モミモミ日記 第2回

(初出:第62号 02.5.20)


★4月22日(月)ワールド杯の「メキシコ対エクアドル」戦のチケット獲得権を譲ろうと思い、仙台市内の某レストランへ。実はここのシェフの1人がメキシコ人でもちろんサッカー好き。けれどもわたしは一度も会ったり話したこともない赤の他人である。訪ねていったら「今日は休み」と言われて企画終了。
☆4月25日(木)横浜の友人、ウチヤマに頼まれたベガルタ仙台のユニフォーム(レプリカ)を買いに、今日オープンの『カーサ・ベガルタ』へ行った。何故か勢いでわたしもレプリカを買った。1万1,000円。家で試着した途端に後悔。わたしはベガルタ仙台のサポーターのひとりであるが、今までレプリカを着たことはなかった。安い選手名入りのシャツを着たりしていたわけだ。今回のレプリカ購入は念願だったはずだが、なぜかしっくりこないのだ。人と同じことを好まない異端児のわたしはレプリカを着たことで、他のサポーターと同じ普通の人になってしまったのだ。
★4月26日(金)サッカーくじを買いにJTBへ行く。帰りに店先でなにげに旅行チラシを見ていたら、通りすがりのごついサラリーマンに強烈なタックルと舌打ちを喰らった。ノガミ(友人)だった。こんなことをするのはこの男しかいない。相変わらず家から近いのに、会社までタクシーで出勤しているナイスガイだ。理由は面倒臭いから(ただし帰りは歩き)。この男、しばらく会わんうちに日本中を一人旅してたらしいが。長崎に行って、まったく関係もない通りすがりの葬儀に参列して賛美歌に感動したり、網走刑務所を訪問したりと意味不明な行動だ。帰りに『すすきの』で胡麻ジャン麺を食べてから、彼の自宅の八百屋まで送り届けたが、お礼に「ちあきなおみ」のベスト盤を貸してもらったので、わたしは「吉幾三」のベスト盤を貸してあげた。その後でレイコを迎えにいき、ラヴホへ宿泊。久々だった。
☆4月27日(土)連休初日なのに会社の会議。業務改革とやらだ。面倒くせえ〜。「偉い人」というのは政治家同様にアホしかいない。結果、わたしの仕事が増えて無駄な出張も増えることになった。甚だしい。遺憾の意だ。この会議を企画した上司は即刻死んで欲しい。余計なことをするなといいたい。「社員が一致団結して」などとほざいていたが、主要な女性社員二人を会議から外しておいてなにを言ってるんだコイツは。お前がいなければ社員は団結するんだ。

☆4月30日(火)午後7時から仙台スタジアムでナビスコカップ(通のあいだではお菓子杯という)の「ベガルタ仙台対柏レイソル」戦がある。わたしなどは相変わらず午後5時に仕事は終了するが、レイコ(某テレビ局勤務)はいつも、9時、10時に帰宅というのがザラ。それでも今日は早く終らせるというので職場まで迎えに行った。早いといえども6時半近く。裏道を抜けてきたが八乙女にきて渋滞だ。予想通りの展開とはいえ激しく憤る。結局ゲーム開始から10分送れで到着。レイコがもたつくだろうと先に車からおろし走らせたが、座席についたのはわたしの方が先だった。まったく。わたしは映画館では絶対に予告編から楽しみたいタイプ。だからサッカーの試合でも選手がウォームアップしたり、せめて入場してくるところから観たいの だ。10分遅れ。それにつけてナビスコ杯だ。リーグ戦ではないし必然的にモチベーションが下がる。おまけに渋滞でイライラしすぎてスタジアムでは具合が悪くて仕方なかった。試合は柏レイソルが先制して、ベガルタ仙台が追いつくという展開。仙台が同点ゴールを決めた瞬間にもわたしの心はまったくの無表情だった。退屈だった。試合中やたらと熱狂的なコアなサポーターの応援団(あおり屋・仕切り屋)と目があったのでストレスが溜まった。
★5月1日(水)ラジオ『カントリー・ミュージック・コンフォート』の収録日。放送は3日の金曜日だが、「ラジオ3」のロケット広瀬さんが四月の番組改編のためスケジュールが合わず、数日前の収録ということになったのだ。今回も非常に楽しい時間を過ごさせてもらった。午後7時半に「ラジオ3」につくなり茶釜ネヴルさんに 会った。「石垣くん、なにかいい(CD)のな〜い?」と言われる。そうかどこの ジャンルも目玉不足なのだ。こまるよなぁほんと。アーティストも普通の人しかいなくなったということか。隣のブースには『カントリー〜』出演者で、公務員兼芸人の武平くんがお笑いネタの最終リハーサル中だった。(この番組は音楽とトークとお笑いを無理やり融合させてしまうというハイセンス・ハイレベルなラジオ番組なのである)武平くんとはサッカーの話をした。トルシエは真性ホモ。家族持ちはギミックという意見で一致した。その後、おなじく出演者で友人のアトミック海口を交えてしばしご歓談。猥談からビジネス、芸人の舞台裏話まで。午後8時50分から収録開始。笑ったのは番組中に武平くんがロリコンだとカミングアウトしたこと。つられてロケット広瀬さんまで羽目を外していた。いやいや楽しかった。この日、収録づくめで多忙なロケット広瀬さんが帰りに「これが一番面白かった」とい言っていたので嬉しくなった。帰宅してから出演者に御礼のメールを送った。疲れて茶の間のコタツで寝てしまった。

