タカハシの目 第37回

(初出:第51号 01.6.20)

えー、今月も漫画作品を紹介致します。のっけから弁解になるのですが、私近頃購入する単行本、漫画誌はほぼ「四コマ」もので占められています。つまり..半年前に20も挙げたにも関わらず、四コマ作品を紹介したいと..あまりにも芸が無いってんで少々趣を変えて、「四コマ(専門)誌以外に載っている四コマ作品」という括りで紹介します。..しかしこれでも面白味が無い。吉田戦車とか、紹介するまでもないし..というわけで出来るだけ珍しい?作品を紹介することにしました。そうなると紙面が埋るかどうか不安なので適当に雑文も交えてお送り致しますが、そちらが主文になるかも..。皆様には作品をお楽しみ頂きますよう...。
ゲームをほとんどしなくなってずいぶん経ちますが、「ファミ通」はむしろ近年になって通読しています。自分にとっては「漫画誌」という認識に近い。和田ラヂヲの四コマ、みずしな孝之や柴田亜美のエッセイ漫画etc...。そんな中でも楽しみにしている異色四コマ、桜玉吉「ビーム救済四コマ」(ファミ通誌)は、週刊の「ファミ通」に隔週の割で載る、「月刊コミックビーム」の広告内四コマです。売れてないので宣伝、だけど売れてないのがネタという本作は自虐系として傑作だと思います。ちなみに単行本「幽玄漫玉日記」に所収。
気になってはいたんですが、購読に至ったのは最近。というあずまきよひこ「あずまんが大王」(電撃大王誌)は、出ると「コミックランキング」1位を取る人気?作品。「?」というのは..このコミックランキング、「まんがの森調べ」というのが割とスタンダードで、一般誌(ex.「SPA!」「ダ・ヴィンチ」)にも載っていたりするんですが..かなり片寄ってるんですよね(注)。具体的には角川書店系と白泉社系。本作も角川(「電撃大王」誌)連載で、四コマといえどすぐに飛びつくことはなかったのです。本当にチェックしとくべき?てな感じで。
(注)片寄っているのは確かな話ですが、一般書店と全く違うって訳ではないです。メガヒット作不在をよく表わしているといった感じ。
しかし読んでみれば評判通り、面白いです。共学の高校が舞台なのに登場人物が女性9割、しかも10才の天才少女を筆頭に各種「萌える」キャラクター(元ネタ有りか?)が揃っており、かわいいかわいいで充分に楽しめるのかも知れませんが、「面白い」というのはそこではない。ネタが、というのは当然として。特筆したいのは形式の面白さ。(文体変更)
四コマというのは通常、「起承転結」を1コマずつ送る形式。勿論それを応用してある訳ですが、つまり全てのコマに動きがある。しかるに本作は「3コマしか動いていない」パターンが多用されている(初期は除く)。ここが面白い所。詳しく説明すると、例えば(1コマ目)漫才のシーン(2コマ目)ボケ役がボケる(3コマ目)ツッコミ役固まってしまう(4コマ目)ツッこんでオチ。こんなパターンでの「3コマしか動いていない」というのは決して珍しくありません。しかし、この3コマ目は、動きがないといえど必ず何かしらの言動が入っています。まず上記のようなネタだと前後のコマとは違う絵が入っている。前後どちらかと同じ場合でも心の中の声、つぶやきetc...(言)、汗などのオノマトペ、視線の移動etc...(動)。動きがないように見えてもやはり動きがある。本作も初期はこのパターンでの「3コマしか動いていない」でした。しかし近作では(単行本2巻〜)本当に「3コマしか動いていない」ネタがほぼ1/3を占めています。極端に言うと動いていないコマはなくとも全く支障がないコマ。更には連続するネタの場合、1本で済むエピソードが2本で展開されていることも(この場合動いていないコマは2コマ×2本で4コマ)。四コマ(作品、作者)として稚拙だからと評価すべきか。いや、この「捨てゴマ」がしかし、本作の味わいというか面白さを決定付けていると思えます。例えばキャラクターの性格、笑いを呼ぶ間、(作品全体を流れる)独特のテンポ、などがこのコマで表わされているのです。2巻以降、動いていないコマは頑ななほど効果を付帯させていません。これを怠慢とみるのは寧ろ邪推。読者の想像力に委ねることで、飽きを起こさせずにこの繰り返される動かないコマを見せているのではないでしょうか。小難しい説明ですんません。
最後は作品ではなく雑誌になるのですが、「笑魂JUMP」誌が先日創刊。「オールマン」誌の増刊扱いですが続刊になりそうです。中味は「ヤングジャンプ」、「ビジネスジャンプ」、「オールマン」誌連載の四コマ、ショート作品をリテイクしたものが中心(共同編集だそう)。総集編の亜流といった感じで特に必要性は感じられませんが、個人的には「ジャンプ」というのが買い。特に近年、集英社系のヤング誌はほとんどチェックもしていない状況なので、マイブームの四コマだけを眺められるのはうれしい話。事実この人が書いてたんだ!という発見が続々と。専門誌が強いのは当然ですが、一般誌のラインナップもあなどれない(楽しみ)と再認識させられた一冊。
こんな感じで現在、何を読んでも四コマに目がいってしまう状況なんです。今月末には有間しのぶ「モンキー・パトロール」2巻が発売、「まんがライフ」誌次号に桑田乃梨子初登場etc...困った困った..次回は何を紹介しましょうね?



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