡さち『ざしきわらしと僕』(スペシャル)
均整の取れた絵柄とデフォルメ描写から相当なキャリアの持ち主なんだろうと思っていて、ざしきわらしものは世に溢れている中で早くから通読に至っていた作品。両親の離婚で祖母の田舎に暮らすことになった少年を迎えてくれたのが妖怪たちだった!?というファンタジーながら、同級生たちも濃いキャラクターばかりで、わいわい賑やかな日々の中で穏やかに成長していく主人公という、景色も相関図もどことなくノスタルジーを感じさせる、ひと昔前の日常ものといった作風で好みであるが。
作者は何と本作が初連載初単行本作でキャリア無しのフレッシュさんでした。いやはや、こういう方が4コマの世界に来てくれるとは、未来は明るいですな。
柴『白衣さんとロボ』(ライフ)
天才発明少女と開発されたロボットの共同生活、とくればギャグ作品に違いない、と近年のヒット作を踏まえればピンとくるはず。そう思って読み始めたらロボットがこき使われ振り回されるの関係性は同じながら、少々哲学的でもある。何故なら自我を意識し始めたロボット型のロボットだから。そんな不思議な雰囲気で、日常ものでギャグまで至っていないものの通読に加わった作品。
作者もまたまだまだ駆け出しのフレッシュさんながら、一般誌でも連載(『おおきなのっぽの、』月刊少年シリウス)があり、そちらも4コマ作品なので単行本に巡り合えることを楽しみにしている。