本のささいなこと。 第1回

(初出:第14号 98.5.20)


これから話すことは「漫画」の話。すでに一部の人には触れまわった事実だが、2〜 4月の本の購買数が200冊を越えた。週刊誌系の作品を一括購入した、というのが 原因で、ほぼ「古本屋」での買い物だったから、作品数、購入額を考えるとそれほど たいしたものではない。とはいえこの量はやはりタダゴトではなく、自身始めての快 挙(?)である。この結果どういうことが起こったか。

 「漫画を読めなくなった」のである。つまり矛盾である。と言っても精神的な問題と か、そういった高尚な理由ではない。

 「本誌」を創刊した時に約1000冊あった蔵書。当然それからも増え続けて、現在 ではよく分からない。少なくとも、わが家の押入の下の段は「占拠」されてしまって いる。今回買った本は従ってわが家の「居住スペース(6畳間)」を犯していた。布 団の横に、小山のように積み上げられた本。「こらぁ何とかしないとアカンな」と考 え、とりあえずは段ボールに押し込んだ。揃いのものもあれば当然、バラのものもあ る。手元に本のない生活というのは耐えられない性質であるから、2〜3日するとと りあえず(この手近の)段ボールに手を入れることになる。そこからバラの本を取り 出した時、もちろんその前の巻と合わせて読みたくなるのが人情というものだろう。 買ったばかりの時はいい、しかし2度目は...!で、押入から過去の本を取り出す ことになるのだが。

 この蔵書、揃って同じ段ボールに有るのはあの1000冊のみ。後は「買っては(段 ボールに)入れ、たまったら押入にしまい...」の繰り返しで出来上がった一種の 「迷宮」である。取り返しの付かないとはこのことだ。もしこの作品を揃いで読もう と思ったら、一日仕事になってしまう。元より就寝前の一時の娯楽。そこまで出来る ことではない(これで結構忙しいのだ。そこの人、笑わないように)。

 とここまで書くと、「それって今までにも起きてた問題じゃない?」と思われるかも 知れませんが。実は上手く行っていたのである。どういう事かというと、今までは「 揃っていないものはなるべく買わない」方針でいっていたからである。欠落本は(稀 少本以外)買わない。新しく買った本はなるべく一時期で揃えきる。こうして買った 本であるから、読み返しも比較的簡単に出来た。欠落本を買わなかったのは、もちろ ん上記の問題を出さない為であったが、その他の理由(本音)として、「何が欠けて いるのかはっきりしなかったから」でもある。もちろんデータベースとして目録は作 成していたから、欠落本のリストはあった。しかしその(作成)当時のものは程なく (稀少本以外)揃えたし、一年ほど新規購入した本のチェックを怠っていたことから 、このリストはほとんど無意味なものであった。今年に入ってご存じの通り、高価な 機械を買ったことから、一念奮起して本格的なデータベースを作成した。便利なもの で、簡単に欠落本のリストをプリントすることが出来る。まさかそれが仇になろうと は...。

 このリストを手に、喜々として古本屋を巡ったのは3ヵ月前。確かに、確かに揃った 作品が増えた。読み返せば新たな発見も、喜びもあろう。しかし...出来ないでい る。本があるのに読めない苦しみ。怠慢の末の(当然の)報いであるとはいえ、深い ため息の日々。

 とりあえずの対処法として、「短編集を読む」ということで今までやり過ごしてきた 。しかしもはや限界である。といって蔵書整理も時間が...(笑わない!)。 ということでしばらくは「活字」の方に蔵替えしようと思う。(解決になってない?)



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