本誌のメイン記事として、何を一番伝えたいかといえば、皆様に漫画を読んでもらいたいということであります。そこで、今号からは私の最近読んだ作品を中心として、とにかく数多くの作品を紹介する記事を巻頭に置くことにしました。作品毎に拙筆にてその素晴らしさを半端に伝えるより、まずは読んで味わってもらうと。願わくは、より多くの作品と御縁がありますように。
少女漫画史において「24年組」と称されている漫画家の1人、
大島弓子
。最近、短篇集(注1) を揃える機会があったので、ようやっとまともに読むことが出来た。少女漫画は読み慣れていないので、こう書くのは自信がない。しかし、この一連の短編作品を読む限り、少女マンガとは恐ろしく濃いものだと感じた。 夢のような独特な世界の中で物語は進行する。最後に、その夢は見事に壊される。ドラえもんの「夢オチ」
(注2)を見たような衝撃、しかし不快感は特に無い。深く考えさせられる何かが残るだけだ。う〜ん。
さて、「ダイエット」
(注1) 以降の単行本には、作者の愛猫「サバ」を描いた、いわゆる身辺雑記が収録されている。短篇集には、尺合わせもあってか作者本人の登場する「おまけ」がついているものが多い。
自身
による作品解説、あるいは「楽屋オチ」のような近況報告。対して、一つの作品として読めるような随筆風のもの。
今挙げた「サバ」シリーズは後者である。単純な意味で前者と後者の違いを比較してみると、後者の方には多少のフィクションが入っている。従って作品中において猫の「サバ」は時にしゃべる。しかし、サバと作者は意思の疎通が出来ているとは設定されていない。あくまで作者の想像を虚構することで、単なる猫観察日記でもなく、ファンに対する情報サービスでもない一つの「作品」として読めるのではないか。
作者の世界観(大げさ?)を直に伝えるものとして、少々抵抗があるかも知れないが、私は評価したい。ネコと作者を描いた作品としては、この他に、 須藤 真澄「ゆずとまま」、寺島 令子「ただすけ日記」
をお推めしておこう。(注3)
男性漫画家もみていこう。同型の作品もあるが、どちらかといえば情報伝達を主眼とするものが多い(注4)つまり、漫画(界)を知っていればそれだけ興味が増す訳で。先に挙げた前者の、「近況報告」に属するものと言えるだろう。読み手を限定しているのでは、と敬遠しがちだが、まとめて収録してある単行本ならたい
して読みづらいものではない。ただ、確かに作者に対する認識の度合によって、得るものは左右されるようだ。
それでは最後に、作者をしらなくても充分に楽しめる「近況報告的コラム」を挙げておこう。
西村 しのぶ「神戸・元町下山手ドレス」、坂田 靖子「たぷたぷ・だいあり」、深谷 かほる「レッツ!およめさん!」
(注5)いずれも単行本は未刊行ながら、今月号からでも読み込める「作品」である。ではまた次号。(文中敬称略)
(注1)「秋旧子かく語りき」「つるばらつるばら」「ダイエット」「毎日が夏休み」「すばらしき昼食」「大きな耳と長いしっぽ」全て角川書店あすかコミックス。
(注2)「ドラえもん」の最終話において、実は全てが植物人間ののび太が見た夢だったと明かされるという噂。
(注3)「ゆずとまま」竹書房バンブーコミックス。「ただすけ日記」竹書房バンブーコミックス。
(注4)本誌第2号にて御紹介した3作品はいずれもこれに該当する。
(注5)「神戸・元町下山手ドレス」
角川書店月刊ニュータイプ連載。「たぷたぷ・だいあり」、竹書房月刊まんがくらぶ連載。 「レッツ!およめさん!」 竹書房月刊まんがライフオリジナル連載。