現在4コマ漫画家100人レビュー 第4回

(初出:第69号 03.1.21)

ベテランの底力(人気作家3)

4コマの歴史はここ10年ほどビジュアル的な変化が先にきて内容(ジャンル)が一新されていく傾向にあると思われます。今回はその先駆的な作者、作品をまとめてみました。

窪田まり子(10)
『恋するさよちゃん』(まんがタイムスペシャル、ファミリー、ジャンボ)
連載はすでに10余年。OLさよちゃんは同僚の「彼」と「純愛」中。ひたすらに純情な恋愛譚は10年来変化ないが、好奇心旺盛な主人公の周りは不思議な出来事が一杯。ほとんどのキャラクターが初期に登場したままである代わりに彼等のエピソードがどんどん積み重なって、独自とも言える世界(町内?)を創造してしまっている。例えばライバル由加里とのトライアングルは連載初期からすでに成立しているが、現在は何故かその3人で暮しているなど、きちんと整理すれば「謎本」が作れてしまう程の歴史を持っている。ちなみに「彼」は名前などのプロフィールは一切不明(=読者の想定?)。
同じような関係性を持つ『ときめきカップル』(まんがライフオリジナル)は88年同誌創刊以来の作品か。近作『二人が一番。』(まんがライフ)でも丸6年。こちらは関係が少しだけ進んで一応夫婦もの。

こだま学(11)
『ナオミだもん』(まんがタイムファミリー)
可愛くないけど憎めないキャラクターで一世を風靡したのが植田まさしの「フリテンくん」を代表とする80年代初期の4コマ定番。作者はこれを女性キャラクターに当てはめて代表作とした。主人公ナオミは我が強くてお調子もののパラサイトOL。つまり先人の「やりこめる」男性キャラクターに対し、ナオミは「やりこめられる」女性キャラクターとして日々怒られたり、呆れられたり..。それでも憎めないキャラクターとして連載15年、単行本も16巻を数える。一応社内のホープ秋山さんとの恋愛は途中告白→交際スタートの展開を見せながらも実質は変化なし。主人公のハミだしっぷりをネタに安定した人気を得ている。
同じように女性の主人公が笑いを振りまく型の作品が多い。夫婦もの『ダイヤ200%』(まんがホーム、終了)は奥さん(ダイヤ)が、刑事と元スリのカップル『キャッチ・ミーセカンド』(まんがタイムラブリー、終了)のミヤコもナオミと同型。売れない役者が主人公の『えきすとら以蔵』(まんがタイムオリジナル)もメインは家で待つ妊娠中の奥様(小松)との会話で、超楽天的な性格はナオミ同様。
これに対し新作の『さりげなガール』(まんがタイム、ジャンボ)は背が高いのがコンプレックスになっている少々内気なOLヒロが主人公で今までとちょっと違う設定。背が低い同僚福地とのお互い好きなのに言い寄れない純情なやり取りが続いている。

丹沢恵(12)
『ごめんあそばせ』(まんがホーム)
88年デビュー作「花のくみちゃん」がタイトルを変えて現在も継続のロングラン作品に。イラストレーターのくみ子とOLゆみちゃんの2人暮しは季節に応じたネタを繰り広げつつ15年(!?勿論サザエ時間)。女性のおしゃべりは長いと言うが、ほとんどが2人のちょっとした会話で成り立っており、つくづく真理を捉えた作品なのだと思う。どこから読んでも良くて、どこで止めても良い、まさに4コマの見本。
OLの日常(会話)をネタにした会社版「ごめんあそばせ」が『アシタのアタシ』(まんがタイムジャンボ、終了)。ショップものということで多少キャラクターが多いものの、『トラブルカフェ!』(まんがライフ)もスタッフ、常連客とのやりとりがメインで連載10年のロング・ラン。さらに医院が舞台の『天使じゃないもん』(まんがライフオリジナル)も同タイプで末永い支持を得られそうな予感。

森下裕美(13)
『ここだけのふたり!!』(まんがくらぶ、終了)
開始は88年3月号。長年に渡り「まんがくらぶ」の顔として表紙を飾った本作が先ごろ終了した。作者得意の少々毒のある濃いキャラクターが様々登場し、ネタはまだまだ作れそうな感じだがひとまず、区切りをつけたのだろうか(最終回は主人公夫婦と両母親との温泉旅行。終了を意図するエピソードもなく、復活もありえるか)。同時期にヤングジャンプに連載された「少年アシベ」も近年『COMAGOMA』(ヤングジャンプ、終了)という続編が登場し、横長の大ゴマ(1ページ4コマ)を使って会話とその裏に隠された思考まで描き出すという新しい手法で展開されていたがこちらもいつの間にか終了。これで現在作者の連載作品は何もない状況になった。夫の山科けいすけはビックコミック誌での4コマ「C級サラリーマン講座」をライフワークとしているようだが、「ここだけのふたり」は作者のライフワークとは成りえなかったのか(余計なお世話だが)。

ももせたまみ(14)
『ももいろシスターズ』(ヤングアニマル、終了)
創刊当初からの連載だったはず、かわいいキャラクターとかわいい下ネタで90年代後半の成人4コマ誌ブームの先をいった作品。主人公桃子(当時高校生)の守銭奴的な性格と対照的に自由奔放な姉のキャラクターを立てた普遍的なネタで展開されていたが、次第に作品世界のエピソードが積み重なって各登場人物の定番ネタが人気を集めていく。成長し、適齢期になった彼等が全員結婚を迎えたところでエンディングを迎えた。
同じようにキャラクターの性格、関係性がメインのネタになっている『せんせいのお時間』は学校というインナースペースを作りやすい舞台と、サザエ時間(季節、時代は巡っても作品世界では同じ年を繰り返している状態)の採用でまだまだ続いていく模様。
他に『マジック。マジック』(ヤングアニマル増刊)、『ななはん』(アフタヌーン増刊)を連載。



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