タカハシの目 第38回

(初出:第53号 01.8.21)

最近気付いたのだが、自分の古本屋での買い方はスーパーでのそれに似ている。というのはつまり、小学生の駄菓子屋一直線(古いか)ではなく、婦女子のバーゲン買い漁りでもなく、ボーナス出て中古車センターへのサラリーマン(一年目)でもない。買う意気込みのない、まさにフラリと立ち寄る、「今日夕飯どうすっかなー、スーパーでも寄ってくか。」なのである。ま、発売日が決まっている本屋とは違うから、当然と言えば当り前。しかし古本屋の利用者の中には欲しい作品を探して古本屋を回り、普段は視界にすら入らない方もいるであろう。というかそれが一般的な気がしないでもない。ここはまあ、普遍を説く場ではないから構わず進めていく。少なくとも私は、(営業時間内に)近くを通れば(ほぼ)立ち寄る。そして一巡して店を出る。
何を買うかはこの一巡している時の「気分」による、ということに最近気付いたのだ。一番多いパターンが、何も買わずに出る。見回しているうちにどうも今日は気分じゃない事に気付き、そのまま退店。「帰ってビール飲んで寝ちまうか。」といった感じである。この夏はこれで5kgやせた←置いといて。次に多いのはマイブームの4コマものを何となく買って去るパターン。これも存外多い。「とりあえず手軽で済ますか。」とお惣菜だけ買うようなものである。この例え、もういい?まあまあ。月イチくらいで訪れるのが、これと対極のパターン。「おおっ!?」で始まるこの買い方は、「本マグロ大トロ」が特売であったが如し。そうなると次々に欲しかった作品が浮かび、これがまたあるのである。気付けばカゴ持ちで、会計の際に「カード作られた方が明らかにお得ですけど。」と言われる(前に書きましたね)。で、「大漁大漁」と帰宅するものの..これ、スーパーで言う買いすぎ。当然余す事になる。賞味期限があるから必死に食べる..あっ!本には賞味期限無かった。例えが悪かったようで...。えー100円ショップであれこれ買って結局使わないままになってる、でふとした時に引っぱり出すと。ふう、話が合った。本についてもこれが言える訳で、買ったはいいが帰ると今日は読む気分じゃない。でそのままになっていて、気分の乗った時に読む。こんなパターンが最近続いているのである。出会い買いが出会い読みに発展してきていると言える。
どうも漫画の事を書くのが久々で、ペースをつかめずにいるが。今回紹介したいのは「タブーを描いた作品」になる。前フリとのわずかな接点は、大特売の日に買い置きしてあった作品を今回紹介するという事だけである。つまりあまり関係が無い(スマヌ)。
ゲイが市民権を得てどれくらいになるのだろう?少なくとも日本では曲解されて遠ざけられている話題になると思う。というのは自分がまさにそうだからである。同性間での恋愛的な問題は、どうも理解し難い。ボーイズラブものはほとんど神々の戯れ、余りにも遠すぎる。現実的な話が描かれているのが、羅川真理茂「ニューヨーク・ニューヨーク」(白泉社)になる。運命的な出会い、そして映画のような誘拐→救出劇と、全体的にはドラマチックなラブストーリーである。ただこの話の主眼は、周囲とそして彼等自身がゲイにまつわる様々な諸問題を解決していく所にある。これは何も特殊な問題ではない。社会が複雑多様化していくなかで現実に起こりうる、人間関係の典型的事例なのである。逆説的に、それが同性間での話であろうとも何ら変わりがないことを知る。作者は子供を主人公にした作品(「赤ちゃんと僕」(白泉社))で人気を得たが、単なるキャラクターの優ではない。丁寧に張られた伏線と、練られたストーリーで読み応えのある作品を発表している。
結ばれて完結が恋愛漫画の王道。昨今は付き合ってからのエピソードを主体にするものが多くなった。では、その先は..?描かれているのが小池田マヤの「・・・すぎなレボリューション」(講談社)になる。すでに何度か取り上げているが、現在ますます目を離せない展開を見せているので再度紹介する。一夜の過ち..で自分の気持ちに気付いた主人公は、彼に好かれる、自分が気に入る自分になる為に大変身。なかなかお互いの気持ちを確信出来ないままにこの変身が思わぬ事態を招く。その問題を妥協無くクリアすることで、二人は晴れて結ばれる。ここまで王道。で付き合ったはいいがお互いがお互いだけを見ることに重圧を感じて、本気な浮気をしてようやく素直な気持ちになれた。これは最近の主流。で単行本収録分がここまで。掲載誌で進行中なのがこの先な訳で、掟破りとも言えるタブーが次々と描かれている。私の予想を越えること数度。結論に至るまでの興味は上がりっぱなしだ。前にも述べたがこれを破綻させることなく見せてくれるのがこの作者である。本作は、今年の「講談社漫画賞」ノミネート。惜しくも選に漏れたが、完結した時には何らかの評価が与えられる事は間違いない。



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