花鳥風月を愛でてみる?

(初出:第50号 01.5.21)

インタビュアー(返歌も):矢島 順
腐れ縁とは会う以外にメールのやり取りもしています。そんな彼のロングマイブームは詠。つまり短歌(もしくは川柳)なのだが詠(うた)だそう。こちらが嫌になるほど毎回詠んでくるので、ちょっと集めていたのです。今回、50号記念?として掲載許可をもらいました。詠だけが羅列してあっても面白くなかろうということで、対談形式で詠の意図、背景を注釈しております。
(矢)皆さんも 詠んでみないか 心の詠を 意外とハマる 七五調
(佳)やってみたら七五調は面倒よ。好き勝手に話す方がどんなにラクか。

ちはやぶる 宇治の流れは たえずして 人のつむぎも おなじことかな
(矢)当初は気に入ったフレーズを使用した(だけ?の)詠が多かったねえ。「ちはやぶる」は何が気に入ったんだい?
(佳)「ちはやぶる」う〜ん。語感が良かったんじゃねぇ。ほじゃが、枕詞使うんは難しいんよ。五・七・五・七・七の五の次の七の部分にくる言葉が決まっとるんじゃけ。語感だけじゃ、やはりよう詠わんわい。

これやこの さぐりてみれば やんぬるかな 人のみちにも 子らのみちにも
(矢)これも「やんぬるかな」が言いたかっただけだろ。
(佳)そうだよ。蝉丸の「これやこの いくもかえるも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」の語感をとって、できそでできない「やんぬるかな」もいれてみて..むづかしいのぉ...。

千早ぶる 神はいずこに おわすのか 問いただしてみる 答えないのに
(返歌)ちはやぶる 神はどこにも おりませぬ 信じられるのは 己だけ
(矢)俺のはまあ、現実主義。お前さんのは何だか浪漫チックだね。
(佳)わしも「神」は信じとらんけー。ま、格好ええじゃろ?

ちはやぶる 宇治の流れを 夢に見て ついに見ゆるか 宇治の天女を
(矢)京都に出張した時のもんだね。
(佳)「京女」に「東男」じゃ。わしもちゃきちゃきの東男じゃけ。ほいでもやっぱり、京女はええわ。京都に出張して、甘いんなんぞはなかったが。9号線亀岡店のおねーちゃん、可愛いかったのー。
(矢)広島弁使って、何が「東男」なんだよ..。
(佳)今はちゃきちゃきの浜っ子じゃ!(伊豆?)

たらちねの 母の姿を 思い出に 明日も分からぬ 日々の生活
(矢)呑みすぎの翌日だね間違いなく。
(佳)実家に暮らしよって、お母ちゃんはありがたい存在じゃ。ヘベレケに酔って二日酔いの朝でもお母ちゃんは心配してくれるもんじゃけぇ、のう?(飲みすぎたんじゃろな、こん時)←考えてみたら、わしぁ、いつでもヘベレケじゃけぇね。

まれびとの ひさかたぶりに 会うという 記憶の中での 遠い大雪
(返歌)渋谷から 帰りの電車は外回り 何故に品川 何で東京?(新宿なのに..)
(矢)学生時代、雪で電車が止まった思い出だ。懐かしいね。
(佳)大雪じゃったの〜(遠くを見る目)。わし、われのバイト先に電話したん覚えちょるか?われはバイトもようせんと飲みに行ったそうじゃのう? しっかりせぇよ!ちゃんと働きんさい!
(矢)..ま、学生の頃だしネ。

つれづれの 窓に流れる 景色みて 時の流れの 早さを思う
(矢)休日出勤の会社の外を見て詠める歌。
(佳)じゃないんじゃな。昔聞いた歌を想い出して..それ以上は聞くなや...。
(矢)典拠あるんだ?へー知らなかったなあ..。

つれづれに 過去のメールを 顧みる 真の友への 思い深まる
(矢)誤解されそうな内容だけれども真意は大したことないよね。(多少不安)
(佳)うーん、今回の依頼をされて、今まで送りよったメール顧みてたんよ。わしもだいぶん弱っちょろいこと言っとるのー。ほじゃが、ワレの弱っちょろいんも、よーけあったがのう。(フフフ)
(矢)いやいや、それ以上は言うなよ...。

風吹く夜 何を思うか 風に向かい 世に向かって 吠え続ける
(矢)酔っ払って大騒ぎした翌日だったっけ..。
(佳)地元でケンカした。会社では「転んだ」って言うといた。誰も信じちょらんが、これでよし!←結構最悪か?

