フィールド・レポート 第5回 『苦悩の日々』

(初出:第55号 01.10.21)

「パタゴニア」か「ユニクロ」かで迷っている。
例えばフリース。これからの季節もっとも必要となるアイテムである。これが「パタゴニア」の場合12,000円する。「ユニクロ」だと1,900円か2,900円で買えてしまうのだが、万年金欠病のわたしにもブランド志向があるから厄介なのだ。ただ安いものを選択すればよいという話しではない。男には「こだわり」というものがあり、そういったものに縛られてこそ人生を生きることが出来る種族なのである。「こだわり」などなければ金欠のおり、テレビ中継があるにもかかわらず、わざわざスタジアムにサッカー観戦に出掛けたりはしない。では何故に生観戦にこだわるのかというと「歴史の証人」になりたいからであり、その他諸々の要素についてはまた別の機会に譲りたいと思う。とにかく、わたしはゴールキーパー・グローブなら「ウールスポーツ」、ランニングシューズなら「アディダス」、犬なら「柴犬」、エロ雑誌なら「アップユー」(洋モノ)、オレンジジュースなら「ミニッツメイド」、セックスなら「ローションプレー」・・・エトセトラエトセトラというように一応の「こだわり」を持っている。
また、メーカー理念などのイメージ戦略にはショッチュウひっかかる。自発的にカタログ請求などをしてみては製品の理解を深め、いずれ欲しいものが増えていく(それに反比例して所得は減少していく)という、主婦的な欲求不満増進行為が大好きなのだ。宗教に走ると世間体があり、お布施代がかさんでしまうのでみなやらないだけで、それでいて実は「都合のいい神様」をみんな持っているのだ。「巨人が好きだ。リストラなど構うものか!巨人が勝てばすべてうまくいく」という親父さんは、巨人に身を捧げることで救済されているのであるが、家族持ちだとグッズ代、入場券代、ビデオテープ代だなんだと経費がかさみ、身内が苦労する。アンチ巨人ファンのわたしなどにも地味に悪影響を及ぼしてくるわけである。

つべこべいわず冷静に考えてみると「パタゴニア」は環境にやさしく、性能がよく、デザインよく、気分がよく、おまけに値段もイイ。では「ユニクロ」は?それなりにリサイクル。それなりの性能で悪くても安いから許せる。デザインも無難。気分は悪くない。しかも手頃な価格。でもちょっと負けた気がする。ウ〜ムの世界、ため息一つ。またひとつ。(また幸せがひとつ逃げていったわけだ)では、ではである。簡単な話しなのはわかっている。「夢見るものにとって生活は苦しい」派か「食う飯に事欠かないが、ハワイに行ったことはない」派をとるかどうかである。カタログをにらみつけ、給料日までの諸経費を算出。スケジュールから出費がかさむ行事を削除。電卓をたたく。電卓をたたく。――苦悩の日々はつづく。
合理主義。「カンパイッ合理主義、合理主義イェイッ!」「カンパイッ合理主義、合理主義イェイッ!」と無理やり自分を洗脳。フリースは「パタゴニア」その下のアンダーウェア類は「ユニクロ」、いやいやインナーにこだわりアウターは安価に、いやいや借金しちゃおう!いやいや節約を・・・。いやいや・・・ウ〜ム、苦悩の日々はつづくのだ。



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