連綿と、話は続いております。セット買いに慣れた昨今。今月は丹沢恵「ごめんあそばせ」1〜9集を(格安で)購入です。芳文社の4コマ誌各誌(「まんがタイムファミリー」等)に連載中の作品で、まあつまり4コマ作品です。単行本を買って初めて知ったんですけど、この作品、作者のデビュー作で現在12年目。しかし単行本にまとまったのは8年目の96年。しかも掲載順ではなくランダム編集..。2000年発売の第9集では主に96年掲載の作品がまとめられております..。老舗たる芳文社にしてこの有様..4コマの宿命を感じました。って、自分も特に揃えようという気持ちはなかったんですけど。ストーリーは女の子2人のお気楽同居生活であってないようなもの、掲載誌を読んでいるので特に読み返す必要も無し。ちょうどナイト・キャップ用に4コマものを考えていたので買ったまで。しかし眠りにつくための本がわずか2日で読み終わりました..やっぱり面白いや。
↑これが枕になるのかどうか。女性誌を、読むようになりましたがその系統を思い直してみると正統なる読者ではないことが改めて分かります。例えば、今一番読むものの多い女性誌は「FEEL
YOUNG」誌(祥伝社)になるんですがその全てが4コマ、男性誌にも作品を持つ作者です。いわゆるメジャー好み、というよりは連鎖読みであることが分かります。純粋に女性漫画ということでは(読む作者は)両手にも満たない筆者です。そんな訳ですから、男性諸君にも比較的、ここに紹介される女性誌作品はとっつきやすいと思いますよ(と正当化しておいて)。今回は「FEEL
YOUNG」誌の作品を、私の出会い作品と一緒にご紹介。
桜沢エリカ「今日もお天気」は作者初のエッセイコミックなのではないでしょうか。短期集中育児ものです。物書きの人は大概そうなのですが、珍しい体験を独自の視点で解釈しているので同系統は読み較べてみるのが楽しいです。特に出産・育児系はハウツーから哲学まで幅広く扱えるジャンルなので作者の「地」が伺えるというか..。そんな作者の出会い作品は..というとのっけからつまづいてますが覚えておりませぬ。確か一昔前に「ニューウェーブ三人娘」とか言われて岡崎京子・原律子と共に雑誌の表紙を飾ったことがあり、その頃に3者とも読んだことがあったはずなのですが...。作品名が定かでないので挙げられません。えーと、育児ものといえばベストセラーに「笑う出産」(情報センター出版局・現JICC)というエッセイがあります(いわゆる「出来ちゃった婚」のハシリ的作品)。これを書いたまついなつきが金銭感覚をネタに「いつも心に100万円」というエッセイを、そして彼女と共著「おつきあいの極意」(幻冬社)を描いた藤臣柊子、のこれもベストセラー「人生とはなんだ」が載っているのがこの「FY」誌だったりします。漫画と絡めてこれら(活字本)を読み進めるのも一興かと。
次、いきます。漫画家夫婦の日常を描いた私生活風のやまだないと「西荻夫婦」。作者は実写を取り込んで加工した背景描写が独特で、欧風の設定が多いのですが、和風ものの方が私は好きです。初めて作者の作品を読んだのは「COMIC
CUE」誌(イースト・プレス)に載ったものになりますね。特に3号の「愛の教育」という読み切りは、アナーキーなオヤジに調教されていく娘を描き、全編息抜きなしのタイトな内容で読みづらかったのです。(オフザケを手放しでは支持しないけれど、)作者の描く作品にたまに見受けられるコミカルな描写は作中の雰囲気を損ねるものではなく、むしろ重要な句読点となっているような気がします。本作も、淡々と綴られていく話の中でそんな間の抜けた場面がとても効果的にちりばめられています。極上のエッセイという感じ。
4コマにいくと、有間しのぶ「モンキー・パトロール」。性格から何から全く違う3人の女の子の共同生活を描いたもの。毎回、1P目が「3人は仲良し」というネタになっているのは作者自身の確認作業でしょうか。それくらい極端に分けられた人物設定です。面白さはずばりそこにありまして、上品さに著しく欠ける三者三様のしたたかさ、情けなさ、野放図さが逆に妙な現実味を感じさせるのです(例えば前述の「ごめんあそばせ」。主人公のくみこは年中彼氏を欲しがっていますが全然できない。面食いで漫画家という職業柄、彼氏のできにくい環境にある外的要因などあるとして。料理も出来る?し性格も朗らか。特に男性が敬遠する謂れはない訳です。理由はつまり「最終回まで彼氏はつくらせない」という作者の意図であって、ネタにはなっても共感にはならない(その辺、「まんがタイムラブリー」誌の「あしたのアタシ」という作品では、同じく彼氏の出来ない江崎は我がままで打算的な性格が災いして、と明確になっている)のです。その点で言えば本作の主人公の一人、野市はハンパでない親父体質を披露して見事にもてない様を表現しています)。それぞれが「らしさ」を全開(丸出し?)にした力強さを見せている、それが魅力。出会った頃はというと年齢的には「本場じょしこうマニュアル」(「ヤングジャンプ」誌)になりますが、まともに読んでいたのは「まちの愛憎くん」(「まんがくらぶ」誌)。夢見る乙女を過ぎて、外に飛び出していく女性像はこの作品から確立されたと考えています(ただしどうやらこの作品、すでに絶版となっている模様。4コマって・・・)。
対照的に、自分の世界へ入っていく(内向的な)のがショート作品で掲載のこいずみまり「CUT×OUT」。今イチ相愛関係になれない男女を描く連作。男性(特に一匹狼系)の言動に戸惑いながらも身を寄せる女性、という型が続いています。女性のどうしようもなく弱い部分を突き放した感じで描いているのが、作者の描く独特の三白眼のキャラクターに合うのです。といえば初期作の「愛のふじつぼ」(「ビタマン」誌)ですね?。貢ぎ女と最低男の同棲ネタ4コマ。毒系の笑いといえば自滅(自爆)ネタが定番ですが、作者の場合は下ネタと絡み合って好みの分かれる所。掲載誌がエッチ系4コマ(とさわやかに表現)の先駆的雑誌だったので親父ギャグ満載は致し方なし。
最後は後から色々読んでいるけど、これが一番面白いと思う安野モヨコ「ハッピー・マニア」。コンビニにも並ぶ有名作品だから説明は不要ですよね。好きな相手(or好いてくれる相手)に対し行動最優先(思考は最後!)で進みまくる主人公のテンションの高さと物語のスピード感はやはりこの作品から始まってこの作品がベストかと(あんまりいいホメ方ではないが)。「予定された展開」というのがまるで見えてこなくて、新感覚と呼ばれた訳が良く分かります。
一番読んでいる女性誌にして、こんなスタンダードなセレクトになってしまいました(今月はちょっと楽しました)。先に述べた通りほぼ男性誌・4コマ誌からの連鎖読みです。逆に言えばある程度広く男性誌を読んでいれば女性誌も読める、そういう時代になったと言うことが出来る訳ですね(かなり強引?)。