特集 第3回
(初出:第3号 96.11.24)
我が愛する非日常.
私の考えるギャンブルとは、究極的に自分自身との闘いです。金銭的問題をはるかに超えた、己自身のこの世に「在る」を賭けた尊高な勝負が理想であります。しかし、凡人である私にそのような真似は出来るはずもなく、勝った負けたと日々大騒ぎしながらこの非日常の世界を楽しんでいるのです。
勝負を人生に組み込んでいる、いわゆるギャンブラーを、私は遠くからあこがれています。その世界をのぞかせてくれるのが、今回紹介する作品なのです。
福本 伸行「カイジ」(講談社)
勝負には最終的な結論が下がるまでに様々な過程が存在する。作者はそこにいくつかのヤマ場を設け、その1つ1つを丹念に描写している。全てのギャンブルに必要とされる、的確な読みと判断、そして自分自身の運を、主人公がぎりぎりの線でつかんでゆく様は見事である。「ヤングマガジン」誌に現在でも連載中だが、週刊ペースで読むのは少々興をそがれる。完結を待って一気に読むことをお推めする。
谷村 ひとし「ハイエナ」(スコラ)
ギャンブラーには凝り性が多い。そしてここに、「パチンコ」にはまった人がいる。作者の実体験を基に、主人公"ハイエナ"が生まれた。超人的な技で連戦連勝−そんなパチンコ漫画ではない。地道に集めたデ−タ、そして台に対する愛情にも似た観察。それらが理論値や確率、そして運にも頼ることのない独自の攻略法(=主人公)を生んだのである!
作者は「オカルト攻略法」といっているが、隣のオヤジが口にする噂とは格が違う。「パチプロ7」誌に現在も連載中、同時期に始まったコラム「パチンコ ドンキホ−テ」(「モ−ニング」連載中、単行本化間近)と共に今や時の人である作者。 人対機械という特異な形式のギャンブルの真理をこの人から学ぶことができる。
西原 理恵子「まあじゃん ほうろうき」(竹書房)
ギャンブルは時として多額のリスクを背負う。大敗して半ベソで帰ったとき、この作品を読むと、、、よかった、西原がまだ(はるか)下にいる。女性の描くギャンブル漫画をあちこちで見るようになった今でも、史上最悪の冠は彼女にある。主人公(=作者)の負け額はそれほどにハンパではない。なのに彼女はさらに熱くハマる。そこに、私は共感と教訓を覚えるのである。彼女のギャンブルに対するとり組み方、そして周りの環境は、阿佐田 哲也の小説にひけをとらない。彼女のバリバリの鉄火場は、「パチンコ必勝ガイド ル−キ−ズ」誌にて今も見ることができる。
田中 誠「ギャンブル レ−サ−」(講談社)
ギャンブル好きは、本当に好き者である。やればやるほどのめり込み、のめり込むほどハマっていく。損得勘定に終止すれば、公営ギャンブルはやるだけ無駄なものだ言われる。
しかし、わかっていながらそれでも何かを求め愛好するひとに、私は「同類!」を感じてしまうのである。さてここに、バクチ好きで競輪選手の主人公がいる。他人に厳しく自分に甘い、働きたくない儲けたいという典型的なバクチ打ち。その言動に、笑いを抑えることは出来ない。では競輪の方はどのように描かれているか。、、、読めば納得であろう。競輪好きもそうでない人も、ギャンブル好きなら同等に楽しめると約束できる。
次回は、「少女マンガ」をちょっとね、紹介してみたい。
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