☆5月3日(金)『トル死ね!』(昨日のサッカー日本代表のキリン杯にベガルタ仙台の山下が使われなかったことに腹を立てた為の意思表示)と書いた垂れ幕をこしらえて仙台スタジアムへ。『トル死ね!』を貼り終わり、ホッと一息ついているとスーツ姿の男1人と、警備員が数名やってきて、これはまずいから外せという。薄々こうなるのではないかと予想しており、今後スタジアムに出入り禁止となってはつらいので素直に外した。くそーっ。せめてラジオ&サッカー仲間の武平くんには一目見せた
かった。昨夜、『トル死ね!』垂れ幕をこしらえたと報告したら、彼はすぐに「でかしたぞ石垣氏(うじ)」と励ましメールをくれたのだ。会場入りが遅かった武平くんに、携帯でことの真相を伝えると「あんた男だね〜」といわれた。試合はべガルタ仙台が1対0でコンサドーレ札幌を下したが、わたしは札幌の監督で元全日本の「闘将」柱谷哲二の熱いリアクションを観れたほうが嬉しかった。夜は柳生のモスバーガーでレイコとお茶。深夜まで昭和プロレスについて一方的に語りまくった。
★5月4日(土)母方の祖父の一周忌。法事のあとで一席あるわけだが、思うに現代の日本人がまともな和食料理にありつけるのは法事ぐらいなのではないか。刺身・寿司・天ぷら・焼物・煮物・吸物・・・美味かった。ふつうなら生ものは食べて、残りは持ち帰るものだがわたしは全部平らげてしまった。ジイちゃんに感謝だ。夜はレイコとラヴホに宿泊。
☆5月5日(日)バイパスのくるくる寿司で昼食。サバが美味かった。天気がすこぶるいい。さすがは子供の日だ(!?)
★5月6日(月)どこにも行かないのもレイコが可愛そうなので、とりあえず近場の白石蔵王へドライヴ。黒牛のバーベキューと骨付きソーセージを食べた。チーズ工場ではチーズサンドにチーズパイ、チーズドリンク。その後、屋台で白石ウー麺とさくらんぼとチーズのソフトクリームを食べた。人間は美味いものを食べると機嫌が良くなるからこれでいいのだ。午後の三時ごろに仙台市に戻り、宮城県スポーツセンターへ。プロレスの『ノア』を観る。三沢光晴が社長の団体だ。一番安いのが二階指定席の4500円。高い。ふつうは二階自由席の3000円というのがあるものなのだ。しかもパンフレットは1500円ときた。どこの団体も1000円がふつうなのにここの団体はプライドも値段も高い。これは買わなかった。この時点でモチベーションが大いに下がった。試合は思ったよりも観れた。テリー・ゴディの息子とモハメド・ヨネ、大森隆夫とビーフ・ウェリントンに似ている外人が良かった。メインの斎藤俊彰が力王の危険技でアバラかどっかをやってしまったが、あれは気の毒だった。試合後、救急車とすれ違ったがおそらく『ノア』が呼んだものだろう。やれやれ受身の取れないような技を仕掛けるのはどうかと思う。そもそも怪我した側もさせた側も二流選手なのだからどうしようもない。

