続・現在4コマ漫画家レビュー 第2回

(初出:第91号 04.11.20)

探し当てました
4コマ誌進出の途端に大活躍を見せる漫画家達の経歴を追う作業に、最近の(古)本屋通いは専ら費やしております。その結果、(あくまである程度)判明した方々を集めました。

大井昌和
作品内でも宣伝に余念がなく、元々ストーリー漫画家というのは判明していたが、4コマ作品ではないので食指が動かなかった。先日ようやく一読した「ひまわり幼稚園物語あいこでしょ!」(ガオ!)は、予備校通いにと選んだおばの家が幼稚園で、浪人生でありながら保父同然の扱いを受ける青年と、彼に懐く園児の交流を描いた何とラブストーリーである(世間が眉をひそめるロリのコンとは一線を画し、設定は幼女であれ主人公アイコはしっかりした自我を持ち、青年との関係も常に対等である。「まんがタイム」誌(芳文社)でのショート作品にも表れているように、作者の描く幼女とは妹属性のエンターテイメント的存在である。ただ本作はリアルに描かれれば問題作ではある。蛇足)。
その単行本のはしがきにも書かれてあるが、作者は子供(童女)の持つパワーを確信しており、4コマ作品にも活かしている。4コマ初作品『ちぃちゃんのおしながき』(まんがライフオリジナル)は、死んだ父親譲りの料理の腕を持って小料理屋を切り盛りする小学生が主人公。母は接客係兼お客兼..と頭が上がらない。親子の立場は逆転し、主人公は元気一杯店を家庭を仕切っている。『いつもいっしょに』(まんがライフmomo)も、童顔幼児体型の姉(高校教師)と圧巻美女の妹(高校生)のデコボココンビが主人公で、姉は言動も子供っぽい。それが姉として当然ながらお姉さん「ぶる」所が眼目となっている。いずれも「子供と大人の両面を併せ持つ」童女キャラが物語を支えているのである。

小池恵子
絵柄から見当をつけていたら、やはり女性誌に連載を持っていた(元々は少女漫画家か?未確認)。「恋愛白書パステル」(宙出版)というB5平綴じのブ厚い女性誌に、彼氏の出来ない男勝りな主人公と、彼女を取り巻く女性達の(恋愛ネタを中心とした)学園4コマ「あれるげん。」を描いている。正直な所退屈な作品と映ったのは、毒のあるネタが中途半端に思えたからだが、異性の視点だからかも知れない。長期連載作品である。
ただ、4コマ誌での夫婦もの「ななこまっしぐら!」(まんがくらぶオリジナル、まんがライフ)では、ひたすら前向きな主人公(奥さん・ななこ)を全面に押し出して、そこが受けている理由だと思われる。単なるラブラブ夫婦ではお話し(漫画)にならない訳で、夫婦ものはキャラクターが濃いほど面白い。中でもコンプレックス系のネタを持っているものに秀作が多いし主流でもあるのだが、清濁ある中から良いとこだけを選び抜くという選択も時として是である(それはご都合主義の良いとこ取りとは違う)。ヘタなリアルさを出すよりも、このまま徹底的にフィクションで行って欲しい。

山東ユカ
古の「まんが笑ルーム」の血が続いているのか(そんな訳ない)、少年画報社は意外と近年の4コマ作家を多く見い出している。そんな一人。デビュー作「ヒミツの保健室」(初コミックスとあるので多分..)は型破りな保健医と常識的な委員長キャラのボケとツッコミを中心としたスタンダードな学園もの。スタンダードといいつつギャグですが。で、この型は乱暴に言えばキャラを立てさえすれば良い訳で、そうなると後はセンスの問題で、作者の初期作は及第点までという評価になる。4コマ誌での『みことREADY FIGHT!』(まんがくらぶオリジナル)も、格闘ゲームをすると人格が変わるお嬢様や黒人のSP、ゲーマー小学生とキャラ押しの内容で、彼女に好意を寄せる行きつけのゲーセン店長の恋路は報われる事が無く、またどうなろうとあまり意味は無い。
少々辛辣になってしまったのは、最近作に変化が見られるからである。読み切りから連載に出世した『みずたま注意報』(まんがくらぶmomo)は、天気がカンで分かる主人公、紙フェチな隣家の幼馴染みなど、設定にギャグのテイストを残しつつ、彼等が有機的に結び付いて恋愛物語を形作りつつある。ギャグにストーリーは勿論いらない。しかしストーリーにギャグが付くのは大いにプラス要素である。

