で、今回まず話題にしたいのはそんなエヴァの手法を用いつつ、ドラえもんの設定による融合パロディ小説という『ドラえもん大戦』である。
インターネット上で公開されている作品なのだが、作者は一般の方らしい。みなさん良く飲み屋とかで、「ドラえもんの不思議」や「サザエさんの不思議」を話題にして盛り上がったことは無いだろうか。「なんで使命を持っている筈のドラえもんはぐぅたらなんだ?」とかね。本作はそれらの全ての疑問に面白い回答を提案している、それはSFという形でね。主人公はスネ夫。そして決して勧善懲悪ではない。キャラの視点の換わるテンポはスポーツ漫画のようなスピード感があり、各キャラへの作者の愛着。オリジナル作品に対する敬意が表われている。
この小説は各話のあとがきににある作者の自己卑下発言(この世界にはよくある)にはやや引いてしまったが(笑)、話自体は本当、面白いんです。永久的国民的アイドルのドラえもんのパロディというだけで読み手はイメージが膨らんでしまうが(ここは評価対象にはしていない)、パロディに有りがちな『キャラへの愛着に作品構成が負けてしまっている』ということもなく、真摯にSFに取り組んでいるのが分かる。SFデティールは十分に考えられたものだろう。さらに各設定がオリジナルと細やかに連動しているのは作品の出来、不出来以前にドラ好きにはとても嬉しい。
注:文中の高橋さんとは編集長の高橋基樹さんです。