気が触れた小鳥たちのように 〜二月五日の夜と 六日の14時27分の詩〜 第5回

(初出:第70号 03.2.20)

「冬」

 冬は 自らが 燃える暖炉となることで
 
 耐えしのぐ 毛皮となるから 好きだ

 夏の萎えた 馬のふぐリの 醜いことを
 

「背中」

 朝に寝 昼に寝 そして夜寝るナナ

 果たして 彼女は 生きているのだろうか

 草を嗅ぐ その背中を見る

 なんと豊かな 人生なのだ
 

「ともだち」

 魔王 警官 金貸し

 ライダー クライマー バーテンダー

 小説家 脚本家 演出家

 詩人 芸人 異邦人
 

「お仕事」

 はい働きます はい休みます 

 はい大丈夫です はい行きます

 はい取り替えます はい伝えます

 はいお待ちください はいお願いします

 はいお先します はいお疲れ様です
 

「忘れ物」

 カギを忘れたから 自転車が心配

 パクられはしまい でも六万円もしたんだよ

 床屋さんは あしたでいいや 

 ならば 珈琲屋さんへいこう

 カギを忘れたから 駄目なんだった

 パクられはしまい でも溺愛した息子なんだ

 夢想家ごっこは あしたでいいや

 
「コンビニ飯」

 どこかにせもの おいしいけれど

 サンドウィッチは オムレツがにせもの

 サンドウィッチは ベーコンがにせもの

 鱒寿司は おいしいけれど

 酢飯の三分の一が どこかにせもの

 カップヌードルは おいしいけれど

 カロリーは おいしいのだけれど

 栄養がないよ すべてにせものだから

 でも 焚き火にあたり 

 川の匂いを嗅いで

 値段のついた 天然水を 

 沸かした湯で 食べてごらん

 おいしんだから にせものだけどね

 記憶喪失に ご注意を

 コンビニ飯は にせものだから 

 ほんものを わすれるよ
 

「詩人」

 教科書の 詩人

 本棚の 詩人 
 
 昔の父は 詩人

 友だちも 詩人

 わたしは 詩人

 詩人 詩人は

 純粋で 朴訥なひとが 書くものだと

 純粋で 朴訥な ぼくは思う

 詩人 詩人は

 気が違う 気が触れたひとが 書くものだと

 気が違う 気が触れた わたしはいう  



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