『別冊付録のついた「フィーヤン」を買い逃す。まだ探せば間に合うのかも知れないが、手近なコンビニ、書店を回って無いので断念。「監督不行届」も単行本になるが新刊で購入となるのか微妙。「よつばと!」3巻もそう。』(前号記事より)
新年早々買い逃しがあった事で逆に火が付いたか、今月の「FEEL YOUNG」誌で「監督不行届」(安野モヨコ・祥伝社)が発売されたことを知り実に久々に書店の新刊コーナーへ。前述した手近な書店は、いざ買いたい本があって探すと、無い。文中の「よつばと!」(あずまきよひこ・メディアワークス)3巻も、「ランク王国」で発売予定に挙がっていたのは去年の事で、一向に姿を確認出来ず、こちらは買いたくとも出たのかどうか分からないので「微妙」というニュアンスだったのだ実は。確かに小さい書店だが、最新刊のときにチェックしない私が悪いのか、追加注文に積極的でない書店を非難すべきか。それとも新刊本の流通が縮小している、新古書店の弊害がいよいよ表面化という現状なのか。
ともかくとして。駅前に出てみた。専門店に行けば、出ているかどうかの問題ははっきりするはずなのである。
さて、買う決心のついた「監督〜」。無いのである。新刊の平積みコーナーにも、出版社別の定番コーナーにも。発売日カレンダーを見る。8日と、出ている。早くも売り切れか?
新刊コーナーでは再版の「一緒に遭難したいひと」(西村しのぶ・講談社)が目につく。主婦と生活社(ギガコミックス)から1巻が出ていた本作は講談社(KISSコミックス)所収に蔵替えとなった。HPによると、1、2巻同時発売の予定がとりあえず1巻だけ出るとの事。つまり未収録分は入っていないので今買うべきものではない。ないのだが..描きおろしアリという帯文句につられる。結局は各話の扉ページがリメイクされていただけの事で、絵柄云々にあまり重きを置いていない私には単なる再読の機会が与えられただけである。対価790円は安くは無いがこれでしかし続巻の期待が若干上がったので新装刊自体は歓迎出来る。初回90年発表の短編(スピリッツ!クマプーとは懐かしい!)に尾ひれが付いて、「美紅・舞子」のサブキャラがメインで活躍する「RUSH」同様、もはや時系列的には無理があるどころの話ではないし、(おそらく2巻の)メインストーリーは絵衣子の方に移っているので初回(あるいは次巻)は別物として話数を振るべきだろうと思うのだがすでに続きものとしての意味合いは極めて薄いので単なる発表順番号だと言われれば妥当(冗長蛇足)。こうして読み返すと絵柄や雰囲気が変化しているのは事実だろうがノリは変わっていないと感じる。幸か不幸か私は作者を追い越して大人になることはなさそうだ。新作(話)が読めるならどこまでも付いていく覚悟。まだまだ捨てたものではない。
さて。「監督〜」は作者の新婚生活を基にしたエッセイ漫画である。夫・庵野秀明(今ニッサンのCMに出てますネ)との共著と考えると、青年コーナーに置かれていることも有り得る。すでにワラにもすがるような思いである。近年青少年のコーナーをじっくり眺めたことは無い。と、あっさり「よつばと!」3巻があった。さすが専門店というべきか..。主人公よつばは拾われっ子で天真爛漫純真無垢な存在。読んでいて、好感は持てるが逆に哀しくもなる。現実にこの子がいたら、多分日本では生きられまい。そう思ってしまう程、現代に許容は無いような気がする。作者もそこのところをはっきりと意識しているのではないか、と言えるのは、台詞には登場するが一向に姿を現わさないキャラクターが存在するからである。とうちゃん(育て親)の親友、ヤンダはつまり、一般人であり作品世界の住人ではないのだ。あるいは隣の綾瀬さん家の父親もそう。普通に社会生活を営んでいる存在はここでは抹殺され、いつまでも「夏休み」のような暮らしを続けている人々の中で、よつばは伸び伸びとしている(実際、作中の季節は常に夏である)。そう考えていたので3巻の帯文句「どこかで見た、どこにもない場所へ。」に深く頷く。そうしたらあれ?綾瀬さん家の父親が登場。昼行灯のようなボーとしたキャラクターは確かに違和感を感じないが、うーん、会社員がキャストで登場するのは想定外..。さらによつばに試練が課せられる(祭で離れては駄目と言われたのに早速飛び出していき、とうちゃんはわざと皆で隠れてよつばを不安にさせる)とは、現実世界への適合を目指してはいないと考えていた自説が脆くも崩れる。よつばは成長、する(してしまう)のか?個人的にあまり歓迎すべきエピソードではないのだが、迷子になって涙するよつばが「こいわいよつばです こいわいよつばです」と自分の名前を連呼する様は気に入っている。結論としては小難しい事を考えるより、読んで笑うが良、という事か..。
