さて、話は前回からの続きになる。1カ月エロ漫画を読み漁って得た、新たな興味とは?
4コマ漫画である。元々、青年漫画誌には必ず2つ3つあるこの4コマ作品は、ギャグ漫画という括りでもって読んでいたものが多かったし、4コマ専門誌もいくつか愛読していたりする。しかし、前に挙げた大橋ツヨシやみずしな孝之などは例外として、他は皆、ストーリー(ギャグ)漫画から興味を持ち、その漫画家の4コマ作品ということで読んでいたもので、いわゆる「4コマ専門」の漫画家の作品を読んだことは少ない。そして最近になって、ようやく4コマ漫画を新ジャンルとして開拓している訳である。
4コマ誌を多く出している出版社といえば、芳文社と竹書房の2社が挙げられる。他に、エロ4コマの「みこすり半劇場」誌を出すぶんか社、4コマとショートを半々で載せる「クレヨンしんちゃん特集号」誌の双葉社。各社各誌に連載を持つ漫画家は非常に多く、更に通常の漫画誌にも4コマを載せる人も多い。つまり主流(売れっコ)は毎月4〜5作品を供給している訳で、ネタがマンネリ化しているのは実感出来る。しかし、かつての「不条理マンガ」ブームの火付け役が4コマ作品であったように、固定された常識を覆すような作品が生まれる可能性を常に秘めているのが4コマ作品であるように思われる(冗長)。だから既存の型を打破するような作品を求める時、4コマ誌のチェックは外せない。実は、すでに4コマ漫画は今までのイメージから少しずれている。
先人の築き上げたファミリー4コマ、を継承している作品には、4コマ(起承転結)のうちの1コマに、必ずといっていいほど時代錯誤なネタを持ってくる傾向にある。つまり、「今どきこんなこと...」という設定が多い。サ○エさんのような、日常を描いているつもりで非日常の(時が止まった)世界が広がっている。しかし、昨今のホノボノ路線は古臭いという先入観に惑わされなければ、オチは意外と凝っているものが多いので、ヒネた笑いが楽しめる(具体例は..挙げられず)。
そして新たな主流。学生〜若いサラリーマンを描いた作品は、形態は4コマであっても話は連続しており、恋愛や日々の暮らしが描かれていてストーリー漫画と変わりはない。ただし基本的に笑いで落としながら進行するためか、展開はほぼ定型化している(ついでに言うならキャラ設定も)。ストーリー漫画における転換点を常にオチとして小出しにしているから、話がなかなか進めないでもいる。逆に言えば、話は展開を続けても、完結には向かわず・・ということで、長編における中盤の最も安定した部分を読む感覚が常に味わえる。こちらは一人紹介しておこう。
小池田マヤ・・柔らかなタッチの画風と硬軟のバランスがとれたキャラクターがいい。関西ネタを売りにした作品は数多いが私はこの人の作品が今のところ一番くどくなくていいと思う(「マイペース!ゆず☆らん」)。特集号が定期的に出されているので、見かける機会も多い(今だと「ときめきまっくん」の総集編(まんがタイムオリジナル8月号増刊 芳文社))。基本的にOLが主人公の場合、「働かない」ことをオチにするギャグ型と、仕事の優劣を問わず社内の人間関係に焦点を当てるストーリー型に分けられるが、作者のは後者が多い(「すーぱータムタム」(まんがタイムラブリー誌 芳文社)など)。結局、新しい流れとはこのようなストーリー型を指す訳だが、この型は元々ある、10P前後のショート(短編)作品に類例が認められる(例・・有間しのぶ、深谷かほるの初期作品)。4コマ化したことで表れる特徴は先に挙げた通り。
それにしても何故、エロ漫画から4コマに目がいったのか。蛇足ながらその理由をつけ加えておこう。いかにグータラ店員といえど、店にある雑誌を読むことの可能な時間は限られている。ましてエロ漫画・・となると、1人勤務となるある時間帯(秘密)のうちの数十分(つまり客のいないタイミング)しかない。入場制限などしていない不夜城で、そのチャンスは予測不能。このような状況下でストーリー漫画を読むことがいかに困難か、お解り頂けるだろうか。例えば長編作品の1話分を、3回に分けてなおかつ5分休憩を付けて読むような感覚である。もどかしいことこの上ない(前回、評価が低かったのはこの影響が大きい)。で、一番読みやすかったのが4コマだったという訳である。エロ漫画は一月で読まなくなったが、この時間帯に読むことは覚えてしまった。ということで4コマ誌に手を出し、まんまとハマったのである。その利点はずばりキレの良さと言える。一本4コマで展開されるストーリーは、話しがつながっていようが何だろうがすっぱりと切ることが出来る。一本を読むのに要する時間はわずか10秒(個人データ)。客の出入りをチェックしつつ、時間の限り読むことが可能なのである。まさに時間つぶしにうってつけなのが4コマ漫画誌、と断言してしまおう。
もちろん、気にいった作品があればじっくりと単行本で読む。ストーリーを確認出来る上に結構な分量で、これはこれで読みごたえがあっていい。そして、これはちょっと失言になるが、オヤジギャグやお約束の宝庫である4コマ作品の単行本は、読みやすい絵柄と適度な退屈さでもって、ナイト・キャップに最適なのである。