現在4コマ漫画家100人レビュー 第3回

(初出:ホームページ 02.12.25)

現在の売れセン(人気作家2)

今回のテーマはずばり売れッコということですが、ちょっとヒネくれて4コマ界(だけ?)で大活躍の作家さんに絞ってみました。4コマの人気作家は、実にいろいろ描いているんです。表紙を飾ることも多いので、絵柄(キャラ)には見覚えがあるのでは?

秋吉由美子(4)
大ボケな主人公の作品が作者の真骨頂。『はるなちゃん参上!』(まんがタイム、まんがタイムファミリー)の女子高生はるな、『ぴんのみおピン』(まんがタイムスペシャル、終了)のOLみおピンはどちらも超目立ちたがり(の劣等生)。ハイテンションな言動で騒動を巻き起こす。対照的におっとり系大ボケキャラは『りーえのいえ』(まんがタイムオリジナル)のりーえ、『うちの母親待ったなし』(まんがホーム、まんがタイムジャンボ)の深津おかん。その言動は周囲の思惑を外しまくりで、読者の期待は裏切らない。
作者は野球大好きっ子らしい。ノリが体育会系なのはそのせいか。珍しく恋愛ものの体を奏してきた『まつのべっ!』(まんがタイムナチュラル)も、ウジウジしているのは男の主人公松延だけで、彼が好きな幼馴染みの女優大園皇香も、彼を好き?な同僚の順先生もカラッとしていて好印象。
『パジャマでNight☆』(まんがタイムラブリー)
寝室を舞台にしたワンシチュエーションコメディ。エッチ系じゃなくて、就眠儀式や休日の過ごし方などをネタにしたOL千夜のプライベートを中心に描いたもの。

小笠原朋子(5)
天然系キャラ(ボケ)としっかりもの(フォロー兼ツッコミ)の組み合わせが絶妙な作品が多い。例えば『僕は君のもの』(まんがタイムナチュラル)の主人公、晴臣(はるりん)とみちるの社内カップルはいわゆるバカップルで同僚の秋山さんは自分の彼氏を探す暇もなし。はるりんの母親と会うことになって少し戸惑う回とか(結局会えなかったのだが)、結構芯はしっかり描かれているものが多い。問題住人(自称女優)に密かな恋心を抱く若き管理人が主人公の『さくらハイツ102』(まんがタウン)も、ここに誤解を重ねるうちに管理人を好きになる住人が登場。本筋は進展せずとも多少なり波乱を期待させる要素が入っている。
作品に共通するのは女性(の方)が強く描かれているところ。特に女子寮が舞台の『ガールズライフ』(まんがタイムラブリー)や高校の部活動を描いた『山の上歌劇団』(まんがタイムスペシャル)などは雄々しい×→凛々しい女性キャラクターが目白押し。人気絶頂の俳優に子供がいた?という設定の『ウワサのふたり』(まんがライフオリジナル)は子供っぽい父親にしっかりした娘。旦那が先生、奥さんが生徒というラブコメ『せんせいとわたし』(まんがライフ)は逆に先生がフォロー役で奥さんがボケなのだが、振り回されるのは男性側というのはどちらも同じ。

岡田がる(6)
「パチンコ自虐ネタ」が流行った頃に、ポッと出てきた感があって読まず嫌いだったのだが、ここまで活躍されては嫌でも目につく。
『OL狂騒曲』(まんがタウン)は中堅OL、『乙女の力コブ』(まんがホーム)は証券会社のキャリア系、『ダッシュ!!カンカン娘』(まんがタイムスペシャル)はルームメイト3人組(のうち一番年長?)、『ごめいわくギャルズ』(まんがタイム)はパラサイトOL。と主人公は全て(ほとんど)嫁き遅れ気味のOL。それがネタの全てではないが、要所は主人公の「男いない」ネタが占める。
当然漫画のキャラクターとして主役を張るだけの性格が災いして..という話なのだが、あまり危機感は感じられず自虐系の笑いである。恋も仕事も、とは上手く立ち回れない等身大の描かれ方に読者は共感を覚えるのだろう。
最近作の『特盛りハッピーアワー』(まんがタウンオリジナル)も、社会人1年生と学生の双子姉妹が2人暮しを始めるも両親まで居座って..という初回。ぬるま湯の状況から抜けられないのー、とエンタテイメントをしっかり押さえた展開で4コマの定番と言える人気を獲得している。

