タカハシの目 第27回

(初出:第39号 00.6.20)

前回、買い揃える話を書いてからあちこち回ったところ、結構な量を補完出来ました。完結しているのに途中までしか揃っていないのは友人の不評を買っており(自分は最後を雑誌で読んでるんですけど)、他人の為てな感じですがいい気分です。
以前「復活(続編)ブーム」に難色を示したことがありました。「復刻」じゃないです(これはアレで半分悔しい気持ちもありますが..結局は読める機会が増えているのでまあいいです)。いかに名作と呼ばれているとはいえ、大円団を迎えたはずの物語が再び語られるのはそれがたとえどんな設定のもの(注:「企画モノ」なんかだと復活しやすい。←この手のは逆に伸びないけど)であろうと興醒めである、というのが持論。更には、語られることのなかったその後、あるいは脇役達の物語は、読者であり未来の漫画家である人々にあえて譲り渡す、与えることで才能が世に出るのではないか、と。思って多少苦々しく思っていた訳です。
ところがそうは思っていても自然と手が伸びる。読めばそれはさすが名作の継承、面白い訳です。改めてオリジナル(前作)の良さに気付くとともに何だか「あの頃が一番面白かった..」などとグッド・オールディーズ(自分にとっては80年代)を痛感する次第です。
全てそう思うわけではありません。やんなきゃいいのに..一発当てればそれで食いつなげるんだなあ..なんて思う作品もあるには...(以下具体例省略)。楽しいことは誰もが望みます。だから娯楽主体の作品は普遍的です。苦しいことには目を背けます。だから現実寄りの作品は異端扱いです。フィクションとしてそのバランスをどれだけ独創的に保つことが出来るか。結局、いいなと思うものは確立された独自の世界観でもって語られた物語の続きであり、原典に近い評価を受けた作品のそれになる訳です。これが新しい読者、また古くからの読者共々に新鮮な印象を与えるのです。歴史は繰り返しながら発展していきます。そういう意味で、かつての名作が今の感覚で蘇るのはとても魅力的。受け入れられるのもむべなるかなというのが最近の心情なのです。
マンネリと言われても、コンビニで一番売れるのは「ゴルゴ13」。「こち亀」はともかく、「美味しんぼ」もすでに75巻を数えています。「いつまでも終わらない物語」「永遠に新作が読み続けられる物語」はいつの間にか実在していて(ex.更には「小さな恋の物語」なども)、望まれるからこそ(続編が)生まれてきているようです。
そんな中で、娯楽性を十分に持ちつつも独創的な作品を紹介しましょう(単行本は現在入手容易なものを挙げました)。
永井豪「バイオレンスジャック」(中公文庫、総集編が7月〜小学館My First BIGで)は、壮大な永井ワールドの集大成とも言える作品で、様々な作品がこの「バイオレンスジャック」という新作に絡み合い、最終的に「デビルマン」(中公文庫)の世界に収束されていきます。さて、この「デビルマン(=バイオレンスジャック)」の世界に今新たなエピソードが加えられようとしています。「デビルマンレディー」(モーニングKC)がそれです。もはや時代も設定もあってないような世界が描かれ続けていますが、この作品群の醍醐味は人間を超越した神々の戦いと、それを目撃した人間のドラマにあり、多少の曲折は問題ではないと考えます。「神曲」、そして「魔王ダンテ」etc...この物語を堪能する時、現代に蘇った神話を読むことになりましょう。
寺沢武一「コブラ」(集英社文庫、刊行中)は、アメコミのようなバタ臭い絵柄ながらそこに描かれている世界は驚くほど骨太なファンタジーであり(だからこの絵柄でいいのか)、あまりにも主人公は英雄であります。その空想の具現化に大きく近づくことが出来たのがCGという先進的なツールを駆使した「コブラ2000」(スーパージャンプ連載)なのであります。超美麗な背景と精巧に具現化された世界の中で、コブラはやはり悠然と冒険を続けています。
高橋よしひろ「銀牙〜流れ星銀」(集英社文庫、総集編が6月末〜ホーム社刊で)は、擬人化された動物の話であります。犬という人間にとって非常に親しみやすい彼等のイメージを最大に利用して若者(犬。主人公)は戦いそして友情を育て努力して勝利するわけです。これの息子がかつての銀そのままに大活躍するのが「銀牙伝説ウィード」(日文コミックス)なわけですが..正直なところあまりにも似すぎてかつての物語がひたすら繰り返されている印象です。すでにヤマ場を迎えており、予想通りならそのまま終了..になるのでは、とこれは本音であります。しかし動物を擬人化して描くことにおいて作者は抜群の技量を持っており(ex.「白い戦士ヤマト」)、また最近この手の動物漫画が少ない(「ゴン!」以来ないのではないかと)。そんなわけで何とかスマッシュ・ヒットを、継承者が出て欲しいと、これもまた本音であります(実の所は結構受けているようなのですが..それにしても話が...でもいいんですよ)。
今回珍しく「ジャンプ」系の作品を紹介しました(通なところで言えば「漫画ゴラク」系とも)。
意外と、読んでいたりもします。



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