新・現在4コマ漫画レビュー 第53回

(初出:第220号 15.10.20)


-TOPIC-
予想通りの結末にご満悦ながら、そんなに騒がれるほどの手法じゃ無かった?春日歩『城下町のダンデライオン』(ミラク)は、9人兄弟姉妹間による次期国王選挙が主題であり、原作アニメとも9月にその結果が出てアニメは大団円、原作はさらに新章突入へ。4コマの弊害として単行本化までの未刊エピソードが約1年分生じるので掲載誌を継続して読んでいないとアニメとのシンクロ具合が比較しづらい、またそれだけの愛読者であれば1クール(本作は12話)に再編集され割愛されたエピソードやまとめ方に不満が残ったであろう、ぐらいの難クセは想像出来るが、間をすっ飛ばしてオチの付き方に注目した身としては大満足の内容であった。ヒット作のご褒美としてのアニメ化ではなく、原作共々クライマックスに向かって相乗効果で盛り上がる、メディアミックスならではの本作の粋な演出、今後ストーリー4コマの台頭を見るにあたって手本となるだろう。
一方。PR企画等ずっと見続けながら概要をさっぱり理解していなかったクール教信者『小森さんは断れない!』(タイオリ)のアニメは何と2分番組。竹書房の独壇場であったこのショートアニメのジャンルに食い込んできたのは、4コマとの相性の良さは述べてきているから慧眼と言えるのだが本作のストーリー要素を考えるとどうなっていくのかと。中2から始まって受験を経て、現在高校進学まで来ている状況で、受験編まで1クールで取り上げられるものかな。テンポの良さと反する、この思春期の揺れ惑う描写をまとめられるのか不安。作者の勢いにあやかってシリーズ化前提で話がまとまっているものなのか、やっぱり単なる論功行賞なのか、1話を観るだけでも漠然とした期待や不安というのは感じられるものである。
ついでに(失礼)。「まんがタイムジャンボ」誌(芳文社)での過去作、イセダイチケン『びあ充』が一迅社から単行本化(イセケヌ名義)。昨今の酒漫画ブームに乗っかったのか、経緯はともかくとして問題にしたいのは分量。全1巻で連載ものよりやや分厚いのが未刊作品の悲哀を表わしている。ゲスト登場が長かったとはいえ、これだけの話数を載せておきながら単行本未刊では記憶に残らぬ。まだまだ経営重視の体質が抜け切れていない。何度でも繰り返すが社会的文化的事業として損得抜きである程度続いた作品は記録して保存して頂きたい。


-PICK UP-
その流れでもってニワトリタマゴ。単にコンビニへの配本システムがそうさせるのか、思った以上に深刻なのか。「まんがタイムスペシャル」誌(芳文社)をコンビニで見かけないなと感じていたら、軌を同じくして「恋愛」がテーマの作品が多くなっている。この路線変更(統一)が看板の宮原るり『恋愛ラボ』を手本にしていることは疑い無いながら、ストーリー性が追求されると売り上げに結び付かない?チラと、「ラブリー」誌の歴史が思い起こされる。
そしてまた困ったことに、コンビニで読めないから本屋で購入、じっくり読む、結果読み出す漫画家、作品が増える、個人的なトレンドになる、コンビニでは見かけず..のスパイラルに。
各社全誌を置いているコンビニも無いながら、芳文社に限っても「ジャンボ」を置く系列、「タイオリ」だけは毎月ある店etc...うろつけば必ず読めていたのだが「スペシャル」を見かけない。そして最近は「タイム」本誌も..。私の行動範囲のみで起こっている椿事であることを祈るのみ。


-REVIEW-
瀬戸口みづき『ローカル女子の遠吠え』(スペシャル)
発見が遅れたけれど、男子でも読める少女漫画を描いているのも納得の、地方が舞台のオフィスもの。Uターンあり地元の雄やお局のOL達がいて、左遷が堪えていない若者が溶け込んでいく。東京を色濃く意識しながら描かれる地方の社会人生活は、時に今ドキを月旦しつつ色々な気付きを取り交ぜてあり、大人が読み込めるサラリーマン4コマに。
『初恋・症候群』(MOMO)はすでに既刊2巻の長期連載作ながら、マトモに読んでなかったのを反省。

町田すみ『だけど温田さんはひとりでデキない』(スペシャル)
お嬢様というキャラクターは廃れないもので、描き方次第で手っ取り早く支持を得ることが出来る。本作の主人公も実に人間離れしており、どこをどう間違ったか一人暮らしを始めたものだからどうしようもなく周りを巻き込む事になる。まあ「はじめてのおつかい」が面白いのと同じ理屈でしょうな。突き放す言い方だけど、典型の中で飛び抜けるにはリアルは不要。という事で、清々しいまでの天然に上り詰めている言動は文句なし。このまま、何も変わらないでいて欲しいというのは掲載誌の方針からして叶わぬ願いか。

幾花にいろ『同姓同盟』(スペシャル)
今は無き4コマ大賞出身の作者久々に登場。ゲストながら連続掲載しているものの、相変わらず台詞背景等々書き込み過ぎのキライが抜けておらず。スマートなキャラ描写を見てもストーリーの方が向きなのではと思ってしまうのだが、本作を見て4コマにいて欲しい存在に。漢字違えど同じ名前の2人を軸にした学園ものは、会話のテンポや展開が不親切に振れていて、説明台詞をもっと削れば辻灯子ばりの独自色を出すことが出来そうだ。クールキャラオンリーの4コマというのも追求すれば新しい読者層を獲得する可能性がある。
本作がそのステップアップになることを望む。成長が待ち遠しい。


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