新・現在4コマ漫画レビュー 第75回

(初出:第270号 19.12.21)


-TOPIC-
前回を上げたばかりの10月に「まんがタイムスペシャル」誌(芳文社)が突然の休刊報告で仰天はしたが、連載陣の半分以上が移籍という流れにあ、デジャヴ。
昨年春の「ジャンボ」「ファミリー」休刊(第67回) と同様の枝葉切りであり、市場規模の縮小を受けた自然な流れとみる。
とはいえ当誌の休刊で発刊ペースは月中が抜けることになり、月末〜月初に「タイム」各誌は集中することになる。当号で大団円となった宮原るり「恋愛ラボ」(芳文社)は唐突な終わり方には見えず、休刊の流れを受けての最終章だったのか、表紙を飾っていた看板作である本作の終了で再起不能と判断されたかは当事者のみぞ知る..。

栄枯盛衰は時の流れ。2003年頃の本シリーズ開始時には最大で10誌出されていた(注:一部季刊誌、前後含む)。
「タイム」「ホーム」「ジャンボ」「ラブリー」「ファミリー」「スペシャル」「オリジナル」「ナチュラル」「ポップ」「きらら」「きららキャラット」..。およそ20年の時を経て、芳文社の一般4コマ誌は「タイム」「ホーム」「オリジナル」の3誌まで縮小..も、ビジュアル系3誌「きらら」「MAX」「キャラット」(「フォワード」はストーリー誌)健在で月間6誌なら天下は変わらず。

寧ろ掲載誌の減少はたとえベテランであっても新作はゲスト登場から(ex.おーはしるい、辻灯子)と、適度な競争環境を産んだと言え、読者はより洗練された4コマ作品を読むことが出来る時代に入ったと期待して良い。その対価として4コマ誌を、単行本を購入しようではないか。

-PICK UP-
そして4コマ界は新たな領域に(すでに)踏み込んでいる。
長期連載であるにも関わらず、単行本化のされない作品が未だ存在することを常々嘆いてきたが、打破策の一つとして挙げていたネット上でのデジタルアーカイブ化。これがすでに実施されていてしかも気付いていなかったことに赤面する。
安堂友子『マチ姉さんのポンコツおとぎ話アワー』(主任)は前身が「ホーム」誌(芳文社)での「マチ姉さんの妄想アワー」で、作品の継続自体を喜んでいたらふと、次ページの単行本PRページに気付く。前作が電子書籍という形でのみ、上下巻(ぶんか社)刊行されている..。
本作は作者の連載としては比較的最近の作品なので、もしかしたら単なる傑作選ではなく完全版であるかも知れぬ。
勢い込んで初めて「電子書籍」のページへ伺うと..。
何と本作はおろかすでに絶版の(でなくとも書店で見かける事はもはや無かろう)作品、芳文社では未刊である10年近く前の「瞬け!シャイン」(ぶんか社)まで電子書籍としては「単行本化」されて売られている。
これらは4コマ誌上ではまるでPRされておらず、ちょっとちゃんと知らせてよ!ともはやデジタル素人に退化した身にとっては無知の裏返しで憤慨したりするものの。
例えば4コマ誌で気になった作品を電子書籍で購入すると、そのまま芋づる式に作者の作品をあれこれ知ることになる。過去作など書店での取り寄せや古本屋巡りなど能動的にならないと入手できなかったのが、関連動画の視聴と同様の手軽さで紹介されてくる。
スマホと違う電子書籍の普及率はどの程度なのか知らず、また何年経っても新刊同様とはいえ定価での購入ではマスが限られてくるので、新規読者(若年層)の獲得につながっているとは言い難いが、欲すればすぐに手に入る環境というのは画期的で夢の未来に一気に近付いたと言える。

また。先ごろ終了したあきばるいき「ちっちゃい先輩が可愛すぎる。」(芳文社、全2巻)はスマホアプリサイトでの続編が始まっているという。『ちっちゃい彼女先輩が可愛すぎる。』(FUZ)
このサイトはオリジナル連載は少ないものの、まるで週刊連載のように曜日ごとに1話ずつ読める作品があったり、「テーマ」括りの作品を集めてまとめて読めるなど、デジタル4コマ誌と呼べるような配信サービスとなっている。
竹書房ではいち早くWEB4コマ誌「WIN」を立ち上げており、単行本化もヒット作も生まれ派生サイトも増え続けている。
個人的には本棚から適当に抜き出してパラパラと拾い読み、これに勝る読み方があるかと思っていた4コマ漫画であるが、スペースの問題で棚の奥にはあることすら忘れている作品があったり、年に数回は泣く泣く手放す単行本、4コマ誌があることを踏まえると、気が向いた時にサラッと読める分量が定期配信されている、書庫のような数の単行本がネットにアクセスすればいつでも読めるデジタル環境は紙と全く遜色が無い。
まさに日進月歩で4コマ漫画も「誌」で括りようの無い範囲に広がっていた(週刊漫画誌はデジタルで買えるようになって久しい)。それが手のひらサイズの中に収まってしまう時代であることにただただ驚愕する。令和という新年号は4コマ漫画にとっても新時代と呼べるものになりそうだ。

-REVIEW-
大場玲耶「レトロゲーとかマジウケる!」(双葉社)
先ごろ掲載誌では最終回となり、単行本化される(1/10発売)という流れなのだが珍しく作者後書きが柱コメントになっていた。曰く「第2部が出来るかどうかは単行本の売れ行き次第(世知辛い!)」との事。何の終了を迎えて単行本が出る今の世の恵まれたことか。
ゲーマーの叔父の家に入り浸る女ギ子ャ高ル生が昔のゲームを漁って突っ込みまくるという設定だが中身はいわゆる「あるあるネタ」で、世代にとってはたまらないから我々は読めるけれども本作を読んで懐ゲーをやってみたくなる若者がいるかどうか。
この手の作品は何より同好からの評価が重要になるから第一関門は突破とみる。第2部では同じネタ勝負だけでなく、その辺りをくすぐるような展開になってもらいたい。


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