100人目!..の前に
開始から1年を経てようやく100人を挙げることになる訳だが、順不同ながら予定していた100人目は実はすでに「現在」ではない。ともびきちなつ『好きだヨンたーくん』(まんがタイムジャンボ、終了)は選考当時の02年11月号に休載のお知らせが出て、以来再開されていない。そこで選から外すことにした。
4コマ誌に言える(た)ことなのだが、読んでいて気になることが一つ。連載回数が表記されていない作品がある。作品が複数の誌に同時連載されていたり、ストーリー作品ではない4コマならではの事情によるものもあるが、話数がカウントされている作品との主な違いは単行本発刊の有無である。
あまり気付かないことだが、連載=単行本化という図式は当り前ではない。「ジャンプ」連載であっても幻の作品は数多くある。ただし一般誌における未刊行は不人気による打ち切りで、話数が足りないという理由のものがほとんどである。対して4コマは長期作品であっても未刊行の作品がままある。ここには4コマ界の置かれていた状況が絡んでいるような気がする。今でこそ、単行本は続々と刊行されているが、10年ほど前まで4コマ誌掲載の作品がまとまるのは稀であった。出版社側からしてこの消極的な姿勢は、漫画家にとっても書き捨ての、読者においても読み捨て当然のジャンルとみなされていた証拠と言える。
改めて。ともびきちなつの「好きだヨンたーくん」は10年以上のロングランでありながら、連載回数がなかった。ということで例に洩れず「芳文社まんがタイムコミックス」シリーズに同作品はない。単行本は、本作品に限って言えば、「マインドカルチャーセンターコミックス」に所収されている。発行元の(株)マインドカルチャーセンターについては取材不足であるので詳述を避けるが、この単行本化は自費出版に近い形であったのだろうと思われる。現在も発行されているかは不詳だが、ともかくお陰で本作品(の初期分)については「連載が終わってしまった現在でも」読むことが出来る。
今シリーズで紹介している漫画家の多くは、古くとも95年以降にデビューした「若手」であり、それ以前から活躍しているのは、第3回で紹介した方々の他、数える程である(他ジャンルからの転向組除く)。特に才能を浪費するギャグ漫画家達はともかくとしても、10年前に紙面を飾っていた漫画家のほとんどは消え、そしてそれらの作品は単行本で残ることもなく...。同じ様な状況でも、画文家の大田垣晴子の場合、返却原稿をてきとうに保管していたのを編集者が「もったいない」と本にまとめた(『こんな生活』メディアファクトリー)。彼女もブレイクしなければ、これらの作品が再び日の目を見ることはなかったのだろうが、4コマ界も今まさに過去の作品を再評価し、残すべきものは後世に伝えなければならない時期にあるのではないか。
すでに4コマはジャンルとして確立した。単行本化のシステムも整備され、結果近作は全て連載回数がきちんと明記されている。漫画家も創作活動の一環として4コマを選んでいるし、読者の支持も意欲的なものとなっている。出版社はこれより、娯楽を提供するだけではなく文化的事業を展開すべきと考える。
4コマは新しい時代へと突入した。100人目には今後活躍が期待される漫画家を挙げることにして、「幻の」100人目についてはこういう形で取り上げてみた。