タカハシの目 第8回

(初出:第15号 98.6.20)


少女漫画の話をする。あんまり知識の無い上に、多少の抵抗感のあるのは相変わらずながら、読む作品は確実に増えているのが事実。ただしふつーの本屋では買わないから、必然読むペースは遅い。そんな状態ではあるが、今回は少女漫画の復権についてお話しする。

少女漫画というと「恋愛物語」がポピュラーであることは間違い無かろう。恋愛ものといえば必然、舞台は学校ということになると思う。ところがもはやこのパターンは出尽くされているといった感がある。だからという訳ではなかろうが最近の作品は、恋愛を主題としつつもプラスアルファに結構重きを置いているものが多い(と、思われる。以下略)。例えば友情、例えば笑い。恋愛ものに友情をもう一つのテーマとして持ち込んだものといえば、やまざき貴子「っポイ!」(注1)が最近のものとしては挙げられる。恋も友情もという、人間関係の複雑になっていく多感な年頃を上手く捉えている上に、それが直接恋愛に関わったものだけではない(注2)というのが新鮮だ。もう一つ挙げておこう。山田南平「久美子&真吾シリーズ」(注3)。小学生と高校生の恋愛物語から始まったこの連作は、途中から登場人物達の成長物語という新たなテーマを内包していく。彼等は次第に様々な価値観を形成していき、それに伴う戸惑いや衝突がメインの話もある。作者の性格によるものだと考えているが(注4)、作品全体に教唆が多分に含まれており、読者を直接刺激する。こういった型は新しく、興味深い。

もう一つの例を具体的に挙げよう。恋愛プラス笑いという物語で新しい型といえば桑田乃梨子の一連の作品(注5)。会話で読ませる作者である。メインのセリフ(フキダシの中)の他に周りのギャラリーがそれぞれ勝手なことを言い合っている。ちらと目を走らせるだけでも面白い。また作品中の恋愛像も明るく、軽く、「幸せなもんは幸せなんだ」という姿勢で統一されている(注6)。こんな少女漫画は新しい。(注7)かつて少女漫画は、その独特の世界観と表現で高く評価され、また支持されてきた。やがて漫画全体のボーダレス化が進み、少女漫画もまた、その特色を失いつつあった。しかしそれは、発展の過程であったのかも知れない。少女漫画は再び独特の魅力を持つに至っている。

 

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