現在4コマ漫画家100人レビュー 第2回

(初出:第68号 02.11.20)

人気実力最高潮(人気作家1)
さて、本題に入ります。今回まずはということで、人気作家の中でも特に幅広い支持を受けている(と思われる。この分類は全て個人的主観に基づくので以下略)漫画家さんを紹介します。

秋月りす(1)
レギュラーはわずか2作品ながら、そのどちらもロングセラーでベストセラー。
父親以外全員女性という家族のにぎやかな日常を描いた『かしましハウス』(まんがライフオリジナル)は母親がいない代わりに長女は在宅のメルヘン小説家。夫婦を中心として「いない」家族ものというのはこの作品から主流となった。
OLジュンちゃんのコミカルな日常だけにとどまらず、様々な「働く女性」が描かれ今どき女性のものの考え方がよくわかる『OL進化論』(モーニング)。連載14年目、単行本は終了していないのに文庫版も出るほどの人気。サラリーマン向け青年誌の表紙を4コマ作品で飾れるのはこの人しかいない。

胡桃ちの(2)
同人漫画家みさき知乃が商業デビューして十数年。さおしか然名義での成人向け4コマ(という住み分けなのかは知らないが)を見なくなったと思ったら、胡桃ちの名義ではほとんどの4コマ誌を網羅する売れっ子に。
顔良し体良し口悪しの関西系?キャラが主人公に多く、OLもの『なにわOL奮戦記』(まんがライフオリジナル)、学園もの『天王寺のあべ乃ちゃん』(まんがタウン)は作者の典型的作品。女性キャラではもう一つ、フリルの似合う美少女(に描かれたおばあちゃんというのも作者の定番キャラ..)が特徴的で、ピンクハウス系に身を包んだキャラは各作品に登場する。
対して男性キャラも美男揃い。『ミッドナイト☆レストラン7to7』(まんがタイムスペシャル)はオーナー、コック、バーテン、パティシエといずれもビジュアル系。 『PaPaPaパラダイス』(まんがライフ)はホストの父親、小6にしてモデル顔負けの娘、別れた母親は男装の麗人という美形尽しの構成。
『Dia duit』(まんがくらぶオリジナル)は本格的なファンタジー作品で、異世界のレストラン「ディア デュイット」に悩みを抱え迷い込んできた人間を元の世界に導くエピソードが綴られている。元々作者の得手はこのジャンルで、欧風のディテールの深さで単なるキャラ先行の人気とは一線を画している。
これらの要素にプラスしてストーリー性を取り入れたのが『つなみティーブレイク』(まんがタイムラブリー)。紅茶専門館の美人ウェイトレスつなみの片思いは現在、告白「後」まで進行中。この後さらに展開するようなら作者の新機軸的作品となる。
作者本人も非常に魅力的なキャラクター?らしく、ほぼノンフィクションと謳われる結婚ルポもの『大阪愛のたたき売り』(まんがくらぶ)は現在「育児編」として双子のしょー吉、とん吉が大活躍。
他に、『じゃりセン!』(みこすり半劇場別館)、『恋愛商戦異状アリ』(ワンモアキス)、『無敵的!!浪花娘』(特集号に掲載。読んだ覚えはあるので終了作品か?)を連載中(継続して読んでいないので紹介は省く)。ジャンル、掲載誌等々多岐に渡るその活躍ぶりは4コマの「顔」といって差し支えないのでは。

小池田マヤ(3)
元々は一般的な4コマ漫画家だった。「零子がいく!」辺りから「強い」「大人の」女性を主人公にした恋愛もので人気を博し、現在では「ストーリー4コマ」という新しいジャンルの旗手として枠を越え活躍している。
このストーリー4コマの代表作といえるのが、完結間近の『...すぎなレボリューション』(Kiss)。デブで暗い、真面目だけが取り柄のお局OLが、社内随一のモテ男と事故のような一夜を過ごしてから変わっていく..という恋愛ものの王道のような始まりから一転、二転、三転四転..と、展開は常にドラマチックに進行している。つまり「ストーリー4コマ」とは、従来の4コマ作品のように4コマ1ネタで短い完結を続けながら、物語自体も次々に進展を見せる形を言う。
この新しい形の作品も近年では定着した感があるが、作者には他の追随を許さない強みがある。『聖☆高校生』(ヤングキング)が好評を博している理由の一つは、大胆な性描写であろう。しかも極端なものばかり(レイプ、SM、ホモetc...)。エロで人気というと少々寂しい感じもするが、享楽的に描くのではなく、あくまで真摯に描かれるとこのファクターは物語にリアルな流れを作り出す。思春期の繊細な少年少女達の成長物語という筋を外さずに4コマのスタイルで見せる、全く新しいタイプのストーリー作品といえる。
変わって、4コマの王道を楽しんでいるかのような『マイペース!ゆず☆らん』(まんがタウン)。元気一杯のパワフル美女ゆずと涼やかな令嬢らんのコテコテ大阪コンビが社内で大暴れ..と、4コマ漫画家の地力を存分に発揮した作品。
『バーバー・ハーバー』(モーニング)はストーリー4コマのさらに新しい形。1P8コマと普通の4コマと同じだが本作はジグザグに読んでいくスタイル(その為毎回柱に読み方の注釈がつけられている)。そしてストーリーはOLの遠距離片思いと恋愛ものなのだが、毎回中間に4コマ分の大ゴマを使ってメインキャストがメルヘ〜ンな妄想に浸る。4コマのマンネリ性を逆手にとってストーリー漫画を4コマで描く。作者の飽くなき挑戦は多くの読者に新鮮さを持って受け入れられているようだ。



編注:
「胡桃ちの」紹介文において、「大阪愛のたたき売り」(育児編)の登場人物表記に誤りがありました。みの吉は正しくは父親で、双子の兄弟はしょー吉、とん吉でした。訂正させていただきました。(04.3.23)>>>thanks! みのだきち様



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