松田円
ゲーム系4コマに作品あり。数あるファンタジー作品の中で工夫の甲斐が見られるのが作者の作品。『電化お手をどうぞ!』(きららキャラット)は、父親に成り済まし(着ぐるみで)市政を執り仕切る市長の娘が主人公だが、本筋は地球制圧を企む機械帝国人と、市の秘密組織平和特務課(表向きはラーメン屋)の戦いである。ただし中身はコメディであって、機械帝国からの侵略者(=皇子。タイトルに掛かる)は現在、天敵と言える静電気体質のラーメン店員にシビレるのを恋というウイルスによるもの(機械だけに)と吹き込まれ、恋愛を知らない彼は右往左往している。侵略をあきらめさせようとしている同胞(こちらも皇子)の面白半分のこの企みは、誤解が誤解を産んで奇妙な三角関係を作り出した。つまり侵略者が店員を付け回し、ストーカーと解した(密かに彼女を好きな)店長が彼を付け回し、それを禁断の恋路と解した店員はキューピッド役を買って出て、実情を知るその他のキャラクターが何とか誤解を解こうとしつつ、はっきりと言えずに事態はますますややこしい事に。侵略をあきらめさせるのに恋愛問題に関心を持たせたままでいたいという思惑や、店長の好意はあくまでシークレットであるという制約の元で状況を説明しないといけない事情が複雑に絡んで、進展は見ないままバリエーションに富んだ展開を見せている。モタつけばモタつく程面白い、コメディ作品として上々の設定である。
一方、『サクラ町さいず』(まんがタイムラブリー)もコメディ作品であり、学園ものと(父子)家庭ものの両面を併せ持った贅沢な作り。大概はワンシチュエーションに専念した作品になる4コマにあって、あれこれ組み合わせてしかもまとめあげられるというのは実力派と言って良いだろう。

口八丁ぐりぐら
ゲーム系4コマに作品あり。ジャンルはギャグで、ひたすらにファンタジーをいじりまくる。その実力が如何なく発揮されている『オーケーFANTASISTA!』(まんがタイムきららキャラット)は、倒すべき目標があやふやなまま進行中。これはこのまま深刻な事態を迎える事なく描き続けられると思うのだが..。
新作『花と泳ぐ』(まんがタイムジャンボ)は幽霊の成仏を手伝う事になった主人公と、学生霊媒師の3人(2人+1体)が織り成す青春模様。気になるのは早くも2回目にして、主人公が過去形で物を語り出したことである。手掛かりを探して遊園地に行き、結局遊んでしまった回で、主人公はすでに別れを示唆したモノローグを残している。また作品タイトルの副題が〜The beautiful days〜というのも意味深だ。
4コマ作品に置いて、時間軸はほぼ無視される(繰り返される)と言って良い。勿論それが絶対ではない訳だが、この現象が起こるのは、ストーリー性が薄く始めにネタありきで作品が進行するからである。つまりほとんどの作品は、手探りの状態からスタートし、ネタ(もしくは人気..)が尽きた所で終焉を迎える。読者にしてもどこから始めても、どこで終わっても良い訳で、これは4コマでは「お約束」である。対して、新興のストーリー4コマでは現実に沿った時間が流れる訳であるが、今のところ展開は長編ストーリー漫画と同様、成り行き任せであって、ネタ(もしくは..)が一段落した所で改めて終焉へと話が進むようになっている。
もし、その常識を覆えし、ラストまでの進行がきちっと組まれた(練られた)短期連載であったとしたら..。我々は初めて、劇画的な4コマ作品を読むことになる。深読みのしすぎであるかも知れず、目下その推移に注目している次第。

こなみ詔子
少女漫画家として90年代初頭のいわゆる新感覚派(野暮ったさを排除した絵、内容を描いた漫画家達のこと。捏造語デス)の一人で華々しい経歴を持つ作者の4コマ誌デビュー作品『青空ハイツ』(まんがタイムジャンボ)は、早くも巻頭を任されるヒット作となった(現在は大乃元初奈「お願い朝倉さん」とダブル表紙が続く)。大家が亡くなり、住人が三々五々散っていきそうなアパートに、残された一人娘が後釜として住むことになって住人(全員若い男)との一つ屋根の下生活がスタートという、一昔前のラブコメ王道設定ながら、キャラは立って内容も濃い(実績がある(ファン)だけに手放しで評価)。貫祿ある、多いに指針となるべき良作なのだが。新キャラが幽霊であることに一抹の不安。いや、キャラクター量産型というのはコメディの常道であるし、決して珍奇な事ではない。しかし人間では無いという時点で作品の色が変わってしまう怖れがある。人外の登場により、通常の人間ドラマは描きづらくなる。本作が今後どこに焦点を当てていくのか、単なるドタバタ4コマで終わってしまうのか、これもまたハラハラしながら推移を眺めている。
「まんがタイムジャンボ」誌(芳文社)は、ボリュームから名前が来ているのだが、かつての新人育成の場から4コマの登竜門として間口を広げつつある(その代わり新人に対するハードルは高くなったか。月間賞、奨励賞とも10〜12月号該当無しが続いている。蛇足)。ビジュアル系に片寄る事もなく、要注目の4コマ誌と言える。



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