少女漫画というと「恋愛物語」がポピュラーであることは間違い無かろう。恋愛ものといえば必然、舞台は学校ということになると思う。ところがもはやこのパターンは出尽くされているといった感がある。だからという訳ではなかろうが最近の作品は、恋愛を主題としつつもプラスアルファに結構重きを置いているものが多い(と、思われる。以下略)。例えば友情、例えば笑い。恋愛ものに友情をもう一つのテーマとして持ち込んだものといえば、やまざき貴子「っポイ!」(注1)が最近のものとしては挙げられる。恋も友情もという、人間関係の複雑になっていく多感な年頃を上手く捉えている上に、それが直接恋愛に関わったものだけではない(注2)というのが新鮮だ。もう一つ挙げておこう。山田南平「久美子&真吾シリーズ」(注3)。小学生と高校生の恋愛物語から始まったこの連作は、途中から登場人物達の成長物語という新たなテーマを内包していく。彼等は次第に様々な価値観を形成していき、それに伴う戸惑いや衝突がメインの話もある。作者の性格によるものだと考えているが(注4)、作品全体に教唆が多分に含まれており、読者を直接刺激する。こういった型は新しく、興味深い。
もう一つの例を具体的に挙げよう。恋愛プラス笑いという物語で新しい型といえば桑田乃梨子の一連の作品(注5)。会話で読ませる作者である。メインのセリフ(フキダシの中)の他に周りのギャラリーがそれぞれ勝手なことを言い合っている。ちらと目を走らせるだけでも面白い。また作品中の恋愛像も明るく、軽く、「幸せなもんは幸せなんだ」という姿勢で統一されている(注6)。こんな少女漫画は新しい。(注7)かつて少女漫画は、その独特の世界観と表現で高く評価され、また支持されてきた。やがて漫画全体のボーダレス化が進み、少女漫画もまた、その特色を失いつつあった。しかしそれは、発展の過程であったのかも知れない。少女漫画は再び独特の魅力を持つに至っている。
(注1) 白泉社花とゆめコミックス〜13巻。「LaLa」誌連載中。
(注2) 例えば第14話「神様ヘルプ」単行本5巻収録。
(注3) 収録単行本は白泉社花とゆめコミックス「130センチのダンディ」「ドッジボールをしよう」「未来予想図」「STEP UP」「パリで一緒に」各全1巻。「オトナになる方法」全10巻。
(注4) 単行本の書き下ろしスペースはほとんどコラム。はっきりとした口調が作品にも現れている。
(注5) おすすめは「人生は薔薇色だ」「ほとんど以上絶対未満」各全1巻、「月刊一年二組」全2巻いずれも白泉社花とゆめコミックス。しかし今回は見事に片寄った紹介作品だ。
(注6) といってもマンネリではない。念の為。
(注7) 以下特に男性読者の視点で読んでください。