はじめに
100人レビューを完結したのが今年頭ですが、相も変わらず、4コマにハマッております。という訳で新たに増えた自分の「お気に」を再び挙げていこうということです。まずは2004年の状況をお伝えしましょう。
萌え4コマ大爆発!
とはいえ一般に広く普及..と言うには程遠いのが現状です。若年層を中心とした、新たなマスを獲得したというのが正しいかと思われます。ひとまずは勢いに乗じた展開が続いています。老舗芳文社をしてこの1年で「まんがタイムきらら」本誌に加え「きららキャラット」(隔月)、「きららMAX」(独立月刊化!)と新規は萌え一色。竹書房の「まんがライフmomo」は、相変わらず一歩引いたスタンスを保っているものの、「まんがライフオリジナル」「まんがくらぶオリジナル」など系列誌に萌え系作家が揃いつつあります。4コマ3巨頭の3、双葉社もついに参入し、こちらは「もえよん」と銘打って既存誌と全く異なる路線で追随(戦略的には芳文社を踏襲?)。更にはサードパーティから「COMICぎゅっと!」(平和出版)が創刊など、前回宣言した通りの盛況ぶりには鼻高々といった所。
登場作家の経歴は?
しかし新規誌に登場する漫画家のレアぶり?は、漫画読みの名を返上しなければならない程、はっきり言って初見の嵐。とはいえ4コマ誌初?登場ながら作品の整い具合を見ると素人(=新人)ではないと判断せざるを得ません。投稿採用ではなく、即戦力として登場している彼等。火の無い所に煙は立たず、ということで、登場作家の下積み?時代を探ってみると、それが同人界なら端から門外なのですが、市販の媒体(漫画誌)であればそれなりに出てくるものだったのです。
現在までに判明しているルートは主に2つ。まずは前回でも時折挙げられた「ゲーム4コマ」出身というもの。ゲームのパロディ作品を会社自らが(あるいはファンタジー系漫画誌を多く出す出版社を介して)集め発行されたこれらの単行本は、現在4コマ専門誌で活躍する作家の宝庫です。もう一つ。ファンタジー系漫画誌出身というのも多そうなのですが..。気付けば、新手の漫画誌は世に溢れ、取り残されている自分がいます(相も変わらず80年代が得手..)。
経歴を、そういう訳である程度追えた作家についてはそれなりに言及しています。が、未だ掴めていない作家については作品のみの評価に終始しています。前回も片手落ちの部分が多々ありましたが、今回はそれに輪を掛けて凡庸な内容になってしまうかも知れません。...。少々お付き合い願います。
芳文社新主流・ドキドキビジュアル4コマ
個人的に今年、一番良く読んだ(=買って読んだ)のが芳文社の4コマ誌。ということで初回は「まんがタイムきらら」及びその系列誌からピックアップしてみました。
荒井チェリー
『三者三葉』(まんがタイムきらら、きららキャラット)
主人公「トリオ」は4コマの王道配役だが、ドキビジュ系の中で一番バランスのとれているのが本作であろう。お嬢様特有の高慢さが災いして、没落した今でも友人のいない葉子、が高校で仲良くなったのは、腹黒さを外見で巧みに隠す葉山(ただし言動は包み隠さず)。転校生の双葉は食欲魔人の天真爛漫娘と、初期設定での3者の絡みは絶妙であった(不親切な例えになるが、川原泉の名作「笑う大天使」のネコ被り主人公達に匹敵すると思う)。現在では全員角が取れて丸くなった感じで、当初のような関係性での妙は見い出せなくなったが、その分各々のキャラが濃くなって、定番の安定した笑いを供給している。
太田虎一郎
『かるき戦線』(きらら)
