アットホームタイプ(定番1)
前回とテーマが重なっていますが、前後半に分けて載せております。今回はほのぼの系の、職場、学校などを舞台にした作品を主に発表している作者を紹介します。
ひらのあゆ(45)
10数年前、同人では個人誌も出していた実力派はメジャーの舞台を4コマに。代表作『ラディカル・ホスピタル』(まんがタイムオリジナル、まんがタイムファミリー、まんがタイムラブリー)は個性的な医者と、さらに上を行く看護婦(士)達を主人公にした病院もの。といってもドラマチックなタイプではなく、基本軸はコメディ。それでいてロングラン&ヒット作となっているのは毎回テーマ性のようなものを掲げているから。医療に関する身近な問題や疑問を現場の目を通して解体していく、啓蒙作品なのである。終了した『ルリカ発進!』(まんがタイム、終了)は派遣社員が主人公の作品で、こちらも職場内でのあれこれを主人公のパワーで解決していくというタイプ。個人的にはこの手の作品を「ルポタージュもの」と定義づける。
渡辺志保梨(46)
最近はショート作品やSFものを発表するなど多方面に意欲的な、しかしまだまだ4コマフレッシャーズの作者。銭湯の一人娘を主人公にした『花の湯へようこそ』(まんがタイムナチュラル)は「まんがタイムジャンボ」誌での試験期間を経て、ようやく連載作品に。その「ジャンボ」誌では、童顔の子供服ショップ店員が主人公『大人ですよ?』が連載作品になった模様(最新情報)。
森村あおい(47)
かつて苦言を呈したが、単行本も出せて細々ながら活躍中の、4コマの厳しかった頃を知る貴重な作家である。姐御肌のキャリアウーマンが男共を元気にする『おねいさんにまかせなさい』(まんがタイムジャンボ)は残念ながら終了したようだ(芳文社の一部4コマ誌は、終了が柱の隅に小さく「ご愛読ありがとうございました」と記されるだけなので本当に分かりにくい)が、個性的なOLがたくさんいる『チャコのOL物語』(まんがタウン)は元気に連載中。単行本化を楽しみにしている。
おおた綾乃(48)
有能だけど食いしん坊、なのに料理はまるでダメという派遣社員が主人公の『派遣です!!』(まんがタイムナチュラル、まんがタイムファミリー)は正直一昔前のマンネリ4コマに思え、そうなると同素材の作品と比較してつまらないと感じてしまっていたのだが。読み続けていくとその比較自体が無意味であることに気付く。フットケアエステを題材にした『ましろふっとタイム』(まんがタイムスペシャル)には人語を解しマンション内の便利屋を勤めるお猿のごくうくん(隣人のペット)がいる。そして『ぽけっとジャーニー』(まんがタイムきらら、まんがタイムきららキャラット)は、小さい頃死んだと思っていた父親が実は異世界人で、生きている事を知った兄妹が現実と異世界を行き来して父親を探すというストーリー。そう、作者はファンタジーが得手で、面白さはその非日常さにあるのだ。
おーはしるい(49)
「まんがタイムジャンボ」誌ではショート作品で連載中、すっとこ奥さんとへっぽこ旦那の『夫婦な生活』(まんがホーム)は作者の出世作。当初は割と実話っぽいネタも折り混ぜながらの進行であったが、最近はキャラが安定して奥さんのボケっぷりに一層拍車が掛かってきた。作品的にはむしろこれで軌道に乗ってきた感がある。コンビニ本部の有能社員は癒し系年下社員に片思い中の『わくわくワーキング』(まんがライフ)、男勝りのキャリアウーマンは唯一の男性にして一番使えない上司に片思い中の『会計チーフはゆーうつ』(まんがタイムラブリー)と他作品はキャラ押しのラブコメで、そこでのノウハウが初期作品に還元された感じ。
「会計チーフはゆーうつ」には派生作品としてペットのハムスターが主人公の『エリザベスもゆーうつ』(まんがタイムナチュラル)があり、本編でも主人公が猫を飼いだして動物路線が定着してきた。
坂本つくね(50)
ゲーム4コマ出身か?出世作は超Lサイズの旦那(医者)とスレンダーな元モデルの夫婦もの『アイラブビッグ』(まんがホーム)。出産から話は一気にスリップして、現在息子はすでに小学生。スーパー食いしん坊の父親と、それを止める母、そして間に立って右往左往する息子のトライアングル。新作『ロンより豹子!』(まんがタイムラブリー)は真面目な姉が先生で、コギャルな妹が生徒という学園もの。
ナントカ(51)
