海賊が、流行りらしい。といってもよく分からないが。
「ジャンプ」、「マガジン」、「チャンピオン」それぞれの週刊少年漫画誌に、海を舞台にした冒険活劇が連載されている。いずれもチラっとだけ読んだのでエラソーに語りたい。
これらは少年が主人公である。好奇心の強い少年はいつしか船に乗る。悪者を倒す為。そして宝物を探しに、大なる浪漫の航海に旅立つのである。
...これってちょっと待って、ゲームの世界じゃない?
RPGの世界なのである。主人公の成長が、ロープレの特徴であるから何にでも言えることなのだが。少年が、様々な出会い、経験を繰り返し成長していく様は、まんまゲームになる。メディアミックス華やかなりし昨今、ゲーム→漫画化、漫画→ゲーム化の流れは当然、ある。ただ、ゲームが大ヒットしたから漫画も大ブレイク、漫画がヒット作だからゲームも大人気..とはすんなりといかないようである。まず購読(売)層がそれぞれ微妙に異なっているから、どちらかのファンをそのまま取り込むことが出来ない。例えば少年層は現在、ゲーム寄り。かたや青年層はある程度分化している。更にはゲームでも漫画でも..という、その作品がどちらでも納得のいく実力を伴っていないから、目論み通りにヒットしないのか?それよりは、両ジャンルの持つシステムの違いがユーザーに満足をもたらしていないように思える。最大の違いは「視点」である。
ゲーム、RPGにおいては物語の視点は概ね「主人公」にある。結論に至るまで、様々な出来事は(強引とも言えるほど)「主人公」の目の前で起こる。ちょっと専門的な話しになるが、これは主人公が能動的にいかないとイベントのフラグが立たないからである。キーパーソンと話しをすると事件が起きる。洞窟の奥の壁に触れると穴が空く..etc..全て主人公が行動を起こして話が展開する。本筋以外の行動をしている間は、物語は進行しない。ゲームにおいては主人公が動いて物語が始まる。それをユーザーが好きに動かせる..のが最大の魅力になる。
漫画においては視点は自在に動かせる。となると「主人公」が自ら事態を引き起こす必要はない。主人公が物語に途中から巻き込まれるなんて筋にも出来るし、彼を取り巻く人間関係、各々の事情も詳しく描くことが出来る。話しは無理なく進行する。漫画においては主人公が導かれて物語が始まる。それをユーザーはよりドラマチックに楽しめる..のが最大の魅力になる。
これを踏まえた上で漫画、ゲームの異化による不整合を挙げてみる。
ゲームを漫画化する。語られづらかった脇役たちのエピソードが描かれ、世界観は膨らむ。その分、主人公の重要性が薄れる(強くなる主人公(自分)が具体的に実感しづらい)。何より、自分で話しを進める自由さが、ない。
漫画をゲーム化する。主人公の行動が全てを引き起こす。ユーザーが好きに動かせ、自由度が増した分、主人公の性格が一定しない。戦いの駆け引きが台詞等に表れなくなる(臨場感の欠如)。何より、展開がスムーズに運ばない。
漫画⇔ゲームはこのように、同じキャラクター、話だとしても魅力は一変する。漫画においては物語が、ゲームにおいては主人公が、それぞれ人気を博す最大のカギとなる。
漫画偏重主義だから、私にとっては当然漫画作品の方が魅力あるものに思える。しかしそれでも実は今後のRPG(風)作品についてはゲーム側に期待が持てる。なぜならゲームの視点の不自由さは、多分にハードのスペック不足によるものだからであって、それは今や余裕でクリア出来るものとなったからである。「ドラクエ」以来のRPGシステム定義は確実に解体され、ゲームは大きな壁を超える。主人公を、ではなく物語を自在に動かせるようになった時、面白さは圧倒的となる。
これに対し(別に競う事はないのだが..)、漫画がより魅力的にこの手の物語を創るにはどうすれば良いか。「ONE
PIECE」(ジャンプ)、「RAVE」(マガジン)、「フルアヘッド・ココ」(チャンピオン)あえてこれら連載中の作品に苦言を呈することにより、私心を述べたい。この3作品、いずれも魅力的なキャラクター、展開ではある。しかし共通する難点に「現実と虚構のバランスの悪さ」がある。冒険漫画は所詮「少年」漫画。この括りはいい。問題は、最近の話は中途半端にリアルさを演出に使う点にあると思われる。悪役が必要以上に悪だったり、善人が必要以上に悩み過ぎる。確かに現実では善悪など判別し難い。これを作品に取り入れることで深みが増す、それは言える。しかし「少年向け」という制約をすでに課している以上、無闇に取り込むと矛盾だらけの歪んだ世界観が出来てしまう。通読するにつけ、その点がどんどん読む気をそいでいく。例えば..権力欲に取り憑かれ、国王をも自らの手で(しかも大衆の面前で!)殺めた大臣が、宿願の姫君を我が手にしながら長期間無垢のまま放置するのは果たして有り得る事なのか?過激とは言わないが、人間のダーク・サイドをある程度までは明示しておきながら建前をして流してしまうのはどうにも合点がいかぬ。決して線引きをしろというのではないが、その辺は青年向けに任せていいと思う。カオスの世界を描いたものは、「ベルセルク」(ヤングアニマル)を紹介するまでもなく青年誌に存在する。少年漫画は、もっと清廉であっていい。ジャンルが違うと思われるかもしれないが、「からくりサーカス」(サンデー)、これもRPGの定義に当てはまる。上記3作品と決定的に違う点は、戦いの図式を単純化することに努めている点だ。内容は決して単純ではない。現実味は「内包」の形でもってかなり取り入れているのだが、前面に押し出してはいない。少年誌に載る冒険漫画が伝えたい事、楽しませたいところはそこではないはずなのだ。
ゲームと漫画の違いを最後にもう一つ挙げておこう。現在のRPGに必ずあるのは「マップ」ではないだろうか?物語を進ませるのと同時に、ユーザーは世界を踏破するというもう一つの楽しみを持っている。主人公が勢い、「世界を救う為」に立ち上がるのは、地図があるからである。漫画はこれを踏襲して大風呂敷を広げる必要はない。想像のはばたく範囲は、漫画の場合もっと別の所に、無限に広がっているはずなのだが・・。
紹介記事にならなくなってしまってゴメンナサイ。