★5月14日(火)風邪で会社を休んだレイコに、未だ届かないワールド杯サッカーの第三次発売の当落をインターネットでチェックしてくれとお願いした。申込んだのは彼女だから、登録番号も彼女が控えている。昼休みに返信メールがきた。なんとご当地宮城開催の「メキシコ対エクアドル」戦のチケットがあたっていた(勿論代金は支払済。抽選にもれると返金される仕組みである)のだ。普通のサッカーファンならどうでもいい人気薄のカードであるが、メキシコ好きな私としては願ってもない試合のチケット獲得であった。結局、日本で開催されるワールド杯の生観戦はこの一試合だけであろう。もうこれはとことん楽しむしかない。
☆5月15日(水)前日は午後八時に寝た。そして深夜0時40分に起きてサッカーの「日本対ノルウェー」をテレビ観戦。目的はただひとつ。ベガルタ仙台の山下芳輝のプレーぶりを観たいだけ。「0対3」で日本の負け。途中、フランスのちんぽ吸い男、無能な将軍、トルシエ監督がまたも意味不明な選手交代をしたが、山下はずっとベンチのままだった。すっかり煮えくり返って、レイコに八つ当たりメールをこれでもかと送った。畜生めメガネ豚の弱虫野郎。おれの睡眠時間を返しやがれ。この日の午後は寝不足で身体が重く、愛犬ナナの散歩だけで、ランニングと筋トレは休み。サボりである。友だちのアトミック海口にメール。六月にプロレスの『闘龍門』という団体がくるのでその質問をした。すると彼はわたしが以前参加したボランティアの文章を読んで「広瀬川の清掃って楽しそうだね」という。わたしが状況を説明すると今度は「次回誘ってくり」という。なにが目的で、なにを企んでいるのだろうか。
★5月16日(木)カントリー音楽のオンラインショップ『COUNTRY BREEZE』に新譜を二枚注文。ブルーグラス・ミュージシャンだったがジョージ・ストレイトのコンサートを観て、カントリー歌手になろうと決心したという新人男性のケヴィン・デニーと、おなじく新人の女性歌手ケリー・コーフィーだ。これは期待できそうである。ジャケットを見れば分かるのだ。会社から帰宅してすぐに夕飯を食べた。これはわたしとしては極めて珍しいこと。夜の食事はフィットネスかランニング、でなければ愛犬ナナの散歩を終えてから摂るのが普通だからだ。この日のメニューは牡蠣フライとポテト、豆腐とおひたし、それにグレープフルーツがついた。食後に茶の間でぐずぐずして「BS」のスペインサッカーを眺めていると、母が封筒を差し出した。みると「patagonia」の夏季カタログ。これは嬉しい。週末都会へ出て「patagonia」のシャツでも買ってこようか。実は会社の同僚の吉田さん(仮名/女性)が横浜に転勤したお父さんにこの週末会いに行くという話を聞いて、わたしも行きたくなったのである。レイコに打診するもレイコは扁桃腺がはれて調子が悪い。どうしたものか。車の税金の三万円も払えないのに東京へ遊びに行こうとするとはいかがなものか。当然、新幹線でなく自家用車である。しかもマーチ。おまけに高速道路でなく国道を行く予定。どうしたものか。渋谷のスポーツショップにメキシコ代表のレプリカユニフォームを見に行きたいというのもある。悪い兆候だ。

