現在4コマ漫画家100人レビュー 第10回

(初出:第75号 03.7.21)

ギャグ・コメディ(定番2)
4コマといえば「笑い」は重要なテーマです。しかし最近のはギャグ一辺倒ではなく、どちらかといえばコメディが主体となっていて、前掲のアットホームタイプとの区別は明確につかなくなっています。強いて言うならストーリー性の希薄なものがこのタイプであり、そんな作品を多く描く作者をこちらで紹介します。

いでえいじ(57)
略歴を見ると作者は一時活動を休止していたらしく、最近作「ヨルのガッコウより」(まんがくらぶ)はちょっと世の中別な角度から眺めてみようかという、創作を真摯に考える姿勢が見受けられる。しかし受けているのは逆に開き直りとも取れるハイテンションさで、天然ボケの主人公がボケ倒す『ぽけっとタマちゃん』(まんがライフ、まんがくらぶオリジナル)、『カモン!たいちくん』(まんがタイムファミリー)が代表作。『ら・ら・ら新婚白書』(まんがくらぶ、終了)はすぐに新作が始まっているのでいいとして、ミステリアスなんだけどどこかズレている転校生、『有栖川さんの素晴しき日常』(まんがタイムポップ、終了?)や、『ルームメイツパニック』(まんがタウンオリジナル、終了?)は残念ながらヒットならず。試行錯誤が続いているようだ。

大沢たけし(58)
アットホームタイプの『三浦家の日常』(まんがタイムジャンボ)は、父親の病弱により行きつけの医者に話しを食われて『青木医院へ行こう!』(まんがホーム)と全くの同内容となっている。『美佳にまかせて!!』(まんがタイムファミリー)も、主人公より祖父母の方がキャラが強く、素直に従って話しのメインは祖父母のやり取りに。もはやタイトルは形骸化しているが、中身は充実。いずれもロングランとなっている。

大橋ツヨシ(59)
うずら谷という強烈なキャラクターを生んだ作者の出世作『かいしゃいんのメロディー』(まんがくらぶ、終了)があっさりと終了して4コマ誌ではフリーターの気ままなやり取りを描いた『プ〜一族』(まんがくらぶオリジナル)だけとなった。一般誌に『エレキング』(モーニング)を連載しており、すでにギャグ4コマの重鎮となりえている(はず)。

重野なおき(60)
アットホームタイプといっていい、『ひまじん』(まんがタイムジャンボ)、『うちの大家族』(まんがタウンオリジナル)、喫茶店が舞台の『ぼくの彼女はウェートレス』(まんがタイムオリジナル、まんがホーム)、学園もの『Good Morningティーチャー』(まんがライフ、まんがくらぶオリジナル)とほのぼの系の作家であるが、『たびびと』(まんがタイムポップ)など設定は冒険譚で、ファンタジーなのにドタバタ劇にしか見えない。
4コマの限界を越える為の手段として、小見出しのつけ方が変わりつつある。従来の小見出しは、状況を総括する前振りであった(従ってストーリー性のある作品ではあまり使い勝手がないので使われない場合が多い)。最近はオチの伏線として補足的に使われる「5コマ目」となっており、ギャグものなどは1本読み終えてタイトルに返って二段オチとなる。この使い方の上手いのが作者であり、ギャグ・コメディタイプに挙げた由縁である。

中川いさみ(61)
85年デビュー。「ビックコミックスピリッツ」誌(小学館)が誇る4コマ3巨頭の1人。限りなくフリークスに近いキャラクターが奇行を繰り返す独特の世界は『ゴムテ』(スペリオール)、『カラブキ』(スピリッツ)で健在。

みずしな孝之(62)
前に紹介した時に、「いつかは終わる時が来るんだろうな」と述べた学園もの『幕張サボテンキャンパス』(まんがくらぶ、まんがくらぶオリジナル、終了)が少々ひっぱり気味だったものの順当に終了した。作者少々行き詰まった様で(「いい電子」より)、時流に乗りまくったヒット作『戦え!アナウンサー』(ヤングアニマル、終了)も大団円を持って終了。最近作は完全フィクションのおでんワールド「チクチワワ」(まんがくらぶオリジナル)。ギャグから哲学へといういがらしみきおの後継者となる..作風が違うからそうはならないと思うが、ひとまず新境地を目指すようだ。

水田恐竜(63)
90年アフタヌーン増刊でデビューした、SF系作家は尊敬する吾妻ひでおのようにロリ・パロ作品が受けて結果、4コマに落ち着いた(最初から?)。「みこすり半劇場」誌(ぶんか社)を長く支えた「放課後キッチン」は終了したが、ほとんどリニューアルといった内容の『ぴいちくパラダイス』(みこすり半劇場)、少しだけ過激な『ピュアこんでんす』(みこすり半劇場別館)とかつての美少女系だが至極落ち着いたもの。女将が主人公の『チャキチャキ湯にば〜す』(まんがタイムファミリー)など考えて見るとアットホームタイプに紹介した方が良かったかも..。

森田フミゾー(64)
今では珍しい親父ギャグが満載の『人妻みつ子』(まんがくらぶ、終了)、軽妙に世代ギャップをネタにした『えびすさんち』(まんがタイムジャンボ、終了)と終わってしまい、少々寂しさを覚える。『ど・ぎゃんぶらぁ』(近代麻雀)は終わってないだろうな..。

唯洋一郎(65)
破滅型ギャンブラーの指向を見事に描き出せる作家。『まんしゅう』(まんがタイムオリジナル、まんがタイムファミリー)は親父を筆頭に周囲が全てその世界に生きている。このままなら掲載はギャンブル紙だろうが、一人息子「だけ」が心優しいキャラクターである為にファミリー4コマでも受け入れられている(他にも大食漢の赤ん坊など、ギャンブルネタに片寄らない工夫はされている)。犯罪者スレスレの刑事『桜田だもん』(まんがタウンオリジナル)も相当で、突き詰めればマニアックな支持だけ受けそうだが、こちらもそんな主人公に周りが振り回されるギャグタイプに止めており、実は4コマの王道をいく作家である。

吉本めろん(66)
ギャグは時代性が強く、特に4コマではその盛衰は顕著である。大家を除き着実に代替わりは進んでいるようだ。劇画より柔らかく、アニメ絵より古くさい。父親がドタバタの主役を勤めるのも今では懐かしい、『ふらいんぐパパ』(まんがタウン)が終わらないことを望む。
 



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