止めようと 思いながらも 止められない 不帰の客まで 後僅か也
(矢)煙草の話題のオチ。
(佳)うん。不帰の客にはなりたくないし..。矢島はもうじきじゃの。ホホホ..(蜻蛉羽呉羽風)
(矢)お前より低タールだよ...。
(佳)わしもだいぶん低タールになっとるで。

春雨を 眺めて一人 勃然と 巡る季節と 我が身を想う
(矢)これも休日出勤時。黄昏てマス。
(佳)わしも、えらそうに吠えちょってもしょせん「サラリーマン」じゃけ。誰もおらん会社におって、春雨でも見てればこんな気持ちにもなるわ。←ロマンチスト?
(矢)ちーと、野暮ったいけどネ。

啓蟄の 声が聞こえた 早春に 我が家人の 貫太郎が行く
(返歌)花見頃 思っていたのに 雪が降る 貫太郎の 置き土産
(矢)貫太郎てな家の庭先に半年ほどいた土蝗(ツチイナゴ)だ。
(佳)脳ミソが3gもあるんかないんか分からんようなイナゴが、越冬のためにわが家におった。生きとるんか死んどるんか分からんようにじっと庭におったが、啓蟄の声とともに庭から見えんようになった。貫太郎、待っちょるけ、また次の冬に会うや!わしゃ待っとるで!いやわしだけやなしに、みんな待っちょるで!!

年度末 先を急ぐ 人々の 波を逆さに 泳いでみたし
(矢)外回りでのイライラ。渋滞はねえ..。
(佳)それはちょっとちゃうな。品川の通路は朝と夜で流れがあるん。わしゃそんな世の中に「ちょっとだけ」反抗してみたかっただけじゃ!
「♪家路を急ぐ人々の中を、酔い潰れて、誰かの名を呼ぶ人」ってな。←ちょっと寂しめかのう?

義務感と 使命感とで 会社くる 電話なければ それでよきかな
(返歌)私事 義務感も 使命感もないのに 稼ぎ分だけ しっかりストレス 
(返歌)中途半端に善人ぶると 痛い目に会う 休日の電話はトラブルの報せ(広島大地震)
(矢)偽善だぜと自己批判してたね。
(佳)ほんまは「義務感」なんてないからね(笑)。
(矢)俺のは当日折り悪く起きた地震を絡めました。結局これで帰りが大幅に遅れたという(苦笑)。
(佳)帰りが遅なったんよりも、広島の実家&親戚連中の家が大騒ぎじゃったわい。
瓦が飛んだらしいわ。怪我人が一人もおらんかったんが、不幸中の幸いじゃったが。

親友(とも)からの メールこぬかと 待ちわびる 強がり言うも 弱さの表われ
(矢)ちっと音沙汰ないとこんな感じだ。
(佳)さんざ強がって、仲間と言い争うも結構さびしがりーじゃけ。送ったメールの返事がこないんも寂しいもんじゃぞ。(掲示板もな)
(矢)..悪かったよ。

久方に 凍りしこころ 熱くする 心動けど 足は動かず(悲しい哉)
(返歌)私事 上司も本部も好き勝手 社会人にはなれません(なりません)
(矢)俺のは完全プライベート。哀しかったよ、この頃は。ところで韋駄天1番バッターだったのにね。久々じゃいかなお前でも無理だったか。
(佳)4年もやらんかったら体も動かん!

久々に 熱い心を 呼び覚ます 二人組みに 心沸き立つ
(矢)ここから3編、「あぶ刑事」ネタだ。日テレで映画やってたね。
(佳)わし、金色レパード乗っとったもん。ほじゃがノーマルレパードとは程遠い車になってしもうたがの。ほいでもわしは「ユウジ&タカ」が好きなんじゃ!!

