タカハシの目 第24回

(初出:第36号 00.3.20)

このところ、よい出会いに恵まれて、旧作の一気読みの快感を味わっております。
ボロボロの転売不可の代物で、対価は二束三文。読めりゃ、いいんですもう。最近はセット買いにも慣れてきて、コツコツと集める楽しみよりも勢いで揃える方を選んでいますね。古本屋になかなか出回らない桜玉吉の単行本、今月アスキーから愛蔵版で大量に再販される模様。一気に揃えちゃおうかな、なんてプーらしからぬ景気のいい話を夢想しております。さておき。
ここんとこ、求めた旧作とは戦記ものが多いです。「機動戦士ガンダム」にハマったのはお伝えした通り。こちらの方はシャアの行く末が気になって、結局「ゼータ」まで観ました。ついでに「パトレイバー」もおさらい(「エヴァ」はパス(笑))。それも理由になりますが。ちょっとプライベイトでその手の物語を研究したかったので、と、これもうまい説明ではありませんね。
ともかくこの時期、戦記ものです。
元々、ミリタリー物というジャンルは読者層が限られており(文体変更)、かつマニアックを指向しやすいことから掲載誌は限られているように思う。戦争というものが(まだ)身近であった昭和の頃は、各漫画誌で見かけられたが近年ではほとんど見かけない。もちろんそれを専門とする漫画誌が、細分化された時代であるから当然、あって、そこでは史実に基づいた「if」の状況をシュミレートしており、事情通には大いに楽しめる内容となっている。しかしまあ、多数の支持を集めるには至っていない。
転じて一般誌を眺めて見るとどうか。戦いを描いた作品はあるが、メカ物〜SF色の強いものが多い。これは少年漫画誌に多くみられ、安定した人気を保っており、中には玄人(?)でも充分鑑賞に耐えうる作品もある。しかし現代あるいは近過去の現実的な戦争を描いたものは今、ない。かつて。少年誌には必ずこの手の実録風戦記物が載せられていた。しかしこの、戦争の悲惨さ、命の尊さを説くような熱い男達のドラマは、軍隊的な規律に縛られた設定ではリアルにすればするほど娯楽性に欠ける。代わりに台頭してきたのが、「傭兵」という存在だ。
傭兵とは本来、雇われた戦争屋...(勉強中)。現実の持つキナくささを排除し、そこに「正義」の思想を取り込むと..完成された、絶対的な強さを持つ個人(=主人公)というある種現代の英雄足りえるキャラクターが創造される。彼(ら)は常に死と隣り合せの状況にある。男としての悲哀(ロマン)がここに、ある。この手の作品が娯楽作にとどまっているのは、政治色が希薄だからである。メッセージは我々の足元までも届かない。「平和ボケ」、傍から眺める「戦争(=ウォー・ゲーム)」は、非日常の世界を一時与えてくれるのみである。
小学館の漫画誌は、松本零士を始めとして割合多くの「戦記もの」を掲載してきた(上記の流れはこれに寄る)。懐かしの「少年ビック」新谷かおる「エリア88」、「サンデー」藤原芳秀「ジーザス」、北崎拓「望郷戦士」etc...。男は戦うべきである。でも一体、何に向かって..?せめて戦士の末裔として誇りだけは失いたくはない。
今月号の「ダヴィンチ」誌の特集によると、M男がモテる時代らしいです(文体変更)。かの宮台氏によれば、イマドキ戦争ものに興味を持つ奴など「時代遅れ」もはなはだしい、そう。
...マズイかなあ?俺。



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