-TOPIC-
昨秋の話で今さら何も無いのだけれど、「まんがタイムきららミラク」誌(芳文社)が10月売りの12月号で休刊となったようだ。年明けに書いているのはつまり..知らなかったからで、推して知るべし。丁度震災直後に創刊されて手に入れられなかったので記憶に残っていたから記しておく。蛇足すれば結局育てなかったツケが回ってきた、飽和に至れば淘汰されると、自然な流れ。
-REVIEW-
大山ぶくぶ『ポプテピピック』(WIN)
「まんがライフWIN」はネット配信。ネットで4コマを読むという習慣は身に付かなかったので未読だったが色々話題になっており、年明けのアニメ化を聞いて慌ててその前に単行本をチェック。
久しぶりに読む本格的な不条理ギャグもので、噂通りコピペが多用されている作り。そして最終回は出版社を破壊しての恨み節というネタにも関わらずその後きちんと単行本化され順調に続編が連載中(現在シーズン3)。
いずれも何だか懐かしい作りである。不条理とはいえ作者的には好きな事を並べているだけなのだろう、マニアックと想像出来れば題材、元ネタに精通しなくとも十分に楽しめる。目新しい視点、世界観を提供してくれるのが不条理というジャンルであり、センスである。コピー&ペーストはコマ稼ぎではなく、会話劇であれば同じコマの連続は別にインチキではない。3コマ(以下)でオチが付くという作りはあずまきよひこ「あずまんが大王」(電撃)でも良く見られた手法である。寧ろ興味深かったのは単行本のおまけページに載った、「ランダムにピックアップされたコマの台詞が全て違う」ネタ。これはアニメでも活用されている(後述)。そして出版社もつるんでのお遊び。柱コメントでディスられ、打ち切りと書かれての単行本化、続編。往年の「スピリッツ」誌(小学館)巻末を見ているようだ。
というわけで期待を膨らませて観たアニメもまた、想像を越える作りで混乱しつつも高評価。1ネタ毎に違うクリエイター(集団)が制作し、CMをはさんでのBパート(後半)は「再放送」と表示され、Aパート(前半)と全く同じネタを繰り返す。勿論ちょっとずつ中身が変化しているのは例の単行本のおまけに通じる作り。さらにはオープニングと次回予告だけで進行する学園ラブコメ作品が本編のOPとEDに入っており、サブカル色全開。
ネタだけで見れば竹書房お得意の5分アニメで毎日配信とかでも良かったんじゃ?と思ったが、まとめて30分、全国区(BS)でやってなければ多分追わなかった。王道のメディア露出でこの新機軸、社会現象を巻き起こせるか。
えきあ『ファーストクラスニートましろ』(ライフ)
メイド付きのお嬢さまは布団にくるまったままのゴミクズニート。主人公のダメ人間ぶりが面白いコメディ作品として楽しんでいたら、ある一コマで印象が一変したので早速取り上げる。
コピペを思い出せば本作の主人公がまさにそれで、「張り付いた笑顔」というのがピッタリくる、全てのコマが同じ顔。感情や表情が分かる描写はデフォルメ、というか下書きクラスで描かれる。この美少女なのだけど言動と一致しない表情が、ゴミ袋を突き破ってアップになるコマで血しぶきのようなトーンをちりばめられた瞬間パッと楳図かずおを想起させた。
可愛いキャラクターでエグイ言動というのは少女趣味でお馴染みであるが、本作は通り越してホラーまで昇華出来る可能性を感じてしまったのだ。
急に現実世界を直視して絶望するようなシリアスな展開になって、なおこのコピペ顔を貫いたとしたら..我々は「ホラー4コマ」誕生の瞬間を目撃することになるのだが..いや、無い無い。