新・現在4コマ漫画レビュー 第76回

(初出:第272号 20.2.20)


-TOPIC-
今年は近年にない寂しさを覚える春となってしまった。
saxyun「ゆるめいつ」(くらぶ、終了)が15年の長期連載に終止符を打った。最終回も結果いつも通りという4コマらしいオチでもってもう読めなくなってしまった。永遠に終わらない浪人生活、異色の話題作で登場しながら一時期「くらぶ」誌(竹書房)で最も正統派に思えたこの不条理4コマは、一つの灯が消えかけているというピリオドになりそうだ。
4コマ界の進化、発展という点において、ストーリー4コマの隆盛を掲げているけれども、4コマの特徴として忘れちゃいけないのは読み切りスタイルと偉大なるマンネリズムである。
この利便性が読み捨て文化を作ってしまったと捉えているが、他方4コマを愛読する主要素でもあることは間違いない。
従って「1話」ごとの読み切りであるエピソード積み上げ型とは違い、ストーリー4コマの定義としては「1ネタ」ごとに短い完結を続けながらとハードルを高くしている。そうでないと単なる均一コマ進行でのストーリー漫画になってしまい、それは漫画として進化とは程遠いものであるから。
話しを戻すと、どこから読んでもどこで止めても問題の無い、4コマらしい4コマ作品というのが少なくなってきて久しい(ex.一本毎にタイトルの付く作品は現在幾つ存在するだろう)。スタンダードが真理であるというのは間違いで、常識は少しずつ変化していって新たなスタンダードに気付かず切り替わっているのは世の常。結果「単行本」で読み返せるジャンルにのし上がったというのも大変喜ばしいことである。
そんな中で、従来のルールを踏襲した上で新たな読者を開拓する、全く新しい読後感を生んでくれるキラ星の如き名作、作者が登場することもあるわけで、本作はまさに10年単位に1つの傑作であった。
最終巻は..あれ?単行本って今7巻まで出てたっけ?本棚に5巻までしかないけど..。こんな「明日できることは大まか来年でいいや」と思っている私にピッタリだった作品の終了は、まさに心に大きな穴が開いたようである。
この寂しさを埋めるには、同じく4コマ界の常識である「すぐに次作が始まる」が必要だ。
少し休んで、などと言いたくない。作者の新作が来月号に載ることを祈る。


-PICK UP-
博識家、寺島令子の唯一の後継者と言えた小池恵子「ななこまっしぐら!」(ライフ、終了)も長期連載を終了。暮らしの小ネタ、裏技ネタを軸に自由業のお隣さんというスパイスも加味して長年知恵袋的な情報4コマを届けてくれた。作者は元々エッセイ巧者であるから今後もこのタイプを描き続けてくれるものと思うが、年号の切り替わり、西暦のリセット(00年)を踏まえるとこれもまた一つの時代が過ぎたようで何やら感慨深い。
佐藤両々「あつあつふーふー」(タウン、終了)は高校卒業後が最終章(エピローグ)だったという括りで良いのだろう、波風立つこともなくまとまって大団円。ちょっと育休かで中断が多くて、話自体に引き込まれることはなかったのだが、心地良く聞けた広島弁が読めなくなる残念さはある。
同じく佐藤両々「わさんぼん」(タイオリ)も移籍中断が繰り返され流浪の大河4コマになっており、登場人物それぞれの成長譚が描かれてついにヒロインの番となる。ん?それともこの流れはもしやカウントダウンなの?
師走冬子「あいたま」(タウン)もぴよぴよサザエ時間と思いきや真打登場を機に話が動いていきそうな展開に。年一で単行本にて新作を読むのがルーティンになって10年、近年は月イチで読めているが楽しみだったサイクルに終止符が打たれてしまうのか。ここから新章が始まるとしたら喝采ものであるが。

いずれもいずれも、今年の春は寂しく迎えることになりそうな。。。


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