-TOPIC-
「まんがホーム」誌(芳文社)6月号で何が驚いたって巻末の「新人まんが展」という2Pの投稿作紹介コーナーに赤のキノコが登場したこと(「幼なじみのハナミズキ」)。勿論投稿されたから選ばれて載ったのだろうけど双葉社で単行本も出ている作者がここからというのはこのコーナーの選出基準が分からない。選評付けるより(裏で)詰めていってせめてゲストで登場させるべきでないのかと。完全な素人では無いのだから。
(以下過去記事より引用)
そして悲喜こもごも。芳文社で連載を持っていた、しまこ美季が竹書房Y−1グランプリの月間賞で佳作に入っていた。デビューしていても実績が伴っていない(単行本未刊)と、掲載を目指して一からの出直しとなる、厳しい世界である。(中略)いずれも一作でつまずかずに階段を昇っていってもらいたい。
(第158号 新・現在4コマ漫画レビュー 第13回より)
と、過去に類例が無いでもないが昨今は単行本出している漫画家さんでも新人扱いですか..。単行本化のハードルが下がっているという嬉しい側面でもあるけれど、やっぱり描き手のプロとしての一線は下げてもらいたくない。それともさっぱり未来に繋がっているように見えない「新人まんが展」の在り方に一石を投じる敢えての掲載であるのか、となれば歴代受賞者には「連載」という結果を残してもらいたいと切に願う。
宮成楽『晴れのちシンデレラ』(ライオリ)は単行本16巻、『天国のススメ!』(ホーム)は次号最終回も13巻まで刊行中とロングランを抱える作者であってもゲスト作品は軒並み習作まで。たまたま部屋を整理していたら以下2作の切り抜きが出て来たので改めて読んでみた。
宮成楽「それでも先生!」(MOMO)「かぞくのレシピ」(ホーム)
いずれも各誌初登場時の作品である。キャラ、設定と今でも良く見るタイプであり、結果論で言えば振り回され型の主人公が弱かった、その分ツッコミ役は不要だったかも、といったところ。「晴れシン」の主人公お嬢様は物理的にも最強キャラで、ツッコミ役(弟)をも振り回す。「天国の〜」は振り回され型の主人公にしてチート級の霊能者で最終的にキッチリと収束させる甲斐性を持ち合わせている。
共にショート作ながらえきあ「太刀川さんまた聴こうとしてる!?」(主任)、安西理晃「前世からお慕い申し上げます!」(主任)はボツ案ボツ作を練り直したら出来た作品だそう。
習作と大作の差はこの程度の違いから生まれる、のかも知れないことを描き手側は信じて良い。
-PICK
UP-
ぎんもく『沖浪荘202号の漫研部』(タイオリ)は初回縦割りコマがあった。各ページには小見出しがあるからワイド4コマとしたが迷いはあった。
本誌では先駆者たる丸井まお『となりのフィギュア原型師』(タイオリ)がはっきりと「ワイド4コマ第○回」と掲示しているが、明記された作品の方が少なくて、他に森永まさと『跳べないウサギと神の島』(タイム)くらい。
「沖浪荘〜」は4話目で再び冒頭ラストに縦割りコマ。内容に応じてショート割が取り入れられている。
一般的な4コマ作品も改めて眺めると非4コマ進行が常態化している。タイトルが2本に掛かっていて8コマ進行というの、辻灯子『恋はリベンジのあとで』(ホーム)、胡桃ちの『ミッドナイト・レストラン7to7』(タイオリ)など頻繁に使っている。いがらしみきお『ぼのぼの』(ライオリ)はもう作品全体がその仕様で8コマ漫画が誕生していた。さらにページ5コマで1ネタというのも大井昌和『ちぃちゃんのおしながき』(ライオリ)では様々なパターンを駆使している。
ストーリー漫画も手掛ける、4コマを熟知しているベテランが伸び伸びと使っているように見える反面、フレッシャーズではなかなか見かけなかったのが、カネコナオヤ『スーパー恋愛タイム!』(タイム)では主人公たちの出演するヒーロー番組のシーンがショート仕様。メノタ『夜の缶詰』(タイム、ゲスト?)は初回から変則形を多用してきた。
おこがましい、と遠慮して(させて)いるなら勿体ない。流行りを追わない歴史は4コマには無い。ワイド4コマはその辺りの殻も破ってくれている。但しコマ割りの稚拙なショート作品という評価に繋がる諸刃の剣でもある。
-REVIEW-
梶井スパナ『サレ妻お江戸リコカツ録』(ホーム)
旦那の浮気現場を目撃してひっくり返ったら江戸の駆け込み寺にタイムスリップ。寝取られ女の自分探しとばかり思い込んでいたら、現代の知見を活かして(活かされて)江戸の女性環境を改善していくという読み応えある展開になりそうで俄然興味が沸く。
「中高年の脳は行きがちだよね、江戸に。」(吉田戦車「出かけ親」(小学館)より)だからというだけでは無かろう。不便だったはずの時代の豊かさ、転じて現代の便利さを伝えてくれるのなら為になる。
作者百合漫画が得手のようで、本作もその要素満載であるのだが、ルポものオフィスものという4コマの王道ジャンルを加味した時代もので開拓していってもらいたい。平賀源内といった大物を登場させるのもこういう作品ならアリだと思う。