☆5月17日(金)午後から会社の同僚が早退してわたし独りで勤務。かるくエロサイトを眺めて過ごす。三時半からワールド杯の日本代表メンバー発表会見を見た。ゴン中山の復帰は嬉しい限りだが、やはり山下は落選。それは仕方ないとしても何故に盲腸の西沢が選ばれるのか。方々から日本代表に関する一喜一憂メールが届く。午後7時、友人のノガミから電話。新日本プロレスの営業が会社に来たから、一番安い3000円のを買ってあげたそうである。その営業にアントニオ猪木はくるのかとたずねたら「99.9%来ます」と答えたそうだが、残りの「0.1%」が怖い。ノガミには高校の三バカトリオの一角であるウチヤマの携帯メールと社内メールのアドレスを教えた。(ちなみにノガミは携帯電話を所有していない。理由は、必要ないから。もっぱら会社のパソコンを利用している)午後11時半にレイコ宅へ迎えに。マーチで東京へ行く予定であったが、天候は土砂降り。加えて眠気と天性のマイナス思考が判断を迷わせる。荷造りバッグを抱えて、すっぴんでやってきたレイコに「どうする」と尋ねる。するとレイコも「どうする」という。この時点で東京行きは消えていた。モチベーションが下がった。はっきりいってわたしは最低の男。行く行かないが「半々」で心のなかが迷いで支配されているから、レイコに意見を委ねたのである。ここで「行こう」「止めよう」とはっきり言ってくれれば良かったのだ。ふたりそろって迷い猫状態のまま白石あたりまで走った。わたしは勝手にイライラ。レイコはわたしの態度と豪雨のさなかのロングドライヴに不安を募らせ、半べそだ。結局引き返す。情けない。恥ずかしい。
★5月18日(土)昼から街へ。夕べの険悪ムードをひきずりながらレイコと歩く。ユニクロ、携帯屋、レコード屋、サッカーとプロレスショップなどを巡る。定禅寺通りの裏にある『ミーカフェ』(仮名)に行くも、カフェを利用した写真展を開催中で、チケットのないわたし達は入れず。車を飛ばして中山の『モスバーガー』へ。「本当は『COCOS』でチキンカレーが食べたかった」と愚痴る。レイコに「patagonia」の夏季カタログを差し出し、誕生日(六月)にはこれ(Tシャツ)とこれ(バギーショートパンツ)を予定していることを告げると、パンツにつよい拒否反応を示した。午後六時半から仙台放送でベガルタ仙台の特番があるので、これを一緒にみるという名義でラヴホへ。風呂にテレビがついているという理由で立町のラヴホへ行った。泡風呂にして愉む。ことが済むとラーメン屋へ。ちょうどテレビで『たんぽぽ』というラーメンを題材にした映画が始まるところだったので、その影響をうけた。わたしは味噌ラーメン、レイコは七色野菜加麺を食べた。途中で「青葉祭り」のすずめ踊りに参加したと思しき集団と、佐藤なんとかいう日本人が闘ったボクシングの世界戦の結果を知りたがっているスーツ姿の親父が入ってきた。わたしが席を立つとき店員が「ありがとうございました」というところを「いらっしゃいませ」といい間違えた。彼は東南アジア系の留学生のようだ。
☆5月19日(日)昼前、出掛けに注文していたカントリーのCDが届いた。着払い。さっそく車内で聴いたがこれがグー。ケヴィン・デニーという新人歌手の声とサウンドは亡くなったキース・ウィットリーと瓜二つ。アメリカは広いということだ。レイコを乗せ意味もなく亘理方面へドライブ。途中『かに座うお座』で飯を食った。わたしは甘エビとイクラ丼。レイコはカニ天丼。わたしのリクエストで初ガツオ(1000円)も食べた。贅沢だがこれが美味かった。魚好きのわたしに食べられればあのカツオも本望だろう。その後、ソフトクリームを舐めながら相馬方面へしばらく車を走らせる。適当に海岸へ折れた。波が荒い。サーファーが数人沖でチャレンジを待っていた。潮のかおりはイイ。なんだかわからないが、やっぱり海はイイ。グーだ。帰りに四号バイパス沿いの『アメリカ屋』へ。レイコとはぐれている隙にわたしはブラッド・ピットで御馴染みの「ごーまりさん(503)」を穿いてみた。欲しくなったが買わなかった。つづいて『ダイシン』へレイコがペットシーツを買う。お約束の『モスバーガー』柳生店でお茶。つづいてまたべつの『アメリカ屋』へ。ここでレイコがわたしの薦めた「LEE」のブルージーンを購入。おそらくわたしが薦めたものを買った最初の品物だ。とまぁこんな日曜日だった。レイコはレンタルでブルーハーツと奥田民男を借りてきて聞かせてくれたが、後者は今イチだった様だ。わたしにしてみれば日本人で吉田拓郎にかなうものはいないのだが・・・。夜、ラジオでビリー・ジョエルのヤンキースタジアムでのライヴ録音を聴く。素敵な夜だった。



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