マスブチのハッとしてグー 第21回

(初出:第22号 99.1.20)

コンナユメヲミタ

RRR..RRR..ガチャ。
「もしもしぃ?」「おぉ、おれだけど」
電話は高橋編集長だった。共通の知人Tが仕事の取引先に「ドリームキャスト」を持っていきたいので、是非手に入れろと言うのだ。12月11日現在、都内では売り切れ状態なので、仙台に住んでいる僕なら何とかなると思ったのだろう。
「うん、まぁ大丈夫だろう。明日にでも探すよ」
「助かるよ、原稿料(編注:?)アップするからさ♪」
「見つかり次第Tに電話して確認取ってから買うさ」

12月12日、仙台駅裏の「ヨドバシカメラ」に行く。幸い僕の会社は「ヨドバシ」から徒歩10分の所にあるので、そんなに大変な頼まれ事ではないのだ。
「それよりも3万円のドリームキャストを買えば、今ならポイントカードが13%分の還元になるから、4000円くらい得するし、あとあとTから酒でも奢ってもらうか。」
甘いことを考えながら店内を歩く。最近は「さくらや」、「LAOX」なども仙台に進出してきた。早くから進出していた「ヨドバシ」はそれらの店のオープンセールに対抗して13%還元を断行しているのだ。「LAOX」にしても新規の客には500ポイント分のカードを配布している。身分証明などは不要なので、一人でいくつでもカードが作れてしまうのだ(詐欺)。これらの店は果たして採算は取れるのだろうか?そこまで考えて「ヨドバシ」のゲームコーナーに到着。2列に積んであるドリームキャストを発見し横目で値段や品数を確認しながら携帯電話でTの留守伝と高橋編集長に連絡を取った。
「増淵です。どうもー。例のもの、10個程在庫確認しました。Tは留守伝だったけど、早めに返事くれって言っておいて。こっちはすぐに買えるから。」
まぁ10個もあれば大丈夫だろう。僕は「LAOX」に行って携帯電話などを悠々と眺めることにした。「LAOX」は明日の13日までオープンセールなので、ドコモのP206G(東北限定モデル)が6000円を少し超える値段で買えるのだ。こいつは一ヵ月前まで2万8000円だったのだが、P207の出現で値崩れした。ドコモの携帯だったら破格値だろう。今晩悩んで、明日に買おう!

その後Tから改めて購入の依頼があったのは「ヨドバシ」の閉店9時を随分すぎた10時頃だった。

12月13日「LAOX」のオープンセール最終日。会社を終えると、原付で「ヨドバシ」まで行く。もう夜の7時になっていて、駅裏はすごい交通渋滞である。「LAOX」のオープンのせいだ。周りでは契約駐車場が増え、車、車、車。駐車場なんか作らないで、食い物やでも作って、電車とかで来てもらったほうが客数も増えるし、地域としての利潤もいいはずだぞ。自分の会社の周りがこう渋滞になったりすると、不機嫌な理屈はいくらでも出てくる。ちなみに「ヨドバシ」は13%の効果なのか、僕が店に入ったときはかなりの客数だった。「新宿」対「秋葉原」、か。そういえばアメリカの空爆はどうなったンだろう?頭ン中の妄想が幻想へと変化する前にゲームコーナーに到着し、一気に現実のものと変わる。ドリームキャストが一台もないのだ。そこには昨日まであった品物のためのベニヤ台と、広告だけが残されていた。とにかく焦って「LAOX」に向かうが、そこでもドリームキャストは無い。困ったなァ。とりあえずTの携帯に電話してみた。
「増淵でッす。どうもー。あのさ、ドリームキャストのことなンだけど…」
「LAOX」の1Fにあるマクドナルドでポテピリチーズバーガー(100円、税別)を食いながら詳しい状況を報告し、もう少し探して見ることを約束する。幸いこの後購入するドコモの携帯は手続きに時間がかかる。その間に他の店に行ってもいいだろう。僕は駅前に向かって歩き出した。

仙台駅には「S-PAL」という駅ビルがある。ここは家電とは無縁だが、ちっちゃなおもちゃ屋も入っているので、要チェックである。昨日にあたる12月12日には合同オークションも開催され、少し前には手塚治虫展もやっていたので是非駅に来る機会があれば立ち寄ってほしい場所だ。屋上への階段にはヤンキーが溜まっているので初めての人には注意も必要だろう。で、肝心のおもちゃ屋であるが、無かった。テレビゲームは一切置いていないらしい。ドリームキャストは一体何処に?

次に行った店は「さくらや」仙台店である。ここも無くなっていた。店員さんに聞いたところ一週間前には売り切れているとのことだ。僕が昨日見た10個のドリームキャストは幻だったのだろうか?きっと追加注文で一瞬で売り切れたんだろうなァ。その一瞬に居ながら買わなかったとは…。その次の「十字屋」もだめだった。女性には人気の店だが、ゲームの販売としては意外性があってあるだろうと思ったのだが、そもそもゲーム自体取り扱っていなかった。「S-PAL」と同じだな。

皆さんは『草の根販売計画』というものをご存じだろうか?湯川専務とタレントの滝川君がCM上だけでなく、実際にドリームキャストを売り歩く計画らしい(噂)のだが、この計画は本当にそれだけのものだったのだろうか?湯川専務は在庫が切れてしまったことに対して責任を取るために常務に降格した(噂)。良く知らないが歌も歌う。しかし、本当のこの計画の恐ろしさ、真意は別のところにあるのだ。つまり、『草の根』を分けて探さないとドリームキャストが見つからない状態を作るというのが『草の根販売計画』の真意だと僕は思う。そしてそれは次の大きな計画への準備作業なのだ。それは僕にも分からないのだが…。
インターネットが出来る3万円の箱なんて今まで見たことが無い。モデムが付属しているドリームキャストは今後インターネットの普及、使用形態、顧客層を変えてゆくだろう。そしてその箱を買うために東京の人は大宮のソフマップまでドリームキャストを探しにいく。大宮に無ければ、仙台に電話してくる、無ければ草の根を分けてでも探すだろう。なにか大きな市場操作、消費者への挑戦を感じてしまうのは私だけだろうか。

そんな事を考えていると雨が降ってきた。僕は最終目標を「ダイエー」に定め、玩具コーナーへと急いだ。もうとっくにドコモの手続きも終了している時間だ。

そして、なんと、あったのだ。ドリームキャストが!
「最後の一個だけなんですよ。これっきりの現品です」
店員さんは特別興味あるでもなくそんな事を言っていた。さっそく購入し、1FサービスカウンターでTの住所に送ってやった。よかった。一安心だ。でもポイントカード4000円分は得しなかったなぁ。残念〜。

雨も弱くなってきたので、「LAOX」に戻り、ドコモのP206Gを手にいれ帰路につこうとすると、なんと原付が無くなっていた!FUCK!!



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