折にふれ、よみかえす本が私にはある。例えば冬は、わたしにとって「思索」の季節である(単にトーヒともいう)。枕元には次の作品が並ぶ。前川つかさの「大東京ビンボー生活マニュアル」(注1)。金はない。金はないけどユトリはある。時間(ヒマ)をもてあますのではなく、時間(ヒマ)を歓迎するビンボーライフ。フラフラしながらも地域住民にシロイ目で見られないためのノウハウが、ここにはつまっている。もちろん今でも通用するテクである。しかし、実践するには相当の努力を必要とする。ビンボーにも道があるのだ。ハンパ者の私は憧れつつも極められない。年頭に読み返すことで、今年こそ!と胸を熱くするのみである。もう一つ挙げるとすると、
森下裕美「荒野のペンギン」(注2)である。今や4コマ作家としても相当な腕をもつ作者である。さえない中年サラリーマンを主人公とするこの作品は、やさしさとはどんな状況にも必要なものなんだなぁということを教えてくれる。年の功とは若さをアザ笑うことじゃない。私が読み返す話というのはこの作品のいわば番外編というべきもので、一応完結編と銘打ってあるもの(注3)。この話でオジさんはイイ人と巡り会うわけですが、結果は...。読んでのお楽しみ。第一話以来となる、題名に関わったセリフで感涙。
ところで、冬といえば少々気の早い話になるが「卒業」シーズンである。故あって、今年多くの友人の社会人デビューを見送る立場となるワタシ。自分の卒業以上に感慨がある。おそらくそのころに読み返すであろう作品は、ゆうきまさみ「究極超人あ〜る」(注4)。前号とは違う形で再度とりあげたい。この作品の舞台は、学校そのものというより課外活動、つまり部活動である。休み毎の合宿、文化祭にコンパと果てしなく繰り返される大騒ぎ。卒業してもOBとして半永久的に参加がゆるされるのは、大学のサークルに近い(作品は高校生の話)。特に意識した覚えはないが、自分が目指していた学生生活とはまさにこの世界だったんじゃないか、と最近思う。ま、実際は同学年の連中とだけ楽しく騒いで、上も下もあんまりつきあわなかったけど。え〜、コホン。自分の恥をさらす場所ではないんで。失礼。
冬がすぎれば当然春である。最後に紹介するのは、この春から新しく読み返すであろう作品だ。現在も連載中の芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」(注5)。時がゆったりと流れる終末の世界。人は、この時がくるとこんなにも穏やかになれるのだろうか?人とロボットの共生、人と自然の関係を見つめる話ながら、全体を流れるこののんびりとした雰囲気が大好きな作品。陽の当たる静かな喫茶店『アルファ』で真心のこもったコーヒーを楽しみたいものだ、と、春をまつ極寒のこの部屋でワタシは思うのである。(ココロの叫びでもある)