現在4コマ漫画家100人レビュー 第15回

(初出:第80号 03.12.20)

年越しと共に区切りをつけて最終回。4コマに注目してこの1年の推移を眺めてきたので、いくつかトピックを挙げてみたい。
まず目についたのが、「本当にあった愉快な話」「本当にあった笑える話」(ともに竹書房)に代表される読者投稿系4コマ誌の乱立である。考えて見ると4コマ形式はネタ(要点)を簡潔にまとめることが出来、1ネタ(1人)多くとも1ページ(2本)で済むので、必然的に掲載率が高くなり人気も出るはずである。しかし読者ページに変わるようなこの参加型の企画4コマは古くから存在する。突出した支持を得るに至ったのはエロネタと絡んだことが大きい。いわゆるエロ本で、投稿系は根強い人気を保っている。ただ4コマでのこのブームは一過性のものとなる可能性が高い(どんどん創作性が高くなっていき、マニア化するから)。とはいえ、一旦火の付いた「投稿系」ジャンルは今後4コマの新たな定番となっていくだろう。
秋には3年ぶりに「まんがパロ野球ニュース」(竹書房)が復刊。阪神Vスペシャルと銘打ち4コマ漫画家はもちろん、芸能人まで巻き込んだ特集号を出した。阪神タイガース優勝という事態は、様々な経済効果をもたらしたが4コマもその恩恵に預かったか、というとどうもそうではなさそうである。プロ野球の人気薄はすでに確定的であり、人気選手(トップアスリート)達の赤裸々なプライベートが「ジャンクSPORTS」、はたまたホームページなどで自ら語られている現在、彼等の言動を憶測でパロディ化するプロ野球4コマという存在はもはや時代の遺物と言えるだろう(唯一健在な作品が荒木ひとし「マツイ日記は知っている!」なのもそれを示している。ネタはすでに国内には存在しない?)。
そして今年最後のニュースは「まんがタイムきらら」(芳文社)独立創刊である。雑誌のカラクリは、詳しいことは知らないがつまり増刊扱いにしておくと損得は本誌の黒字で解消出来る。単体で創刊というのは、もちろん手続きも色々あるだろうし、売れなければそのまま出版社のお荷物になるという、まあつまり、よほどの高セールスをコンスタントに上げ(る見込みが)なければおいそれと創刊したがらないのである。1年間、「まんがタイムオリジナル」の増刊扱いとして出された本誌がしかしわずか1年で単体(月刊誌)になることが出来たのは、よほどの反響を呼んだからと見て間違いないだろう。店売りの状況を見ている限りそう大したものとは思えなかったが、冠付きで単行本が次々出ている(まんがタイムKRコミックス)のを見ると、それをひっくるめての売れ行きはやはり相当良いのだろう。そう、一昔前までの4コマ作品と明らかに違う売れ方がここに存在する。前号と被るが読み捨てと自他共に認められた4コマは、ビジュアル系という新しいジャンルを開拓したことにより、「保存する作品」を生んだのである。勿論いい面だけではない。「きらら」創刊と前後して、「まんがタイムポップ」などのアンテナ誌は自然消滅。各作品は他誌に吸収されるようだがそのままお蔵入りとなるものもある。また新生「きらら」はボリュームアップ、カラーページ増も値段も2割増(300→350)。そして言いたくはないが可愛いだけでいいのかという問題も出てくるであろう。ただ本誌を新時代の嚆矢として、今後洗練されていくことは充分に期待出来る。
来年はもっと4コマが注目されるだろうという予見を述べ、本シリーズを幕としたい。

可愛い..だけじゃない!(100)
最後に紹介する100人目は決めかねました。この1年だけで新たに数十人の「お気に入り」が加わったほどで、とても紹介しきれません(まとまったら再開..するかも?)。そこでその中から、個性的な作品を選んでみました。
ナフタレン水嶋の『マオマオ』(まんがタイムきらら)は、傀儡師や魔王という大風呂敷な設定のキャラクターが、ストーリー的には普通の高校生活を送るという、贅沢なような勿体ないようなギャグ4コマである。もう一人東静馬の『まじぱら』(まんがタイムきららキャラット、廃刊?)も、魔女と正義の魔法使いというアニメでおなじみの構図を設定しながら、悪の側は結婚して可愛い娘が跡を継ぎ、正義は正体がバレないまま嫁き遅れてヤサグレているという、ひねりにひねりまくったギャグ4コマになっている。そしてもう一人、新条るる『LOVE ME DO』(まんがタイムきらら)は、ロボット(犬耳人型)メイドと夫婦の日常生活を淡々と見せながら、完全な女性上位の世界観を貫いていて新鮮だ。我がままな女とそれに応えざるを得ない男という図式は作者の定番であり(ex.「パンパレード」コアマガジン)、可憐で従順な女性キャラクターの多いビジュアル系の中で独特の作風を築いている。
狙いは同じだったものの、遅れをとったというかむしろ後退した感もあり、ちょっと先行き不安な「まんがライフmomo」(竹書房)であるが、「きらら」にもショート作品を載せている、しおやてるこの『スキ☆ヤキ』(まんがライフmomo)はラブコメ4コマの正統的後継者と(勝手に)目している。全体に通じる野暮ったさというか、ちょっとズレた感じがたまらなく良い。
とまあ、こんなところで。



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