TOPICS 第38回

(初出:第43号 00.10.20)

新雑誌創刊ラッシュ?
20代前後をターゲットとした創刊誌が相次いでいる。
男性誌では「コミックバウンド」(エニックス)、「月刊ヤングマン」(三和出版)、「コミックH」(ロッキン・オン)。
「バウンド」誌はヤンマガ系の雑多な雰囲気が色濃い。この型は雑誌自体のカラーを持ちにくく、個々の作品それぞれの支持が集まって購買層となっている。ゲーム業界では最大手だが、今回はその知名度を特に利用する風でもない。片や「ヤングマン」誌はアクション、バイオレンス主体の「男っぽい」作品が並ぶ。個人的には魅かれる作品があるものの、そもそもサードパーティーで同趣他誌に対し勝算があるようでもない。そして「コミックH」誌はイラスト誌のような変則構成(作品の前に作者の経歴を載せるページがある)に、連載陣もこれまたアート的なというか..。前にも同じような漫画誌を単発で出していたような気がするが、今回の「創刊誌」もリサーチ的な企画ものと見えてしまう(くらいに特異なつくりである)。
女性誌では「Zipper comic」(祥伝社)が創刊。ファッション誌のコンセプト、ターゲットをそのまま漫画誌に移植したこの型は「CUTiE comic」(宝島社)と同じ。で、執筆陣もかぶる。実は(株)シュークリームがどちらの編集にも関わっており(注)、発行元は違えども兄弟誌(姉妹か)と言うことが出来る。
(注)「CUTiE comic」誌は現在発行編集とも宝島社名義。
さて局地的見解だが「CUTiE comic」誌の売行が下降著しい。いわゆるヤング向け女性誌のラインナップが画一的になっているのが原因の一つと考えられる。新感覚という新たなジャンルを開拓したかに見えたが、結果論としては新規の読者層を取り込めきれずに、発展継承する次代の描き手も現われていないのが現状と見る。更には生粋の漫画ファンにも受け入れ難い状況のようで、あくまで私見だが雑誌そのものの購読は、おミズのおねーちゃんが暇つぶし用に。作者個々のファンは単行本買いにとどまっているようだ。逆に既成ファンが受け入れて好調の「FEEL YOUNG」誌を持つ祥伝社が追随したこの型(「Zipper comic」)だが、残念ながら現状では単発終了の気がしてならない(目新らしさはナシ!)。
まとめると、男女誌ともに漫画から「離れつつある」若者をいかに取り込むかについて積極的になっていると思われる。見方はやや悲観的だが、個人としては前も述べた通り「革新」は望むべきものと考えているのでこの状況は好ましい。

タカハシの目(ミニ)←「ドキドキ東京」のマネッコ。
最近の主流は中性的なキャラクターということで、唯我独尊のキャラクターが少なくなりました(文体変更)。あまり優男ばかりだと「男」が欲しくなるというか..(誤解無きよう)。これも局地的見解ですが、そんな需要が増えてきたのか劇画系漫画誌の売行が伸びています(といっても微々たるものなんですが)。特に「漫画ゴラク」(日本文芸社)系と時代劇専門誌「コミック乱」(リイド社)は、入れた分は確実にはけています。現象として前述の新刊誌、後述の少年漫画誌の動きと関連づけると面白いかも。
個人的に紹介したい作品は影丸譲也「獣道」(漫画サンデー)。幼くして秘伝の格闘術を教え込まれた主人公が都会に逃げてきて、様々な現代格闘技と出会う。たなか亜希夫「軍鶏」(漫画アクション・原作橋本以蔵)もそうなんですが、この手の格闘シュミレーションは主人公の男っぷりが良いです。
(注)「獣道」は最新号(10・31号)であっけなく終了となりました..。終わり方はこれぞ「打ち切り」というにふさわしい唐突窮まりないもの。ある意味貴重(不謹慎)。「軍鶏」の方は現在クライマックスが進行中。「アクション」誌の良心となっています(偏見)。
作品そのものに男っぽいものを求めたいなら、やはり激動の70年代の作品が最適。とはいえちょっとギャップが激しいので読みづらさが目立つかも。となるとある程度洗練された80年代前半の作品。古本屋を回ればそれなりに手に入りますが、手っとり早く最近の復刊ものを買うのが一番。おすすめは小学館「MYビッグ」かリイド社「20世紀ヒーローシリーズ」。「MYビッグ」では池上遼一「男組」(原作雁谷哲)、「20世紀〜」では石井いさみ「750ライダー」が個人的に今改めてすごく面白いのです。
(注)池上遼一はちょっと前の画風が好き。幻の傑作を集めた短編集「ジム」(10月30日発売)が楽しみ。「750ライダー」は確か当時の「悪書追放運動」にひっかかって、途中からラブコメ路線(有名な「秋ですネ・」などの独特のフレーズ)へ変更したのが残念(ロング・ランの要因ではあるんですが)。既刊(1〜3巻)では当初の硬派路線が楽しめます。

個人的情報数篇(今回は断片的に)
・「少年ジャンプ」の販売数が、徐々に「少年マガジン」と並びつつある(文体変更)。かつてでは考えられないコメントだが近年は少年誌主要4誌ははっきりとした差が見えていたのでこれは立派にニュースになる。少年誌自体の売上増というわけではなさそうで、推測だが「ジャンプ」は王道路線を崩さなかったことにより読者が戻り、「マガジン」はジャンルを広げすぎたことで読者が離れた。双方ともに長年培ってきたカラーは消えず(消せず)、この変化は単なる周期的なものと思われる。
・TVドラマ化記念で特別読切の「編集王」(土田世紀、スピリッツ45号)で、副編宮さんが痛い一言。「新古書店の進出で出版界が痛手を負っている。このままでは誰も本を作れなくなる」。漫画好きを公言する者にとって、業界の今後を省みない読み方はやはり後ろめたい。ファンたる者些少なりともパトロンたるべき、で然るに言いたいことも言えるのではないか、と。対する仙台さんの意見も現況をフォローしているようで意外に手厳しい。「そもそも読み捨ての文化を作ってきたのは出版社である。商売としての漫画を憂うのは真の漫画読者に必要なことではない」。しかし自分の中のホントウのものに対しても語り継ぐ責任を今、果たしているのかどうか...。本作の結論は「個人個人の意識にかかる」と結ぶ。漫画に対するスタンス、意識、接し方etc...一度考え直すべきか..。(→続き「タカハシの目」第31回
・西村しのぶ近況 「FEEL YOUNG」誌11月号に「RUSH」。細かい感想、今話の結論についてはおいておいて。「おうちのなかで鍵がかかるのはトイレだけ」「ケイタイ(欲しい)?王侯貴族のつもり?」「アルバイトしたらママと生活すれ違いになっちゃうでしょ!!」「もともとりっちゃんしか友だちいないし」「ママの買ってきた電話はローテクで かろうじて留守録機能があるヤツ」etc...この感センス覚はいつも変わらなくて、好きだなあとはいつもの感想。見習うべきだなあとは今回改めて感じた感想。
 



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