Apendere senza riguardo. あとさきかまわず金を遣う。という事で今回も始まあり。
コーヒー好きなんです。食後は必ずだし、一日中何杯でも飲む。そもそもの始まりは喫茶店でバイトをしたからなのよ。クラブのママが趣味で集めたカップがいっぱいあるの〜。と専門学校、大学経営者におねだりした事が発端の高級コーヒー店で私はコーヒーに目覚めたのだよ。店で味を覚えていった私は色々な喫茶店へと行くようになった。チェーン店のカフェや昔ながらの喫茶店。はては場末の夜はスナックになるような喫茶店などなど。スシ屋では玉子で店がわかるように喫茶店では、なにはともあれ(ブレンド)なのである。魚釣りはフナで始まりフナで終わるわけであり、よって喫茶もブレンドに始まりブレンドに終わるのである。
色々な経験もしてきた。テーブルの向かいの人間の声も全く聞こえないぐらいの大音量のロック喫茶では店の主に注文が聞こえなかったのか(当然だ!)「あぁ!?」と言われたり、立ち飲みのカフェでは、あからさまに女性店員に無視されたりもした。良い店も数々ある。来店2回目には「この前と同じでよろしいでしょうか?」と聞いてくる店やカップが毎回違う店などなど。しかししかし!世の中には私なんかが考えてる以上に不思議な店というのもあるのだよ。『ヤバイ』この言葉がもつ色々な意味。クールでありホット。トラディショナルモダン。偶然であり必然。その全てをそなえている店を発見した。
その店は川沿いの小さな店。外観は怪しく樹におおわれており、店の入口は歩道がない車道側。いや、怪しいというよりは妖艶と言うべきだろう。外観の味の良さは、違いのわかる人達には有名らしく、絵になる被写体として数々の写真におさめられている。
店内へ入る。ドアの立て付けが悪い。ドア自体というよりもこの建物自体が傾いてるようだ。店内はまあまあの広さ。ボックス席3、カウンターには6席ぐらい。大人数用の8席ぐらいのテーブル。全体に茶系の配色がされている店内で私は窓側の席へ座る。店にはオババが一人。何をしてたのかはわからんがカウンターの中からスックと立ち上がり私に「いらっしゃいませ」。水を持ってきたオババに私は「ブレンド」と注文する。
店内を見回す。昔から使っているであろうレジスター。ボタンがでかくてカーブをおびている。業者から戴いたであろう壁掛け。京人形の横にはカップが飾られている。そこで私は(オオッ!)と気付く。レジの後ろの壁には農協で売っているような帽子が2つ。どこのメーカーかはわからない。帽子の横にはビニール傘3本。見たことのないブランドのコーヒーメーカー。
オババは何やらコーヒーをいれている様子。サイフォン?水出し器?何かはわからないが、何かでコーヒーをいれているのは確かだ。
私はメニューを見る。驚いた事にフードメニューが充実している。が!..やってしまっている。「ピザハウス」と店の看板にはあるのでやはりピザ類は多い。ランチメニューもある。しかししかししかし!!!『カレー』とは何ぞや!?ウーム..「カレー」は許すとしよう。『特製エビフライカレー1300円』とは解せない..。まあ200歩譲って許すとしよう。しかしねえ..『焼肉定食』とは何ぞや!?「ピザハウス」ですよ!!
ここでコーヒーがくる。
(..ウッ薄い..。)雨水で作ったってこうは薄くはならんぞ!しかもマズイ..。
再びメニューを見る。デザートメニューの中に『オレンジ』の文字がある。しかも400円とはまた微妙だなあ..。ドリンクメニューを見る。ウーム..何たる事だ!!(ブレンド、アメリカン、ミルクコーヒー〜)などなどとあるが私は久々に恐ろしくなった。コーヒーの覧の一番下に『ストレートコーヒー各種400〜500円』の文字が!!以下オレンジジュース、ティーなどとあるが、私は「ストレートコーヒー各種」という言葉の偉大さに圧倒された。普通の店の場合は(ブラジル、モカ〜)などと銘柄を書くのだが、この店はもう既にそういう次元ではないのだ。「つべこべ言うな若人よ!豆は各種あるのだ安心しろ!」とオババの偉大さを感じずにはいられなかった。
続きを見る。(コーラ、コーラフロート)などと定番喫茶メニューがあるがなっなっなんと!よく見たらコーラフロートではないではないか!『ローラフロート』であった。ウーム..コーラの最上級のローラを仕入れているあたりがこの店の売りなのだな...いや、入力ミスだな。しかしそのままにしつづける勇気はスゴいではないか。再度メニューへ。『ホットミルク350円』まあまあギリギリ妥当な値段だ。しかししかし!ウーム..。人智を越えているとはこういう事なのだな。「紅の豚」のセリフを思い出した。『かっこいいとはこういう事さ』まさにその通り。『ホットミルク350円』の下には堂々と威光を称え『アイスミルク400円』の文字があった。はたしてこの50円の差というのは一体何を伝えているのだろうか!?私はまるでイコンを観るように『アイスミルク400円』の文字に吸い寄せられていった。考えてみた。ミルクを温めるよりも冷やす方が電気代、手間賃が??いやきっとアイスミルクには氷が入ってるはず。だから氷代が??いや違うだろう。私は凡人だ。馬鹿だ。違う、違うのだ。何が普通で何が異常なのだろうか?何が正しく何が間違っているのだろうか?私は自分でも気付かないうちに大人になってしまったようだ。疑う事ばかり覚えてしまい目の前の真実から自然と逃げる術ばかりを覚えてしまったようだ。ミルクが温かろうが冷たかろうがその値段は普遍であり絶対なのである。世の中は法の世界なのは理解している私だ。しかし「法」だけなのであろうか?「法」をも超えた何かがあってもいいのではないだろうか?私はこの店の「ミルク」から色々な事を学んだ。(1+1=2)ではないのだ。(1+1=キダム)でもあり(1+1=高尾山)でもあるのだ。今私はハッキリと言える。私は成長したと。
(fin)