タイ旅行記シリーズ 第4回

(初出:第10号 97.10.13)

グッバイ、ハロー。

『ルルル、ルルル、、、ガチャ』
「・・・」
モーニングコールだと思って無言で受話器を取るジャイ。昨日はオペレータだと思って出たらテープの声だったのだ。寝ぼけてても二度は失敗しないのである。
「オハヨウございます、タゴサクです」
・・・?
「うそ、、グッモーニンッ」
「皆さん下で待ってますよ」
「げ・・」
その2分後、2つ隣の部屋でぶちも同じすちゃらかをすることになる。
「タゴサクです。おはようゴザイマス、下でもう待ってますヨ」
「んー・・ん?、、えぇー、ごめんなさーい、直ぐに行きます〜。」
哀れである。解説するとパッポンズは全員モーニングコールを頼み忘れていて、集合時間にホテルに到着したガイドに起こされたのだ。既にバスの中で待っているOLさん二人。でもって、ロビーでびっくりしているギャルズ(女子大生三人のチーム名はこう決定した)。勿論出発は大きく遅れてしまうことになる。
「バスの二人に謝ってこなきゃ」
「いや、二人には集合時間が変更されたと言ってアリマス。」
タゴサクかなり気が利く。どうやら、彼はちょっとナメた雰囲気のOLの二人にはとても気を使っていたのである。というか、それを考えられる立場にはいないパッポンズだろうに。
「はっは〜ん」
察したように笑うぶちとジャイ。重ねていうとそんな暇は全くもってない。皆様の計らいでパッポンズは急いで朝食を取る時間を与えられ、いざ観光へ出発。
 

今日のコースは『水上マーケット→暁の寺院→エメラルド寺院と昔の王宮→射撃場→昼食→空港→チェンマイ』である。水上マーケットってのは名前がおとなしいが、実際に行くと驚くことにこちらの船に商船が体当りしてくる変なマーケットである。
「たっけぇ、いらんぞ」
水上マーケットのおばちゃん連中はあまり値切ってくれないのでさっさとクリアする。その後同じ商品を何個か見つけたが、10分の1位の価格で売っていたのである。パッポンズのタイ感覚をナメてはいけない。そしてそのまま運河をクルージングするのだが、風が気持ち良い。川も広くて両側は1.5メートル位の壁になっている。至るところに船つき場がありいっぱしの交通手段であることを示す。
「どりあん食べる?」
「うぇ、これおれ嫌い〜」
「こっちのライチにかび生えたみたいなは美味しいよ」
「タイってパイナップル以外の果物まじーんだもん」
ギャルズから果実をわけてもらい、さらに文句をたれるぶち。
「あれが、暁の寺院ですが、イマは工事中デス」
どうやら、有名なお寺は今回行けないらしい。いいけどね。そうこうしてる内にエメラルド寺院/王宮に到着する。ここはあまりラフな格好では入れないのでサンダルしかもっていないデレが入り口で靴を借りることになった。といっても、スリッパとブーツの合いの子の様な見事に変な靴である。お堂では日本人観光ツアー大型団体客が修学旅行さながらにお祈りの説明をうけている。そこに勝手に混ざり、熱心に耳を傾けるデレとぶち。
「こら、なにやってんだっ」
ジャイにひっぱたかれる二人であった。
 

ゆっこがタゴサクの名刺を貰ったのをきっかけに、我も我もと名刺を貰う。この時に初めて分かったのだがタゴサクはThanongsakで正しい読み方ではタノンサクだったのだ!ショックである。全員が本気で間違っていたとは。まぁ、きっと本人も受けるのでいっつも気にしないのだろう。ちょっと彼の事を描写すると、ひょうきん族のなべちゃんを縦につぶしたスケベで親切で素敵なオヤジかな、いや、めざましテレビの男の人に近いかも。さて、最後の射撃場。ギャルズは35口径、パッポンズは45口径を選ぶ。店に入り他の客が撃つところを見るだけでドキドキものである。一番手にぶちが撃つことになり、調子に乗って45口径のコルトを耳栓なしでぶっぱなす。音の衝撃!
「・・・・・・・」(すっっっげ、おもしれーー)
あまりの音に心の中でしか喋れないぶちであった。
 

