-TOPIC-
1年ほど前の冒頭を読み返すと何とも皮肉な暗示であった。
『竹書房50周年という節目の年に、とは雑な括りになるが、「まんがライフ」誌(竹書房)10月号は一つの完成形なのでは?と思える出来であった。』(第85回)
頂点にたどり着けば凋落は必然か、この神号扱いした「ライフ」誌はすでに無い。結局は「合体したリニューアル1号目」(9月号編集後記より)として「ライオリ」誌が存続し、ボリュームアップもキラーコンテンツが飽和状態。神仙寺瑛『となりの席の同居人』(ライオリ)が最終回となって超ロングランの看板作『動物のおしゃべり』(出戻り)を残したが3巻が出たばかりなのに単行本完結出来るの?といった笑えないドタバタ劇。(完結4巻がすぐに出るようなので話数調整は出来ていた模様)
読者アンケートに変わらず「コミックスになったら買いたいと思う作品があれば3つ以内でお答えください。」とあるが単行本化されていない作品が3つくらいしかない(4コマ作品に限れば3つもない)。
寧ろ3巻の壁を越えた長期連載がひしめいてゲストが出せない、ゲストから新連載が出て来ない。と思ったら次号予告にて近々に登場したばかりのジェントルメン中村『剛力さん家はシュラバラバンババン』(ライオリ)が即連載と既定路線だったの?と疑う迷走ぶり。
師走冬子の間を置かぬ新連載(次号)は嬉しい限りも新人枠じゃないし。愛読者からすれば鉄壁の布陣で特別定価が常態化しさらに上がり続けよう(※ページ増によるものと思われる)が一向気にならないものの。緩やかな、下り坂を進んでいるような感覚が拭えずにいる。
-PICK
UP-
ついに1強時代を迎えた芳文社も掲載誌がシェイプ化されて人気作でパンクすると思ったら逆に、単行本未刊行の「連載作品」のウェイトが増えているという..氷河期な現状。それでも読者アンケートには「コミックスになったら買いたいと思う作品を1つ」と一縷の希望。
現に単行本1巻目が出されている作品を挙げてみるとこれだけずらりと。
トフ子『秘密のお姉さん養成ノート』(タイム)
櫻井リヤ『瀬戸際女優!白石さん』(タイム)
有村唯『ラブアマ』(ホーム)
真田寿庵『天下分け目の小早川くん』(ホーム)
あしや稚浩『先輩に推されて仕事になりません!』(ホーム)
イチノセ『おひとり好きの富士宮さん』(タイオリ)
鬼龍駿河『カントリー少女は都会をめざす!?』(タイオリ)
今月発売されたばかりのホヤホヤから、ん?2巻目っていつ出るの?といった作品もあるけれど。(蛇足。単行本化が当たり前のはずの松田円『スナックあけみでしかられて』(ホーム)も続刊は??)
やはり大御所、中堅、若手とラインナップは幅広い方が伸びしろがある。「話題作人気作家続々登場!!」(タイオリ次号告知より)と各社が再び出られる時代を待とう。
-REVIEW-
ため『鈴宮さんのダジャレをスルーできない』(タイオリ)
運命的な出会いの無い恋愛模様はどうも感情移入出来ないから一歩引いて見てしまっている。クラスメイト程度では動機に乏しいと言ったらいいか、さや当てのつもりが図らずも自分の思いを代弁してもらって一気に傾いてきた隣のクラスのギャルの方に分があると思いつつ。
本作の本題は恋愛ではなく「ダジャレ」である、タイトルもそうなっている。これに改めて気付かされるレトリックを発見して俄然興味が湧いてきた。つまり図書委員のヒロインが図書室で整理している本は「魅惑の土器」「土器のすべて」で会話の中に気になる相男手の名前が潜んでいるのを拾っては「ドキドキ」しているのだ。そうしてこの回は後半ダジャレトークが炸裂し、付いていけなくなったギャルは思わず助けを呼ぶ。
掲載当初の関係構築がまさにこの、ダジャレ合戦に耐えうる者だけが残っていって、という感じだったと思い出される。
それにしても冒頭ページの本のタイトルである。背景が描かれることも無いのが当たり前の4コマ作品にあってこの暗喩はたまらない。徹頭徹尾ダジャレを絡めている本作は労作だ。単行本で深読みしたい。