...枕としては不適当かも知れないので先に断わっておく。ゴメン。理由は後述。
前々回、紹介したついでで羅川真里茂(注1)「赤ちゃんと僕」を読み返した。面白い。面白いんだけれどもこの作品、1話と2話(「お兄ちゃんと僕」)の短編だったらすごく良く出来た作品だったんじゃないかな、と思った。もっとも短編としての第1話が好評で、続編(「お兄ちゃんと僕」)が描かれ、目出度く連載(「赤ちゃんと僕」第2話)となったのだからこの評価は当然。問題は結局、このタイトルで全18巻の「一作品」となったことにある。..問題とは違うんだけれども。作者が「巷では「脇役と僕」になっているという嫌味もあるけれど〜」(注2)とつらそうに受けているが、言ってみれば確かにそうで、当初のストーリーから大きく逸脱している話がたくさんあって、それはつまり「赤ちゃんと僕」なの?という疑問は湧いてくる。それは作者に対する非難ではなく、エンタテイメント作品として、本作品は間違いなく評価出来る。しかしストーリーに評価を絞るならば短編でよかった作品であると思え、ここに定期(長期)連載や人気至上主義の弊害を見ることが出来るように思う(注3)がそれは今回の本筋ではない(ので例えとしてよくなかったねえ)。
(注1)第58号記事では真里茂を真理茂としてしまいました。作者も「すごくよく間違われる」と気にしているミスを..ワープロの弊害ですね。訂正しておきます。蛇足。
(注2)単行本10巻、柱記事より。
(注3)同様にメリットもあると思う。この問題に関して今は中立。やりすぎはよくないとだけ。
今回紹介したいのは、長編だけど一作品として完結した作品というのは「原作つき」に多いんじゃないかなあと思ったので原作者の明記された作品。どういうことかというと昔から名前こそ出ないまでも「ブレーン」としてのストーリー提供者はいる訳で、漫画家それ一人の独作というのはなかなかない。でもそれをまとめるのは結局、作画をする漫画家になるからその作品は漫画家が作った、と言える。原作者が明記されたものは、はっきりとストーリーは原作者が作りましたと言っている訳で、つまりストーリーに関する評価は(まるっきり、じゃあなくとも)原作者に与するのではないかと思うので今回はそういう括り。
梶原一騎(高森朝雄)の作品はひたすらに生き様が書かれていて、どんなに長くともその主張が逸れることはない。好例としては「あしたのジョー」(ちばてつや)になるだろう。力石の初登場シーン。梶原はそれを見て「大きすぎる!これじゃあジョーと(ボクシングで、公式試合を)戦えないじゃないか!」と言ったそうだ。そのお陰で力石は過酷な減量をしてジョーとクラスを同じにしなければならなくなり、結果として死に至るとものすごい反響を呼んだ、のは付加価値として。人気があったからその後の話(世界戦)まで書かれたのかも知れない。けれども描かれたのは、どうであれひたすら戦って戦って、燃え尽きたジョーの姿だった。
坂田信弘は運を多用しすぎると前に逆評価をしたけれども、作者の話は大好きで、それはかざま鋭二の(「風の大地」ビックコミックオリジナル連載)であっても中原裕(「奈緒子」ビックコミックスピリッツ連載)であっても評価は変わりがなく、プロゴルファーとしてスポーツ科学(?)に精通している作者ならではの知識が盛り込まれた展開が好きということ。
七月鏡一は藤原芳秀と組んだ作品(「闇のイージス」ヤングサンデー連載etc...)しか読んだことはないが、アクション映画の要素たっぷりの設定やヒーロー(=主人公)像は原作の持つ魅力と言えよう(注4)。原作つきの魅力に主人公の設定の確かさみたいなものは挙げられると思う。真刈信二の「勇午」(赤名修・アフタヌーン連載)の主人公など、例えストーリーの途中で出なくなってもその存在感が失われることはない。少なくとも、勇午の出てこない「勇午」って「勇午」なの?と読者に指摘されることはないのだ。
...うーん、どうしても枕の作品との比較みたいになってしまう。決して批判してはいない(そもそも型の違う話を同列でしているのが間違いなので)と重ねて強調しつつ、こんな話で締めてみたい。
(インタビュアー):ラストは、わりとあっさりしていて、まだまだ続きそうな余韻がありました。
『キャンディ(・キャンディ)』は全九巻ですが、今だったらもっと長くなってたかもしれませんね。
水木(杏子・原作者):番外編も続編も一切書かない、と宣言していたんですよ。
(インタビュアー):編集長にしてみれば、もっと続けてほしかったんじゃないですか?
水木:そうね....、でも「そうだよな、あそこで終わるのがいいんだよな」って言ってくれました。〜
(インタビュアーは伊藤彩子。「まんが原作者インタビューズ」(伊藤彩子・同文書院)より。( )内は私の補足。)
これは原作つきに限ったことではないが。作者が伝えたいことを伝えた所で終わった作品というのは、人気の有無は別にして、ちょっと違う読後感を味わえるのではないだろうか。
(注4)今ちょっとそんな話を書いているもんで(企画進行中)、ヒーローものには特別の興味を覚えてます。超蛇足ながら自分の気に入っているプロットを一つ。
映像プロット4(没案)
キャスト:
片桐仁 40年前、謎の物体を発見した。SK鋼の開発者。
義人 仁の長男。不思議なオーラを持つ。
礼子 仁の長女。篠北の秘書をしている。
智明 仁の次男。留学先から帰国。
篠北 元UMA-PROJECTスタッフ。現製薬会社会長。
矢島 元UMA-PROJECTスタッフ。現陸上自衛隊統括参謀長(とにかく重役)。
ストーリー:
3兄弟が久々に揃った日の夕食中。テレビで観た「ミステリースポットファイル」では、高速道路を走行中に真横を猛スピードで通りすぎる物体を目撃したアベックが興奮気味にインタビューに答えている。インタビュアーがその状況を説明している。「彼等が目撃した現場付近には、土砂災害で廃園となったレジャー施設があり・・」過疎化した赤塚村とレジャー施設を写し出す映像に釘付けになる3人。20年前まで存在したUMA-PROJECTとの関連を探る篠北達の前に現われた怪人。そして封鎖されたはずの研究所には明りが..。行方不明の片桐博士が開発したSK鋼が完成した時、一人のヒーローが誕生する。