ついでガムコミックスの棚で桑田乃梨子を見つける。少女から4コマの流れで、ファンタジー誌?にまで..活躍の場が広がっている。そういえば阿部川キネコの「辣韮の皮」も、門井亜矢の「ヘブンズゲイト」もガムコミックスだ。新興誌は皆ファンタジー誌と一括りにして視野に入れていなかったのだが、発行元はサブカルに強いワニマガジン(ワニブックス)。これは往年の「コミックバーガー」並みに注目すべき漫画誌なのかも知れない(といいつつ、最近「アフタヌーン」はおろか「IKKI」も読んでいないのだが)。ともかく初の少年?誌作品「豪放ライラック」1巻、これも手に。相変わらず駄目っ子が主人公なのだが、内向的で振り回されるタイプとマイペースに振り回すタイプの2種があって本作は後者(ちなみに「だめっこどうぶつ」(まんがライフ)の主人公、うる野は前者から後者へと移行してアニメ化となっ(れ)た?)。前例を見ると主人公は結ばれないラストとなる(ex.「卓球戦隊ぴんぽん5」)ので今回は違うオチに期待。終了を待ち臨む訳ではないのだが。それにしても細密な描写には程遠い絵柄(失礼)は、ワイドサイズで見る必要は無く。初期作の単行本を、いつの間にかどこかにやってしまい(おそらく知人宅..か)、まとめて文庫化されていたので(「犬神くんと森島さん」白泉社文庫)買ってあるのだが、そのサイズでも充分楽しめた。短編集「ラッキー!」(白泉社)、4コマ「だめっこどうぶつ」(竹書房)と最近ワイドサイズづいているが、版元の仕様だからどうもしようもないが、花とゆめコミックスシリーズで並べたいところ(内容は考慮していません)。
そしてモーニングKCのコーナーで「誰寝」2巻を見つける。「誰も寝てはならぬ」、サラ・イイネス(現サライネス)の新作1巻目は古本屋で購入。で、「大阪豆ゴハン」はモーニング読者であったこともあって全巻購入を果たせ(さ)なかったので、今回こそはと1巻末の04年秋2巻発売予定というのを気に掛けていたはずだったのであるが..年明けてご対面となった。しかし..しかし近所の本屋。ワイドサイズのコーナーは4コマ記事を書く必要上もあって、ちょくちょく眺めていたのだが(この書店はワイドサイズの単行本はひとかたまりに置いてある)、一度もお目に掛かっていない。まあ帯にも「1巻も売れてます!」とあって、間に(地味〜に)と小さく入れてあって、まあ洒落なのだがどうもヒット作とは言い難い。でも本作は一連の関西人ネタを踏まえつつ、恋愛「ドラマ」の様相も呈していて、しかも簡単に想像がつくようなカップリングになかなかならないというかなりテクニシャンな展開。単純に実話が元ネタだからリアルっぽく見えるという事なのかも知れないが。3巻が早くも今春発売予定ということで、次こそすんなり入手といきたい(続きが気になってマス)。
さて、1冊を買うために専門店に来て、予定外の購入がすでに4冊である。近年、こういう事態になると急にテンションが下がり、この後手にした本を全て元に戻して書店を去るという行動に出ていたのだった。金銭的な問題というより、思考がブレーキを掛けるのである。こうやって買っていくと際限が無い、続き物は一度買い始めると刊行ペースに翻弄される、半年もすれば新古書店に並ぶ、と。しかし今年始めての書店では、何というかこう、心構えが違った。
昨年、家の本棚はメインがほとんど動きを見せず、新たに買って読んだ底辺に平積みされた作品だけが売っては買いと動いていた。メインに置かれている作品は埃を被り、完結した作品はただ、最終巻まで購入されるのを待っている状況である。だから新刊を「買わない」ことにこだわっていた。専門店にいけば揃えるのは容易で、揃ってしまえばその作品は背表紙だけを見せたコレクションと化してしまうからである。ここで逆に、集める事に固執しすぎなのではないか、と気付く。そういう読みたい気分を失ってしまった作品を、新古書店で見つけたからと言って買い求める行動こそ捨てるべきではないか。読みたい時に読めるなら読めば良い。読みたくないなら辞めれば良い。そう考えたら、新刊だろうと買えばいいし、105円だろうと買わなくていい。新しい発想が産まれたのである。
そういう訳で目的のものを買えなかったが、結構な収穫を手にして意気揚々とレジへ向かった。その時、もう一度だけ寄った新刊コーナーの、縦置きされた準新刊扱いのコーナーに1冊だけ、「監督〜」があったのだ。幸いな事にラスト1冊を手にすることが出来た、と感慨に耽った、の、だが。「超詳細!オタク用語2万字解説!」という帯文句を見て思う。もしかして..世間的に注目浴びてない?作者の分身「ロンパース」のオタよめへの軌跡は、一般的な要チェキ情報ではないのかも知れない。個人的にもオサレ系女性漫画誌に咲いた徒花という感じが、気に入っていたのである。
相変わらず世間様のトレンドとは程遠い読書遍歴となりそうだが、今年は色々読んで見るつもり。お付き合い願いたい。