タイ旅行記シリーズ 第5回

(初出:第10号 97.10.13)

象さんでRV!?

朝、6人が朝食を取るために集合する。ホテルのモーニングはチェンマイもバンコクもメニューも形式も同じである。
「ぶちすっげー食うね」
「おれ、ぐちゃぐちゃの卵好きなの」
ぶちはバイキングに弱いのである。ジャイが言うには仙台人は『タダ』とか『〜し放題』にとても弱いらしい。
「きっとチェンマイおとなしい観光かなぁ」
「あぁ〜、これでプーケットが雨な訳だろー」
現在のタイの季節は雨期にあたる。台風が数多く発生し、津波なども多い時期である。タイは勿論年中夏なのだが、一番暑いのが3月の乾季、パッポンズが旅行したのが8月〜9月にかけての雨期真っ盛りの時期であった。プーケットでのマリンジェットをメイン目的としていたぶちとジャイは雨ばかりを心配している。そういえば、バンコクではタゴサク(本名タノンサック)に新聞のプーケット大津波大洪水記事を見せられながらこう言われていたのだ。
「プーケットはイマは全然泳げないです、ザァンネンねぇ・・」
 

「キョウハ、ゾウサンにノリマスガァ、とても高価ですぅ。ゾウサンはかみにつかえていて、王さまにもつかえている、シンセイなどうぶつーなので、このツアーではー、コースに含まれているので、よかったです」
タナットの(タゴサクに比べて)不慣れな日本語の解説を寝ぼけた頭で聞いているのだが。つまり今日のメインイベントは象に乗ることなのである。チェンマイの観光コースはチョウ園→エレファント・キャンプ→ヘビ→どっかの寺→モン族の村といったところ。パッポンズはチェンマイにあまりアクティブな雰囲気を期待していなかったのだが・・・。
「象、象、、ほら、あれ」
「むっちゃ多いじゃん。全部象ださぁ」
場面はチョウ園を飛ばして(ちなみにチョウ園は驚く程でっかい蝶が沢山いたのだが、羽が開いていて殆ど蛾に見えた)、エレファント・キャンプである。ここは普通に山の中の川沿いにある村、その中を象が人を乗っけて、ずいずい歩いているのだ。その数にまず驚かされる。まず、村の入り口でおばちゃん達のバナナ買えだの、サトウキビ買えだのの攻撃に会うので油断していたが、ここは面白い。かなりアクティブタイランドしているのだ。観光客も欧米人、日本人を中心に多い。奥の広場では定刻になると象のサーカスが開かれるのだが、予想を上回る象の数、繰り出す芸の質の高さ。まるで、象の組体操を見ているようだ。大迫力の象サッカーも見れる。
「すっげー!、後ろ足でも蹴ってる」
各々の象にはドライバー(象使い)が一人ずつ乗り、耳の後ろを爪先でつついて操縦している。関係ないのだが、犬も多い。
「ゾウサンと写真♪」
そういえば、ドリちゃんの第二目的は象のトレッキングであった。二人ずつ背中に乗り込み山林散歩に出かけるパッポンズとギャルズ達。ベンチのような座席がついていて、像の頭には象使いがのって操縦してくれる。
「ぎぃ、めっっちゃ高いってっっ」
「うお、おお、おお、う」
ぶちとデレは最後に二人で乗り込むのだが、どうも座席が他の象より前にある。もしや紐がゆるんでいるのか、とにかくはっきりいって最初は怖いのだ。でもかなり興奮する面白さである。雨あがりの泥沼のような獣道を象は滑りながら登り降りするのだ。かなりの傾斜でもずりずりと進んでいく象さん達。以外にスピードもある。
「ジャイのRAV4もかなわないって」
川渡りもしてくれるさん。最後にはもう慣れてしまって、ガラなどはゆったりしっぽり王族気分を満喫している。
「ああ、象さんー、ばいばーい」
興奮冷めぬままメンバーは蛇園なる場所へ移動。蛇園も蛇のサーカスのようなもので、蛇使いと蛇の格闘を見世物としている。ここではニシキヘビを首に巻つけたドリちゃんが一枚写真を撮る。当り前だがここではトレッキングは出来ない。キングコブラの鱗の感触はすべすべ肌で気持ちいいというのは全員の意見だった。
 

昼食は昨日タナットに夕食用として紹介してもらった店と同じだった。
『ピンハネ疑われるぞタナット』
と何人思ったかは別として、ここでの料理は9人いても半分余るくらい出てくる、出てくる。ナンプラーというタイ醤油をかけたピラフは美味しいのだが、タイ料理は全体的に不可解な味付けである。辛くて甘くて酸っぱいので、しょっぱいが好きな東北人には相性が悪いのだろうか。それから、ぶちの頼んだスイカジュースはちょっと評判の味で、西瓜の嫌いなサダモンも美味しく飲める。お父さんお母さんもにっこりであろう。タナットは食事中一生懸命辛口ジョークで話しかけてくれるのだが、これはまぁ、書くのはいいか。
 

