現在4コマ漫画家100人レビュー 第8回

(初出:第73号 03.5.20)

アットホームタイプ(定番1)
今回から数回に渡って、定番ジャンルを紹介します。始めはほのぼの系の、夫婦、家族などを素材にした作品を主に発表している作者を並べてみました。

井上トモコ(33)
マメで家庭的な夫と、そんな夫を上手く使うお気楽主婦は、幼馴染みで付き合い2×年目。『あかるい夫婦計画』(まんがタイムホーム、まんがタイムジャンボ、まんがタイムポップ)はカップル時代の高校編と夫婦編の2パターンがある。今イチ根拠に欠けるアツアツ夫婦という作品がある中で、これだけお似合いな夫婦を描けているのは見事。

こうの史代(34)
手書きの温かさが伝わってくる、ユーモアあふれる作風。「長い道」(すてきな主婦たち)、「街角花だより」(まんがタウンオリジナル、終了)と近作はショート作品が多い作者の、デビュー&代表作が4コマ作品『ぴっぴらノート』(まんがタウン)。迷い込んだインコが縁で広がった世界をじっくりと描き続けている。

なんば倫子(35)
年上の彼女は超自然体(つまりはガサツでズボラ)。健気に付き合う彼氏は高校生。『てんぷら』(まんがタイムナチュラル)はごく普通の純愛カップルを、立場を逆転させて描いていて新鮮味がある。

弓長九天(36)
遅巻きながらようやくレギュラー作品に昇格した『さゆリン』(まんがタイムジャンボ)は主人公のギャップが人気の秘密か。女王様気質なのだが容姿は幼さの残る高校生。しかしその言動はパワフルで幼馴染みの男の子や親友を振り回している。ギャグものに成り切れないところに手ぬるさを感じるが、そこが逆に持ち味になるのかも知れない。テンポが安定してきて面白さが増している。

松田あきひろ(37)
父子家庭の娘は父親より大人?『ちゆきbe cool!』(まんがタイムオリジナル)、『ちゆきmy way!』(まんがホーム、まんがタイムファミリー)はタイトル違えど同内容。4コマの欠点として、一コマが小さいので台詞が入りづらいことが挙げられるが、本作は主人公ちゆきの台詞を省略することで解消している。つまり吹き出しでの台詞がちゆきは一切ない。相手が「えっ、〜だって?」ということで済んでいる。その為ツッコミがない掛け合いなので古くさく感じるかも知れないが、今となっては稀少。

秦泉寺こまき(38)
時代錯誤な和装の管理人さんを軸に、今どき珍しい下宿屋を舞台にした『他人どんぶり』(まんがホーム、まんがタイムラブリー、まんがタイムポップ、まんがタイムジャンボ)。掲載誌の多さが示す通りこのレトロ調作品は今大人気である。新婚夫婦を主人公にした『シュガーなふたり』(まんがタイムファミリー)は特にこの路線ではないが、元々の出会いが喫茶店の店員と客という辺り、70年代?っぽい。ちょっと昔が新しい、そんなコンセプトズバリ大当りといった感じである。

森本みゆき(39)
親が子持ちの再婚同士で、双子の兄弟に小さい妹が出来た。『みそ汁シル・ブ・プレ』(まんがタイムスペシャル)は思春期の恋愛模様をメインに展開。性格も体型も似ていない3姉妹が主人公の『きまぐれ三重奏』(まんがタイムラブリー)は現在次女の真昼(性格も体型も太め)の住み込み家政婦編。美男と野獣?カップルが主人公の『START!』(まんがタイムナチュラル)は恋愛→結婚→出産ときて今後はどういう展開になるのか。
芳文社のストーリー4コマと言えばこの人。但し前に定義したストーリー4コマとはちょっと違い、「劇的な展開を見せる」という要素には欠けている。例えるなら夜のドラマと昼のドラマの違いか。ただこれは優劣の問題ではなく、前向きな主人公に周りが影響されて緩やかながら着実に進展を見せる展開は十分評価出来る。

和田真由美(40)
2回りも年が違う年の差夫婦はいつもパワフルに甘々。『私の大事なダンナ様』(まんがタイム、まんがタイムスペシャル)は夫婦もの代表作。在宅主婦の描写はどうしても太り気味がネタになる。体重と態度が比例するのがギャグ。アットホームタイプだと反比例してどんどん可愛らしくなる。「まんがタイムスペシャル」誌ではこれ以外に巻末目次ページにて『うちにおいで』という子育てものを描いている。

さかもとみゆき(41)
子供(っぽい)キャラクターを主人公に、にぎやかな家族を描く。食いしん坊金ちゃんが主人公『ウルトラ金ちゃん』(まんがタイム)、幼妻は見た目も小学生?『素直がイチバン!!』(まんがホーム)、新作は夫が超ラブリーな『とっても豆太郎』(まんがタウンオリジナル)。もう一面、『あのねさっちゃん』(まんがタウン)はオフィスを舞台にした人情もの。他に「まんがタイムファミリー」誌巻末目次ページにて『フジヤマ川柳一家』という、読者応募の川柳をオチに持ってくる企画ものを描いていて、こちらは目出度く同誌に隔月連載となった(最新情報)。

師走冬子(42)
メイドものというフェチの1ジャンルを4コマの定番にしてしまった出世作が、母性本能と破壊本能を共有する『超(スーパー)メイドちるみさん』(まんがタイムスペシャル、まんがタイムきらら、まんがタイムポップ)。割と野暮ったい絵だと思っていたのだが、同業からの支持が高いようで今や萌え4コマの代表格である。元々は文系?作品が多く、『あおいちゃんとヤマトくん』(まんがタイムジャンボ)は幼馴染みの二人がバイトする本屋が舞台で、『いつも心に太陽新聞!!』(まんがタイムナチュラル)は新聞広告会社が舞台。『女クラのおきて』(まんがタイムラブリー)は学園もので..ちょっと苦しいか。そういえばちるみの雇われ先も小説家の家だ。
現在他社からも引っ張りだこで、竹書房での『ぼくの家庭教師』(まんがライフ)もヒット作。ついに双葉社(まんがタウンオリジナル誌)にも進出の模様(最新情報)。

なりたもえこ(43)
二人の息子を育てる忙しママが主人公の『ステキなわがママ』(まんがタイムスペシャル)が先頃終了した。最終回でも語られていた通り、本作は90年「まんがホーム」誌でのデビュー作「たいちくらぶ」から続いた作者のライフワークとも言える作品だった。新作の『情熱・熱風サクラ便』(まんがタウンオリジナル)も残念ながら終了となり、これで作品は5人姉妹を主人公にした『シスター5』(まんがタウン)だけになってしまった。実生活での子育てが一段落ついたようで、もうファミリーものは描かないのだろうか。

弓岡よし(44)
タイトル通り、主人公は『越野さんちのおねえさん』(まんがタウン)。4コマの原則に従って年下の彼氏とはほとんど進展を見せず。嫁き遅れ気味の長女(当然?OL)の悲喜劇を描き続けている。新作は『胸騒ぎのオフィス』(まんがタウンオリジナル)で、こちらは女性が強い会社を舞台にしたサラリーマンもの。
 



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