空港に到着。どうも感慨深げなパッポンズである。
「楽しかったね、タイ」
・・・まだタイ行程は半分も来ていない。
「あー、面白かったぁぁ、ぱっぽーん。」
仕方の無いことに皆、バンコクのアクティブに当てられたというか、満喫しきっている。特にデレとドリちゃんは燃え尽きたような表情。タゴサクとお涙頂戴の記念撮影をし、ジェットに乗り込むパッポンズとギャルズ達。タイはまだ2泊しかしていない。残り5泊もあるのだ。立ち上がれパッポンズ!である。
 

チェンマイ空港で若いガイド、タナットに出会う。宜しくタナット。チェンマイの街の風景は今までと一転して横長の世界である。建築物は低めで割と住みやすそうな所だ。チェンマイはタイでは京都くらいにあたる街で、とても歴史があるらしい。
「京都っていうには、ちょっとバンコクとの差が激しいなぁ」
「まぁ、田舎っぽいねぇ。」
タナットとギャルズとで夜の食事。ちなみにOLさんは実は同会社の別ツアーだったらしく、観光地で遭遇する以外は別行動なのだ。まぁ、いい。ここでタナットも打ち解けてきたので、嘘とも本気ともとれない日本語辛口ジョークを連発する。
「私、男はキライヨ」
「オゥ、さわると病気ウツル」
やや受けのやや寒である。いや、外国人だからそこが面白いとも言えるが。
「タナットー、歓楽街へ行くから通りの名前をメモしてよ」
ぶちが得意気に『タイのしおり』と書いたメモ帳を取り出し、通りの名前をメモ。トゥクトゥク(こっちは四輪が主で運転もおとなしい)を捕まえる。さっそく本領の夜遊びに出かけるパッポンズだったのだが。
「田舎ーー」
「なんもねーじゃん」
「CD屋あるよ」
ここでの収穫はデレの買った本物のアーミーのTシャツが35バーツというところか。屋台はあるが、満腹で食えないのを惜しむジャイとぶち。
「カラオケ行ってもなぁ」
タナットに聞いたから半信半疑だが、タイのカラオケというのは風俗店のことで女の子がついて、二階はホテルなのだとか。
「ホテル帰ってバーで飲もー」
「ビリヤードあったもんねぇ」
やや肩を重くしホテルに帰るパッポンズだったが、ホテルのプールバーでは流石に爆発したように騒ぎまくる。
「貸し切りじゃんっ」
「なぁー、ちょっと構え方おしえろよー」
しっかし、タイのビリヤード台はでっかい。主流はスヌーカなのだが、ナンバーボールも置いてあり、簡略ポーカープールをコインでやる。台がでかいので9ボールはあまりやらないらしい。ついでに構え方も両足をそろえてなんか変。ブリッチキューも普通サイズとビックサイズ(まじでビック)の2タイプ置いてあることから台の大きさが想像できるだろうか。ドリちゃんなんてショット中に写真とか取ってるし、果実系カクテルは旨いし。
「おー、メコン、プリーズッ」
ぶちなどは何度もメコン(タイウイスキー)のソーダ割、レモン入を頼んでいる。どうもこっちでの一つ覚えらしい。ところで飲みまくって、チャージ料もゲーム料もあるし、支払はかなり行く筈なのだが。
「どうやって、まけさせる?」
などとホテルのバー相手に値切る気でいるパッポンズ。
「とりあえず、トータルで聞いて、チップを多めにして」
さんざん相談し、支払を頼むとなんと一人400バーツ以下である。
「いえす!」
「おー、チップ、ツー、ユウ!!」
無茶苦茶である。店員と悪〜い表情(代官と越前屋)を交し、げらげら笑いながら立ち去るパッポンズであった。

(つづく)

「過去の原稿が読みたい」ページへ戻る

 第5回を読む