タカハシの目 第42回

(初出:第59号 02.2.22)

くらもちふさこ。72年デビューで今年30年目の作者の最新作は、しかし「円熟」とかベテランを評する単語とは縁遠い。その作品、「αアルファ」は1話完結のオムニバス・ストーリー。続き物たる由縁は4人の主人公が毎回様々な設定の主人公を演じる事。つまり劇中劇のスタイル(注1)。大胆な構図(注2)、「あっ」と驚くストーリー展開(注3)は勿論作者の作り成したる技巧、その独特のスタイルは系譜の延長線上にあって、総じて「さすが」という評価も出来る。とはいえ重鎮「らしからぬ」斬新さである(注4)。本作は「コーラス」誌に連載(不定期?)。先頃「別冊コーラスWinter」誌に4話が収録されたが、残念ながらすでに店頭には置かれていない。単行本未刊行である。近い内にまとまるのを待っている。

(注1)毎回最初のページに「CAST」として演者のクレジットがついている。
例えば第1話ではサクラ:三神妃子/アサダ:生田理一/キリ:天水キリ/ローズウッド:山本燿
第2話は立花芳乃:山本燿/棟方キリ:天水キリ
左が配役、右が演者となっている。各話によって増減はあるが、第1話登場の4人がレギュラーメンバー。ちなみに彼等自身についての物語は語られていない。

(注2)例えば第2話。冒頭のシーンと最終シーンは新宿駅構内。その描写は写実的で、それと分かるキャラクターは描かれていない。コマ毎に2本の矢印が記されており、そこにキャストの2人(注1参照)がいることを示している。ついでに言うと本編の主人公、立花芳乃の登場は4P目になるが混雑した構内は描かれておらず、ただ様々な会話(吹き出し)が主人公の周りを取り囲み、雑多な雰囲気を表している。

(注3)第4話。全33Pのうち28P目まで、物語は宇宙船様のコクピット内で、艦長(天水キリ)とオペレーター、ポチ(三神妃子)とのやり取りが続いている。ようやく敵艦を捕捉し、攻撃開始の指令。しかし同時にコクピットは1人の女子大生の頭の中となり、つまりここまでの話は、講義でよく会う男子学生に声をかけるまでの話であったということが明らかになる。

(注4)第1話の「SFファンタジー」から最新作(コーラス2・3合併号)「学園グラフィティ」まで、全て根底にあるテーマは「恋愛」なのだがその世界の広いこと!



「過去原稿」ページへ戻る

第43回を読む