ナゾの転校生、水野かるきは宇宙人!?目的は地球侵略?それとも..(以上単行本解説より抜粋)。作者の作品は、そうは言うものの基本的なストーリーの軸が存在しない。いや、初期設定はあるのだが、それに沿っての展開は無く(続かず)、おそらく作者の現在の気分が作品を支配し、ネタはどこまでも拡散し、途切れると又、新たな流れを追っていく。結果作者の作品は、小ネタの満載された重厚なものとなっていくのである。「コミックばんがいち」誌(コアマガジン)でのデビュー作「宇宙の法則世界の基本」と本作はキャラクターの違いこそあれ中身は寸分違わない。だからこそ評価出来る。エッセイにも似たスタイルの4コマの代表格である。
桑原ひひひ
『きつねさんに化かされたい』(キャラット)
助けてもらった狐が恩返しにと人間に化け、保健医の元へ。ところがこの保健医がマニアックだったので、狐は場にそぐわないメイド姿で奉公することに(耳とシッポは隠さない約束)。保健室という閉鎖環境で繰り広げられる永遠の学生生活は、憩いの場として集う学生たちと狐のコミュニケーションを軸にしたホノボノコメディの体を奏している。ショート作品の「俺フェチ」(角川書店)と比べ、コマサイズに制約のある4コマではギャグのテンションは落ちているが、逆に洗練されたとも言える。独り成人の保健医が常にないがしろにされたり、眼鏡フェチの学生がひたすら眼鏡に固執したりする様は作者お得意のパターン。
ここで余談になるが、おそらくデビュー作であろう「俺フェチ」は元々成人誌での連載であった。エロコミ誌出身というのは割と古くから見られ、かつてギャグ系作家は間口の広いマイナー誌で芸風?を確立し、認知度が高まると共にメジャーに成った(吉田戦車が好例)。しかし最近の「エロコミ」というと、ターゲットを極端に絞った「専門誌」様のものが多く、とりわけ美麗さを強調したものが主流である。つまり登場作家は、まず第一にビジュアル面を重要視される訳であって、センス一本槍で笑いオンリーを目指す作家は見かけなくなっている(元々大成するのはほんの一握りのジャンルではある)。作者や前項の太田虎一郎などは萌え系に特化された今ドキのギャグ漫画家と言える。
野々原ちき
『姉妹の方程式』(きらら)
両親を亡くし窮乏生活を余儀なくされる、万田さん家の美人4姉妹は上から3人までが貧乏を省みずそれぞれ趣味に散財する。仕切る末っ子の苦労は絶えず。貧乏というか、野性児的なキャラクターは作者の得手で、末っ子のタクマシさには思わずホロリとさせられる。習作時代から絵柄の整い具合には着目していたが、このところ益々磨きが掛かっている。その代わり作者の作品で今イチと見ているのが展開で、本作も順繰りに主人公を回していくローテーションがいつマンネリとなるとも限らない。まあこれは、4コマ作品の永遠の命題でもあるのだが..。せっかくのヒットキャラ、育って欲しいものである。
吉谷やしよ
『ハイリスクみらくる』(きらら、キャラット)
魔女っ娘ものに属するのだが、相方の「魔法のステッキ」(本名アルバート=ホリック。通称アホ助)は金でしか動かぬ守銭奴で、その性鬼畜。アニメのヒロインに憧れを抱く主人公も、「霧ヶ崎流生活の知恵」という何でもアリな裏ワザ集の継承者。このコンビの活躍は常に内輪モメを呈している。はっきり言って魔法がどーのこーのというストーリーは皆無に近いのだが、このコンビの関係性は間違いなく魔女っ子と導師のそれであり(例えるなら、またも不親切になるが水沢めぐみ「姫ちゃんのリボン」の姫子とポコ太。CLAMP「カードキャプターさくら」の桜とケルベロス(ケロちゃん)など。)、つまり魔女っ子もののインターミッション(番外)を延々と繰り返している作品なのである。4コマの特性を十分に使いこなした作品といえる。
尚、残念な話になるが本作は先日他誌作品の著作権に関わるパクリを犯したようで、出版社連名によるお詫び記事と共に休載となった(最新情報)。設定が似通うのは4コマでは当り前の事であるが、筋書までが被るのは言語道断である。模倣した経緯について深く知る由も無いが、作者には猛省とともに再起を強く促したい。