らじおの日々 第3回〜ベガルタ仙台とスティーヴ・アザール。あすに架ける橋〜

(初出:第55号 01.10.21)

週末のカルチョに興味をもっていくべきだと私は思った。
次の相手(アルビレックス)新潟には、アンドラジーニョがいるからだ。中途採用か予備軍から昇格なのか定かでないが、彼はとにかくゴツくて、センスに溢れ、貪欲でいて、正確さと意外性を持ち併せている。非常に怖い存在なのだ。一方、ベガルタ仙台は岩本テルが四試合の出場停止から復活するのだが、川崎戦敗北のネガティブ気分を払拭できるであろうか。私は気に掛けているのだ。
ラジオのスピーカーからは、「等々力(競技場)のきつねうどんは美味い」とか「売店のモニターで試合が観れて便利だ」とか「ボールボーイの捕球が遅すぎる」とかなんとか。九月三十日(日)のアウェイ話しに終始している。間抜けそのものではないか?そんなもの知らん。もしも十月六日(土)にベガルタが敗戦でもしようものならさあ大変、次週のこのプログラムでは、アンドラジーニョの名前が連呼されるであろう。そうなって欲しくはない。そんなことはあってはならないのだ。

火曜日。十月のこの日から「Country Beat USA」は午後8時30分からの放送となった。前身の「Good Morning Country」が土曜日の午前6時30分放送開始だったのだから、飛躍的な進歩を遂げている十年選手、長寿番組といえるだろう。私はクリームがかった茶褐色のソファから、ながく脱ぎ捨てられたままでいるシャツを取り去ると、「本来こうあるべきだった」と反省しながらもそのソファ――南町通り近くのアンティーク店から、格安の三万円で仕入れたお宝――に腰をおろす。すなわち、カントリー音楽のヒットチャートを追いながらこの原稿をかいているという訳。
「今週57位で登場のニューカマー、スティーヴ・アザールのデビューシングルで"I Don't Have To Be"--」板橋(アナ)さんは確かにこう言った。ロック調の渋い曲ではあるが、96年に「River North」レーベルからデビューしたスティーヴ・アザールとは同姓同名の別人であろうか?声質とサウンドからして恐らく同一人物であろう。
(まあ、細かいことは気にしないことだ)私は珈琲茶碗についだポカリスウェットに口をつけた。

ベガルタ仙台(J2)とスティーヴ・アザール(最デビュー)か。相撲でいえば十両。悪くいえば関取の一番下っ端である。来年もまたマズイ飯を食いたくなければ勝つしか、売れるしかないのである。アマチュアでも天皇杯ぐらいは目指せるし、マイナー歌手でも安酒場のフロアを満杯にするのは容易いのかもしれない。いずれにせよフィールド上で本気で闘う姿を見せてくれれば、或いは、魂を揺さぶるフレーズをひとつでも口ずさんでくれたなら、私の脚はかってに仙台スタジアムへと向かい、家に戻ったなら、迷わず彼のディスクをプレスするのだが・・・・・・。(十月二日、PM8:30〜9:52)

<追記>
「Country Beat USA」は先週まで毎週水曜日、午後4時30分からの放送であった。私はそのとき運送屋の集荷を見送りつつ、照明のおちた倉庫内をてくてくと歩いていた(戸締り点検というやつだ)。すると番組終了も間もない5時すぎに、右尻でバイブレーション開始。私はしばらく間をおいてから携帯をとった。 
「――ニッケル・クリークです。」越前よしゆき様の第一声。先ほどオンエアされたブルーグラス・グループの名前である。覚えたものを早速暗唱するとはなんとご熱心な。彼の中学校時代には決して考えられなかったことである。
「さっきの曲もってるのか?」
「ああ、あるよ」
ああ、ニッケル・クリークか。彼があんな曲を好きになるとは・・・秋を感じるわけである。みんな意味もなく物悲しさに包まれているのだろう。
ああ、我がふるきよき友よ!



「過去原稿」ページへ戻る
 
「第4回」を読む