新田朋子(7)
主人公のキャラを全面に押し出したコメディ作品の実力派。
オカマOL?海ちゃんが主人公の『バラ色カンパニー』(まんがタイム、まんがタイムオリジナル、まんがタイムファミリー)を筆頭に、居酒屋の飲んべえ従業員フクちゃんが主人公『はっちゃけ!フクちゃん』(まんがタウン)、ファミレスの食いしん坊従業員トキちゃんが主人公『今日のおススめ!』(まんがライフ、まんがライフオリジナル)と、まあこれだけでどんなネタが展開されているのか分かりますね。
編集者の日々を描いた『夏色エブリでいっ!』(まんがタイムスペシャル、終了)は主人公がギャンブル好き、男勝りで同僚のルームメイトとの夫婦のようなやり取りがネタ。最終回、突然ルームメイトが結婚することになり2人暮しが終わる流れで終了したのは実にコメディらしい。4コマ(特にコメディ作品)においてはマンネリ気味?になると展開を変えるよりスッパリ終了にして作品(設定)自体を変えることが多いのだ。こちらもご多分に漏れず3月号から新連載スタートが決定している。
『おきらくママ』(まんがホーム)
うっかりママと義務教育前の男の子2人。旦那気の休まる暇なしのホームコメディ。

野中のばら(8)
同じくコメディ作品が幅広い人気を得ている実力派。作者の場合はシチュエーションコメディが得手で登場キャラクターがまんべんなくネタに絡む。
例えば『ガテンのカコちゃん』(まんがタイム、まんがタイムラブリー)は主人公カコちゃんのドジネタの他に、白井くんのモテナイネタ、勝又さんの結婚出来ないネタ、あさぎさんの愛妻ネタ等々..(ズッコケネタから恋愛ネタにシフトしたとも言える)。展開に変化がつけられる為、長期連載となる作品が多い(『奥様うでまくりっ!』(まんがライフオリジナル)も100回超)。大学の研究室が舞台の『りら色キャンパス』(まんがタイムオリジナル)、OLもの『ワタシについといで!!』(まんがホーム)も様々なキャラクターが濃い性格で場を沸かしている。
もう一面、作者のネコ好きが作品になったそのものズバリ『ネコがスキ』(Kiss)、ネコを擬人化させた『てくてくとあるこう』(まんがくらぶオリジナル)も長期連載作品であり、単行本で読みたい作家だ。

吉田美紀子(9)
取り立てて特徴の無い作風(失礼)なのだが、設定が突飛。『ママがライバル!』(まんがホーム)は童顔にも程がある母親(しかも確信犯?)とおばあちゃんの知恵袋を備えた娘(高3)が主人公。主婦学生が主人公の『若奥様はテスト中』(まんがライフオリジナル)は、若いといっても小学生並(の言動)と主役はきっちり横綱級。『まりこの恋人』(まんがライフ)の制作秘話で「最初普通の恋愛もので作ったらボツになった。その後テレビで価値観の違いが原因で離婚というのが多いという話を見たので、価値観がまるっきり違う、でも付き合ってるというカップルを描いてみた」とあるように、逆転の発想的な設定が目を引く。双子の姉妹がOLで上司に恋..?という『とらぶるツインズ』(まんがタイムナチュラル)も、恋をするのは「ツッコミ役」の妹の方。『花ざかり課長さま』(まんがタイムスペシャル)も、現在「新婚編」で主人公は妊娠中なのだが、マタニティウェアで現役続行中。
ただ、その分男性キャラクター(旦那とか、同僚とか)の個性が非常に薄く、冒頭の地味という評価につながるのである。しかし最近作ではこの点に改良が見え、『オフィス獅子谷』(まんがくらぶオリジナル)では主人公は「普通」で、やっと就職した会社の社員が全員変人という設定。特に土方あがりの社長(30代でランニング、ハチマキ姿)、OLに憧れて入社したというオジサンと、男性キャラに濃いのが登場して新境地を目指す。
とはいえ作者の十八番はまだまだ主人公の突飛さにあり、同じく新連載『あゆみのヒーロー』(まんがタウンオリジナル)の仏頂面だけど特撮ヒーロー好きでオヤジギャグがツボという主人公の魅力には、男性キャラクターは及ばないのである。
他に『女子校育ち』(みこすり半劇場別館)を連載。


追加:前回記事において、胡桃ちの『PaPaPaパラダイス』(まんがライフ)という作品に関する記述が抜けておりましたので追加しました。(02.12.25)



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