続・現在4コマ漫画家レビュー 第3回

(初出:第92号 04.12.20)

可愛い「だけ」では..
さて、早くもこの稿最終回です。すでに100人、挙げているわけですから、必然人数は少ない訳です。続々と登場作家が増え続ける、勢い絶頂の4コマ界にあって、早くも淘汰は始まっております(個人的にも..)。毎度言っておりますが、可愛い可愛いで良作になる程甘くはなく、キラリと光る作品には付加された要素が隠されているのです。

真島悦也
作者の作品には独特な言い回しがある。役場の青年に一目惚れの小学生が暴走する『ちとせげっちゅ!!』(まんがライフmomo、まんがライフオリジナル)は主人公の猛烈アタック(文字どおり体を張った)がメインのオチだが、もう一つ、「?」を使った台詞オチというのも頻繁に出てくる。いわゆる疑問符は、相手に返答を促すものと相手に二の句を告げさせぬものがある(語学的にはどうなのか知らん)。作者の使うのは後者で、「〜ですけど(それが何か)?」「〜ですよ?(間違いなく)」などの台詞でコメント返せず、がオチとなる。また「!」を断定形で使用し、こちらも言い切ってオチ、というパターンが多い。短い完結を必要とする4コマでは、台詞のテンポが重要になる。ツッコミで止め止めにするのではなく、ボケっぱなしで展開するところに作者の色が見られる。『みらいのあったかカップ』(まんがタウンオリジナル)でのメインのオチ、激マズコーヒー登場でもこの台詞によるオチは有効に機能している。

岬下部せすな
ゲーム系4コマに作品あり。ビジュアル系は中世風ファンタジー色の強い作品が得手という好例。色というより服、である。ヒラヒラ系が良く似合う。習作時代に現代を舞台にした作品があり、また現在も『えすぴー都見参!』(まんがタイムスペシャル)はスーツ姿の女の子が主人公で、違和感(モエ)は演出されているものの、やはり普段着ではキャラクターの魅力は半減する。
シスター、執事と制服姿の女性が勢ぞろいの『悪魔様へるぷ』(まんがタイムきらら、きららキャラット)の中で、何といっても一番人気は純真無垢な悪魔の子、主役のルルーになる。彼女も通常はシスター服であり、どこがヒラヒラなのか、と言うと..。つまり悪魔の「双翼」が..あれ?
ビジュアル系は中世風ファンタジー色の強い作品が得手。半人半獣などが「可愛らしく」登場するのはビジュアル系ならではと言える。色というより服、というよりキャラ、である。

蒼樹うめ
登場即、表紙を飾ることになった『ひだまりスケッチ』(まんがタイムきららキャラット)。正直今一番好きな絵柄である。
コマサイズの小さい4コマにあって、デフォルメは全身を見せる為には必須の描き方であるが、純粋にこの目的で使われている場合は少ない。デフォルメキャラには「ボケ(ている状態)」という暗喩が込められている場合が多い。全身を出すという事がストーリー漫画(あるいは映像)のようなアングルを意識したものにはなっていないのである。作者はこの使い分けを、従来の「ボケ」仕様とズームイン・アウトの両面で駆使している。奇を衒った構図にしているという事はなく、ほぼ正面からの画でバストアップではリアルタッチ(細かい描写)、後方のキャラはデフォルメという程度なのだが、それでも広がりは感じる。画面に変化を見せ(見え)づらい4コマにあって、ビジュアル系はこんなところでも小さな改革を起こしている。

桜月みりん
4コマ作品はクライマックスを迎える事なく消える(=終了)場合が多く、何となく気になっていただけの作品だと気が付けば載っていないという、非常にせつない別れ方をすることになる。作者の作品も未だそういう場合が多く、「まんがタイムジャンボ」誌での『ハイめしあがれ』もてっきりそうだと思っていたのだが..先頃復活した。どうやら前は新人チャレンジから延長上の連載だったようで、改めて本連載となってイメージチェンジを果たし、単なる天然ボケキャラだった主人公に「人見知り」という性格を加え一新された。
あまり良い事では無いと思うのだが、本作はお好み焼き屋を舞台に主人公、その兄(経営者)、バイトの娘、出入り業者(酒屋の息子)の4名がメインキャストで、2組のカップリングもほぼ成立と非常に閉鎖的な状況を固持している。つまり他所者に乱される事なく、主人公はいつまでも甘ったれで、家族のような温かい環境に包まれているままである。成長して何ボの「物語」としては言語道断な展開であるし、マンネリに陥りやすい危険性もあり、長期作品とはなりにくい。と、考えられるのはストーリー漫画における見方。4コマにおいてはこういう展開も「アリ」なのだ。

高田ミレイ
先述したように、双葉社のビジュアル系追随は既存誌と別路線で進行している。今回は結果的にビジュアル系(と呼ばれる)4コマ漫画家、作品を多く挙げる事になったが、特にそうした訳ではないということが最後の最後で証明出来ると思う。『中華なOLめいみん。』(まんがタウンオリジナル)はタイトル通り、カンフーの達人がOLとして会社中を虜にしている。花火を吹矢で方向転換させるなどといった前時代的なネタのオンパレードは、まるでかつての香港映画を見ているよう。だが今まさに、この荒唐無稽な内容が再評価されているのはご承知の通り。
4コマにおいても本作のような「主人公が周りをかき回す」ギャグタイプは原点であり、これからも廃れることはないだろう。



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