懐かしの 景色を見れば 若き日の 我を思いて 今を嘆かん
(佳)昔は夢も希望もあったんにな〜。今は自分を守るんが精一杯じゃわい。こうやって夢を夢と知ることなんが大人なんかね?昔よう聞いた台詞じゃわい。わしも流されたんかいね?

朝靄の 海をバックに 立つ二人 いつかあっこへ 我も立たん
(矢)上の話しは流すけど、この辺から日々の生活を題材にした歌がメインになってるね。内容が分かりやすくなってるよ。でもこれって川柳じゃないのかなあ..。
(佳)わしのは「詠」や言うとるじゃろ!ってえばれる程のもんでもないけどな。

とりたてて 書くことなけど メール開く 書き始めれば つきることなし
(矢)またこのパターン。休日出勤はツラいねえ。
(佳)怒・怒・怒。ほじゃがやっぱり会社人...

世の中の 若者たちの 暴虐さ 進む道筋 脇に押したし
(矢)ここから4編、時事ネタ絡み?若者に寄ったり批判したり、本音はどっちなのさ。
(佳)間違った方向に向かっちょる奴等をちょっと直してやれるんは、わしら(?)大人よ!ちょいと話しを聞いてもええし、話してみい?奴等は熱い気持ちのぶつけ方が分からんだけじゃけ。大人がしっかり話しちゃらんと。←えべせぇかもしれんがの〜

若者の 自虐的な 行動を 昔の自分に 重ねてみたし
(佳)ほいでも昔のわしもあんなんじゃったんじゃね。ほじゃがあんなことはせんかったで。↓

くそ餓鬼が わけも分からず やることを 見てみぬふりする くそったれども
(佳)三軒茶屋の事件。なんで解決にあれだけ時間がかかる?乗ってる奴等は何故見て見ぬふり?おかしいわい。わしぁ、ほんましごうしちゃるで!
(矢)都会の無関心はよく聞くね。江戸っ子が聞いて呆れるよ。ちょっと、耳が痛いけど..ね。

この国が 最低な国に なるときが そこまで来てる なぜ気付かぬ?
(矢)てなわけで社会派。やっぱり浜省?
(佳)そうよ。やっぱり浜省じゃわい。知っとる?浜省は広島出身なんよ。

連休の 最後の夜は 静かなり 月や星等も 眠るこの夜
(矢)で、自分は眠れなかったと。
(佳)街中はゴールデンウィーク中はやかましかったんよ。ほじゃが最後の夜は車も走っとらん。月も星も最後の夜は、お休みじゃ。わしはゴールデンウィークなかったけ。黄昏とったんかね。

黄昏時 たっつた一人の 部屋の中 家路を急ぐ 人が羨まし
(矢)さあラストだ。これはどういう状況で詠んだのさ?
(佳)うん。ゴールデンウィーク中の切なさがね...。どこかへ行く相手がいて、それを実行できて、なおかつはつらつ「明日から仕事さ!」と言いよるヤツ等がうらやましい...

(矢)最後は何だか哀しい話になっちゃったねえ。ま、歌ってな「その時の気持ちを素直に」っていうからねえ。その点でいけばこの1年で大分上達したようだし、こんな感じがお前のいう「詠」ってことかい?
(佳)言葉数が決まっとって、その中で、世界を詠いきる。これがほんまの「短歌」と呼ばれるもんじゃろ?わしぁ、それもいいと思うが、自分の好き勝手な事を好き勝手に詠むんもええんじゃないかと思うてな。季語やらなんとかやらに、しばられなくてもおもろいもんはできるんじゃ。
とかく難しく考えがちな分野じゃけ、簡単に言いたいことを言ってみる。慣例を打ち壊す(そこまで高尚ではないがな)。それが難しい分野にとっかかるいいチャンスやと思うしな。
(矢)さて、次回掲載は..100号!?
(佳)わしゃ記念にしか出やらんけえ。
(矢)つ、続くんかな?本誌も、詠も。
(佳)当たり前じゃろが!ほじゃが、わしの性格じゃけ、熱しやすく冷めやすいけぇの。他におもろいことみつけたら、きっとそっちやって、詠も忘れるかもしれんの。軽薄かの?
(矢)いやいや、それがこの「詠」の本質だと思うよ。
ということで、矢島(高橋)&佳那でした!失礼致します。



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