2000年前後にデビューした最近の人気作家の中で、題材が一風変わっていて遅咲きだった一人。『新釈ファンタジー絵巻』(まんがタイムジャンボ、まんがタイムポップ)は竹取物語のかぐや姫が「月星人の子供」だったという設定で、爺婆に育てられる「地球編」と月世界の生活を描いた「月面編」がある。出世作は姫様が駆け落ち失踪してしまい、そっくりな忍たま(忍者のたまご)が影役を務めるという『影ムチャ姫』(まんがタイムきらら、まんがタイムきららキャラット)。
ふじのはるか(52)
ルポものの第一人者としてひらのあゆと対角を為すのが作者。『派遣社員松島喜久治』(まんがタイムオリジナル、まんがホーム)は数々の難?職場を改善していくベテラン派遣社員が主人公。現在は「某商社データ室編」と「コーヒーメーカー編」(こちらは終了か?最新情報)。作品を大事にするようで、『むきたまごビューティー』(まんがタイム、まんがタイムスペシャル)のエステティシャンを志す、恋に仕事におおわらわの主人公はOL時代松島喜久治と勤務経験があったり、主人公の友人で、こちらもエステティシャンのたまごの故郷の彼氏との遠距離恋愛を描いた『むきたまごラヴァーズ』(まんがタイムファミリー)も連載中と、各作品は一応リンクしている。
水城まさひと(53)
往年のラブコメといえば両想いなのになかなか進展しないタイプを差すが、『エン女医あきら先生』(まんがタイムスペシャル、まんがタイムジャンボ)も同僚の男性医師がとても漫画的な純朴タイプでひたすら擦れ違っていた。しかし最近、ついに主人公が(自分の)好意に気付き、一応の進展をみたのだが実質大差無し。トランプの占い師『スランプ占いのぞみさん』(まんがタイムポップ)も、同級生の喫茶店に間借りしていて、どうやら腐れ縁らしいのだがこちらもその筋は遅々として進まない。4コマラブコメは気を持たせて感動を与えるというよりも、友達以上恋人未満の関係を永続させて夢を見せ続けるようだ。
奥谷かひろ(54)
実兄はアニメ作家のあかほりさとるで、本人もアニパロ、ゲーム系4コマ作品を古くから発表しており、オリジナルデビューは92年「花咲きKomachi-Girls」(アニメディア増刊)。すでにこの作品で4コマの黄金率を会得しており、当然ながら現在も多くの連載を抱える。この黄金率とは長谷川町子の時代から受け継がれるキャラクター設定の基本であり、つまりチビ、ノッポ、普通のトリオである(勿論まんまという訳ではない)。
女性コンビ、トリオが主人公格で、脇を男性キャラが固めるという図式は『ミニパトラプソディー』(まんがくらぶオリジナル)、『デパートへようこそ!』(まんがライフオリジナル)に見られる。若夫婦もの『シャタクな生活』(まんがライフ)も、話はほぼ、隣近所の奥さん同士の絡み。『カフェで会いましょう!』(まんがタイムジャンボ)は父娘で経営する喫茶店が舞台で、バイトの幼馴染みも男で多少アレンジされてあるが父は騒々しいオカマ、幼馴染みは寡黙(ボーッとしてるだけ?)な守銭奴と基本通り。安定した面白さを供給するという意味では4コマ漫画家の見本のような作品群である。
笹野ちはる(55)
器用な作者である。学園もの『ときめきももいろハイスクール』(まんがライフ)、これを少しエッチにした『みるくの時間』(みこすり半劇場別館)。極端な主人公を立てた、背が高くて男前な「女性」が主人公の『微妙なお容姿頃!』(まんがライフ)、スイムインストラクターなのに『かなづちマーメイド』(まんがくらぶオリジナル)、そしてケーキ好きな(食べるの専門)ケーキ屋店員が主人公『本日いちご味』(まんがタイムスペシャル)と、この辺りは主人公を中心に動く作品。
そうかと思えばオフィスラブが題材のストーリー系『はっぴいDays』(まんがタイムナチュラル)もある。萌え系でも「まんがタイムきらら」誌創刊号に『ぼくの巫女さん』という作品が載ったが、これは定着しなかった模様。ただいずれにせよ、色々なジャンルをこなす作者である。
森真理(56)
実はきつねが人に化けて、水商売経営中の『銀のしっぽ』は何故か老舗「ビックコミック」誌に連載。何しろ青年誌ならぬ壮年漫画誌なので、連載陣も自ずとライフスタイル提案系になる。つまり作者は、絵柄に似合わずそんなシブイ作風ということ。
嫁き遅れだが泰然自若としたオバサン作家が、母や担当を巻き込みながら気ままな人生を送る『のほほんのりさん』(まんがライフオリジナル)も、焦るのは周りだけで本人の生き方はしっかりと筋が通っている。