食事後メンバーは山へと車で移動し、どっかの寺に行く。どうも仏舎利などがある超有名なところらしいけどね。初めてここで南国の醍醐味『スコール』を体験する。それが、妙にハイテンションを呼び神聖な敷地内で記念撮影をしまくるパッポンズ。しかし!タナットはそのお陰で知らない現地人にどっか連れ去られてしまうのだった。
「やべ、説教でもされているのかなぁ」
「かわいそうに」
次に行っくのはモン族の村。山岳民族であるらしい。彼等も商売上手なので山岳民族と言われても困るのだが。トラノフグリなどは売っていた。
「まんだら欲しいね」
「じいちゃんにお土産しよ」
どうもゆっことガラはまんだらに興味を示したらしい。他のメンツも象牙などをしげしげと見ている。
「これ、プレゼント、フォウ、ミー!」
なんとぶちは金具の壊れた小さな象の形をした象牙のペンダント!(やや高価)をタダで貰おうとしている。若い女の店員さんも15分くらいは粘って値下げすると言っていたのだが、結局タダで貰ってしまうぶちであった。
 

ホテルに到着。夜のチェンマイの露店に行く前には少々時間がある。
「タナット、ビリヤードしようよ」
「ワタシ、カチマスヨ」
ぶちとタナットはホテルのビリヤードをすることになる。他のメンツはおねむらしい。誰〜もついてこない。ちなみに上の台詞(勝利宣言)はわざわざギャルズに向かって行われた。スヌーカのルールをタナットに教わるのだが、ルールはやりながら教わる。
「アア、ソレするとダメでぇーす」
「えええ〜、そんなの先に言ってよー」
「ダメでーす、モウ、ワタシ23点でーす」
無茶苦茶小賢しいタナットである。こんな奴に負けてしまうぶちであった。
「私、カノジョタチの中でしましまの女の子スキです、オウエンして」
「え、つーとサダモンかあっちゃん?もー、やるじゃんタナットー♪♪」
なんと、客の女の子を狙っていることを同じ客のぶちにしゃべり出すタナット。しっかし面白いので適当に応援してしまうぶちである。結局ビリヤード夢中になり集合に遅れてしまう添乗員と客一名であった。
 

露店でのジャイの装飾品買い漁りはすごいものがある。両の腕には10個を超えるくらいの腕輪を付けて、チャイナなグラサンをつけている。何人だかさっぱりわからないぞ。チェンマイの露店巡りを済ませると、一行はチェンマイ料理を食いに出かける。ここでの食事はモチ米を素手で丸めてカレーをつけて食うもの。これは旨い。ぶちの隣と正面はあっちゃんと、まゆみちゃんだったのだが、どうも二人とも食事中身をくねくねさせていて、気が散る。絶対に変!である。
「何してんだっ?」
「足で、なんか、ひっぱられるのっ」
つまりテーブルの下では斜め前に座ったタナットが足で女の子の足を触り放題であったのである。タイの添乗員とはかくあるべきらしい。
「もちごめうめえっっっ」
ガラとジャイはバリバリもち米だけオカワリしている。いや、確かにもち米は旨いね。
「タナットと今晩飲みたいヒトがイタラ、ホテルででもー、ノミマショウ、デモー、ミナサンハー、タナットトォ、ノミタクないみたいなので、えー、カエリマスね」
酔っ払って何をいいだすのかタナット。しかし誰一人としてタナットを誘ってあげないパッポンズ(とギャルズ)。聞いても爆笑するだけである。夜は昨夜と同様ホテルのバーでビリヤードをしたのだが、今回はギャルズも一緒になり大所帯で打つ。負けたらぐりぐり飲むのだ。9人入り乱れて2台でやるビリヤードであった。しかも、好きな時にテーブルについて飲める。これぞ大人のスポーツである。しばらくして皆気持ち良くなった頃に、突然タナット出現!!本当にびっくりしたが、まずぶちがビリヤードで相手する。
「コンなのハズしたらコッドモヨー♪」
「ウッサイ、タナット!」
酔って真直ぐ打てないので、だんだんタナットへの言葉使いが荒くなるぶち。それに比べてドリちゃんは初めてなのに上手である。タナットを逆転で打ち負かしたのだ。心の中で大拍手するぶちであった。
「あ、タナット消えたじゃん」
「あいつ、飲み代とビリヤード代払わないで帰りやがった!」
まぁ、相変わらず値切って安くしたからね。バーテンさんも破格のチップに嬉しそう。うん、今日も遊んだ。ベットに入ると眠りにつくまでとても早いパッポンズであった。

(つづく)

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